安倍首相が選んだ今年の漢字は「始」ですが、むしろ終わりが見えてきた感があります

「今年の漢字」は「令」に決定。4月1日に新元号「令和」を発表した菅 義偉官房長官は、「桜」という字について記者に振られると「見たくも、聞きたくもない」と回答。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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「今年の漢字」は「令」。5月から令和元年が始まりましたが、たった半年余りですっかり定着した感があります。物事が日常化するのって本当に早いですね。

占いに詳しいある知人は、4月1日に新元号が発表されると早速「令和」の字からどんな時代になるかを予測していました。「令」の字の部首は「ひとやね」とか「ひとがしら」といって、上の部分(頭/かしら)が「人」の字でできています。

この形は上から下へものが滑り落ちるとか、左右に振り分ける形なので「格差拡大」の時代になるという見立てでした。元号の字面が時代の動きを決めるとは思わないけど、なるほど今の時代を象徴する見立てです。

一年を振り返ると、災害の多い年でした。気候危機のニュースを聞くにつけても、どうやらこれは今年だけでは済まないかもという気もします。大いなる異変の始まりなのではないかと不安を感じている人も多いはず。

はがきやウェブサイトで公募する今年の漢字の今回のトップ20を見てみると1位から順に「令・新・和・変・災・嵐・水・風・天・税・雨・一・台・結・闘・改・火・桜・薬・皇」。

天皇陛下のご即位や新元号、自然災害関連の字が多いなか、「薬」ってなんだろうと思ったら著名人がドラッグで逮捕される事件が相次いだからなんですね。

18位に入った「桜」は、もちろん「桜を見る会」。記者から「桜」という字についてどう思うか聞かれた菅 義偉官房長官は「見たくも、聞きたくもない」と苦笑したとのこと。まさにその姿勢が問題なんですが。ちゃんと見て聞いて記者の質問に答えてください。

12月14、15日に共同通信が行なった世論調査では安倍内閣の支持率は42.7%と前回から0.6ポイント減、不支持率は43.0%で1年ぶりに支持を逆転しました。支持率の下落は2ヵ月連続です。

「桜」問題では、首相が「十分に説明していると思う」と答えたのは11.5%で「思わない」が83.5%。招待者名簿のバックアップデータについて「行政文書に該当しない」と答弁した菅氏の説明にも77.9%が「納得できない」と回答しました。安倍首相が選んだ今年の漢字は「始」ですが、むしろ終わりが見えてきた感があります。

2019年を象徴するひと文字、個人的には「元」を挙げたいところ。明るいニュースが少ないなか、即位の礼では皇后さまの笑顔に多くの人が元気づけられました。ラグビーW杯開催中も久々に世間が活気づいた感じがありましたね。

「桜」の問題は、枝葉末節と批判する人もいるけれど、むしろ税金の使い道や記録の保存という政(まつり)ごとの根幹に関わる問題。長い春を謳歌(おうか)した樹木の根元が腐っているのではないかという疑惑です。来年もニュースの大元にある重要なポイントを見失わないようにしたいですね。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中

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