今回のオリパラではいろんな人が暮らしやすい街になりますように

小池百合子東京都知事が定例記者会見で、東京五輪・パラリンピックの暑さ対策の一環として、"かぶるタイプ"の傘を製作していることを発表。そのシュールな絵面にさまざまな反響の声が。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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先日、仕事で汐留(しおどめ)から六本木までタクシー移動することになり、首都高に乗ったらトランプ米大統領来日準備で大渋滞。5月というのに真夏日で、車内は冷房を入れても日差しが肌を焼きます。「オリパラではいったいどうなっちゃうのよ」と都心部の住民としては非常に気が重くなったのでした。

実際、東京五輪では暑さと渋滞対策が深刻な課題。前回の1964年には暑さを避けて10月の開催にしたそうですが、ヒートアイランド現象や気候変動が進んでいる2020年の夏はさらに過酷であることは明白。

都も暑さ対策として、道路の舗装を蓄熱しないタイプや内部に水分をため込んで気温を下げるタイプに変えたり、街路樹の剪定(せんてい)を工夫して日陰を多くしたり、あちこちに微細ミストを噴霧する設備を作ったりしているようです。

加えて、打ち水やかち割り氷を首に巻くなどの昔ながらの工夫も併用して、とにかく熱中症を防ごうとしている様子。その一環としてこのほど発表されたグッズが「かぶる日傘」です。うつろな表情で傘をかぶった都の男性職員と大まじめな小池百合子都知事というシュールな絵面でしたが、実際の会見動画を見たら男性職員はナイスな笑顔でした。

「かぶる傘は釣りや農作業ではすでに使われており、高級ブランドからも発売されているんですよ」と知事が取り出したのはまさかのFENDIのかぶる傘。検索したら、リアルに存在しました。「こんなもので暑さを乗り切れとは、"竹槍式"の発想か?」と批判されているけど、暑さ対策のついでに面白グッズも作りましたよ、という意図だったのかも。

時を同じくして環境省では「男性も日傘を」と呼びかけが。確かに、暑さと紫外線対策は男女関係なく大事です。紫外線大国オーストラリアにも住んでいる私ですが、豪州では熱中症だけでなく、頭皮の皮膚がん予防のためにも帽子が奨励されています。

日本にかぶる日傘が根づくかどうかはともかく、五輪を機に暑さ対策が進み、夏の新習慣が広まるのはいいですね。外国人が熱中症で倒れたときのために、翻訳技術などを駆使して対応できる医療体制づくりも進めるようですから、日本で暮らす外国人にとっても助かるでしょう。

もうひとつの懸念、大渋滞。無策のままだと震災直後のような大変な渋滞が起きてしまうため、時差出勤や在宅勤務などが奨励されるようです。五輪では会社員のボランティア休暇の導入や、子持ちのボランティアのための託児施設の整備など、これまでの働き方やライフスタイルを変える契機となる施策も行なわれるとか。

前回のオリンピックでインフラが一気に整ったように、今回のオリパラではいろんな人が暮らしやすい街になりますように。どうせやるなら何か良い変化のきっかけにしてほしいです。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中

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