私の個人的な流行度合いで言えば、やはり今年は「#KuToo」です

「2019ユーキャン新語・流行語大賞」候補30語が発表された。日本中を熱狂の渦に巻き込んだラグビーワールドカップ関連から5つがノミネートされるなど、スポーツ関係のワードも目立つ。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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今年の新語・流行語大賞にノミネートされた30語を見て、うーんと唸(うな)ってしまいました。大半は、私の生活空間では「流行語」にはなっていないからです。

時事に関する言葉がいくつも入っていますが、単に記事やテレビでよく目にするのと「流行語」ってのは違いますよね。30語の中でどれを流行語だと思うのかでその人の暮らしが垣間見える気がします。

ちなみに私の個人的な流行度合いで言えば、やはり今年は「#KuToo」です。何それ全然知らない!という人もいるかもしれないのでざっくり説明すると、「職場でのハイヒール着用の義務づけはおかしい!」というムーブメント。

決してハイヒール撲滅運動ではありません。好きな人は履けばいいし、履きたいときに自由に履いていい。でも仕事のときにハイヒールを履いてなくちゃいけない、という決まりはなくしてほしいというキャンペーンです。

ハイヒールは長い時間履いていると足が痛くなるんです。靴擦れで血が出たり、外反母趾(がいはんぼし)になって歩くのもつらくなったり。女性はみんな平気なように見えますが、足が痛くなる上に、ヒールでは動きづらいのです。

こうした健康上安全上の理由だけでなく、男性にはフラットシューズが許されているのに女性には許されないのは性別による差別であるという視点での訴えでもあります。

「ならネクタイはどうだよ! 男性だけあんな苦しいもの締めなくちゃならないなんてそれこそ性差別だろ!」と腹立たしく思った方は、ぜひとも声を上げてください。女性も男性も、職場での服装ルールで迷惑していることを世間に示す、いい問題提起になります。

そう、「#KuToo」は男性敵視運動でもありません。職場での服装を「こうでなくてはならない」と決めつけることはやめてほしい、私には快適で安全な服装で働く権利がある、ということを訴えているのです。

さらには職場で女性にだけ眼鏡の着用を禁止している企業や店舗があることも判明し、海外メディアも取り上げるほどの話題になっています。

男性は構わないのに、女性は眼鏡をかけると冷たそうに見えるからなどの理由で禁止。コンタクトレンズが合わなくて苦労している人もいます。「また女だけ被害者ヅラかよ、俺だってひげ禁止だぞ!」と思ったら、それもぜひ社内で問題提起してみてください。

先日は、三井住友銀行が東京・大阪の本店で働く行員を対象に、通年で服装を自由にしたことが話題になりました。各地の学校で下着の色まで指定するようなブラック校則が問題視されているように、もう理不尽なルールで人を縛るのは通用しなくなってきているんですね。

いいぞ、この流れは全力で応援したい。「#KuToo」、これを機にぜひ覚えてくださいね。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中

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