皇室の人々も「国民のもの」ではなく、皆ひとりの人間

秋篠宮家の長女眞子さまとの婚約が延期になっている小室 圭さん。彼の母親の借金などが取り沙汰されるなど、全体的に向かい風の報道が多く、世間の声も厳しいものが目につくが......。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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眞子さまは「国民の姪(めい)」なんでしょうか。親戚でもないのによくもあんなに文句をつけるものだなと思います。小室 圭さんがどれほどいけすかない男でも、めちゃくちゃに叩いていいわけじゃないでしょう。留学してから目標が変わるなんてよくあることだし、弁護士の試験に受かるかどうかもわからないのだから、ほっとけばいいのに。

文句つけてる人は、小室さんが弁護士の試験に落ちればいいと思ってますよね。で、落ちたらバカ扱いで、受かったらコネだって言うんだろうな。

確かに小室さんに関する報道を見ていると良い印象は受けないけど、誰と結婚するかは眞子さまが決めること。たとえ周囲が諸手(もろて)を挙げて祝福し難い相手でも、好きな人と結婚する自由がある。もちろん、失敗する自由だってあるんです。

親がそれに猛反対する気持ちはわかります。でも親の言うことを聞かなきゃいけない決まりはないのですよ、憲法に書いてあるとおり。佳子さまが「姉の一個人としての希望がかなう形になってほしい」と言うのももっともです。親子が分断することもあるでしょう。家族っていろいろあるものですから。

いやいや皇族は普通の人とは違うのだから、みんなの納得する結婚でないとダメだという意見が大多数のようですね。普通の人とは違うのは確かだけど、だからって国民全員が家庭内のことに口を出していい理由にはなりません。

税金が使われているから当然? それを言ったら私たちの誰ひとりとして、血税のお世話になっていない人はいないでしょう。税金てのは「正しい人」に使われるものではなくて、日本で暮らす人があまねくなんらかの形で恩恵に与(あずか)るもの。皇室費が巨額だろうが、別に納税者が皇族を養っているわけじゃありません。

もしも知り合いの高額納税者に「俺はたんまり納税しているんだから、おまえら庶民を養ってやっているんだ。俺が納得するような生き方をしろ」とか言われたらいやでしょう。あんたの奴隷じゃないよと思いますよね。

そもそも、わあわあ言っている人たちは普段どれほど皇室に関心を持っているんでしょう。皇族方の公務を全部チェックして応援しているんでしょうか。なのになんで結婚のときだけ「許せん」とか言うの? 親戚でもないのに! 人は不完全で、時に間違うもの。それは皇室の人々も同じでしょう。

天皇陛下は先日、即位後の一般参賀の挨拶(あいさつ)で来場者に「皆さん」と呼びかけました。これは平成にはなかったことだそうです。国民と天皇ではなく、皆さんと私という関係を印象づける呼びかけです。

国民は天皇のものではないし、皇室の人々も「国民のもの」ではなく、皆ひとりの人間。それを忘れちゃいけないですね。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中

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