芸能事務所がタレントを抱えて営業するという業態が構造的に限界を迎えている

芸人のカラテカ・入江慎也が振り込め詐欺グループの忘年会に雨上がり決死隊・宮迫博之をはじめ複数の吉本興業の芸人たちをブッキングした「闇営業」が大問題に。吉本興業の対応についても賛否が。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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タレントの「闇営業」が話題です。いかがわしいイメージのある芸能界。私も大手放送局を辞めて芸能事務所と契約した途端、超保守的な親戚から縁を切られました。芸能界への偏見は根深いなあと実感した次第です(一部上場企業の社員以外は身内と認めないって考え方もどうかと思うよ)。

ともあれ今回の闇営業事件を受けて、好感度抜群の人気者が実はうさんくさいお金の稼ぎ方をしていた?と世間が沸き立つのも無理はありません。

今いわれている「闇」には、「所属芸能事務所に内緒で」と「反社会的勢力との関係」のふたつの意味があるようですね。反社会的勢力との関係は言うまでもなく問題ですが、事務所との契約形態にはさまざまな形があります。

あまり知られていないことですが、同じ事務所でもタレントによって契約内容が違うのはよくあること。出演料の売り上げの多寡にかかわらず毎月の収入が一定の給料制で契約しているタレントもいれば、出演料から事務所に一定のマネジメント料を支払う出来高制の契約をしているタレントもいます。

専属契約を結んでいる場合もあれば、個人事務所を持ちながら芸能事務所と業務委託契約を結ぶことも。同じ事務所のタレントでも人によってマネジメント料の割合が違うことも珍しくありません。契約書がないケースはもってのほかですが、タレント側が権利などの知識を持つこともやはり必要ですね。

芸能人には自由がなく、一挙手一投足を事務所にコントロールされているというイメージが強いかもしれません。一部にはそうしたひどい搾取がある一方で、タレントの働き方にはかなり幅があるのです。

幸運なことに個人的にはこの9年間、事務所に縛られることなく仕事を選び自由に発言してきましたが、芸能事務所がタレントを抱えて営業するという業態が構造的に限界を迎えているのは確かだと思います。

もはやサラリーマンや官僚も副業解禁という時代。フリーランスでも、複数の肩書を持っている人はザラです。オリエンタルラジオの中田敦彦さんやキングコングの西野亮廣さんら、新しい物販ビジネスやオンラインコミュニティづくりで変化を見越した新しい展開を始めた芸能人も。そもそも今どきはネットから有名になる人も多いですしね。

アナウンサーも同様です。全国規模の知名度のある局アナなら、退社して個人事務所をつくり、SNSに連絡先とサイトのリンクを掲載すればオファーが来ます。すでにそういう選択をした人たちもいます。事務所のブランドに頼るよりも個人のブランド価値を高めるほうが聡明かも。時代の風に敏感な人は、きっと気づいているのでしょう。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中

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