ゴミ収集中の体験や気づきを発信したツイッターが人気になり、小池都知事とも対談した滝沢秀一氏

ゴミ清掃員にとってありがたい「コロナ禍におけるゴミの出し方」をツイッターに投稿したところ、小池百合子東京都知事の目に留まり対談が実現! 都のお墨付きを得た「ゴミの分別法」をマシンガンズ・滝沢秀一が紹介する。

■コロナ禍で増えたのはレモンサワーの空き缶

―――新型コロナウイルスの感染はいまだ続いていますが、ゴミ清掃員として働くなかで何か変化は感じますか?

滝沢 単純にゴミの量が増えましたね。例年、3月と4月は引っ越しシーズンなのでゴミの量が多いんですが、体感としては倍くらいになっています。

――外出自粛の影響で在宅時間が延びたからですかね?

滝沢 だと思います。ゴミの種類でいうと、弁当の空き容器とか食べ物の可燃ゴミが増えていますね。あとは家飲みやリモート飲み会が増えた影響なのか、お酒の空き缶も多いですね。そのなかでもレモンサワーの数がすごい。各メーカーがいろんな銘柄で競っていますけど、空き缶の数はちょうど、どっこいどっこいな感じです(笑)。

――レモンサワー戦争が繰り広げられているんですね(笑)。滝沢さんはゴミ清掃員として、世間のリアルな消費傾向を見られますからね。

滝沢 あと断捨離をする人が増えた影響も感じます。衣替えの季節も手伝って、特に洋服が多いですね。実は一度に出すゴミの量は自治体で決められていて、だいたいどこも3袋、4袋でそれ以上になると有料になるんですよ。でも、なかには一気に20袋くらい出す人もいて......。洋服は腐らないので数回に分けて出してほしいです。

――それは迷惑ですね。

滝沢 迷惑といえば、包丁をそのままゴミ袋に入れるのもやめてほしいですね。僕らが袋を持ち上げたときにゴミ袋を突き破って包丁が飛び出してきたりするんですよ。

――え! それは危険じゃないですか。

滝沢 そうなんですよ。包丁や割れたガラスは新聞紙に包んで不燃ゴミで出してほしい。あとはリチウムイオン電池も少し圧縮しただけで火を噴くので怖いですね。回収中やリサイクルセンターで発火事故が多いんです。モバイルバッテリーなんかは周りがプラスチックなので、間違えて可燃ゴミとして出す人もいて危険です。

――発火したら大変ですね。モバイルバッテリーを捨てるにはどうすればいいですか?

滝沢 地域によって違うんですが、ウチの地域は別の袋に入れて、「モバイルバッテリー」と書いてもらえれば回収します。でもなかには回収しない自治体もあるので、その場合は家電量販店や自治体がやっている施設に持っていくと受け取ってくれますよ。

4月28日に「コロナウイルス感染拡大を防ぐためにゴミ清掃員がやってくれると助かるゴミの出し方」をマンガでツイート。11.9万も「いいね」されるなど反響を呼んでいる

■ペットボトルのキャップやラベルは清掃員が外している!

――コロナの感染拡大を防止するために、特に注意してもらいたいゴミ出しのポイントはありますか?

滝沢 まずウイルスを閉じ込めるという意味で、ゴミ袋の口をギュッときつく結ぶことを意識してほしいですね。できれば二重に結んでもらえるとありがたいです。ちゃんと袋を結ばずにゴミ出しする人がけっこういるんですよ。

僕ら清掃員はテンポよくポンポンと清掃車に入れるので袋が結ばれていないことになかなか気づかない。そうすると袋の中のゴミがばらまかれてしまい、清掃員が直接ゴミを触ることになってしまうので感染の恐れが出てくるんです。

――なるほど。これは誰でも簡単にできることなので実践してもらいたいですね。

滝沢 あとは袋がパンパンになるまで詰め込みすぎないことも大事。袋の空気を抜くのも効果があります。そうしてくれると清掃車の回転板に挟まれても袋が破ける心配はなくなるので、ゴミが外に飛び出さなくて済みます。

――どうしてもゴミ袋がパンパンになるまで詰め込みがちですけど、ダメなんですね。

滝沢 それから使用済みのマスクをそのまま集積所にポンと置く人がいますが、それはやめてもらいたいです。あそこをゴミ箱だと思っている人が意外と多いですけど、しっかりゴミ袋に入れて捨ててほしい。特に今の時期だと、マスクやティッシュは小さい袋に入れてもらえるとありがたいですね。小さい袋が破けることはなかなかないので。

――マスクやティッシュをそのまま捨てるなんて危険すぎるし、非常識ですね。

滝沢 危険度でいうと、ペットボトルもそうですね。しっかりキャップやラベルを外してから出してほしいです。キャップやラベルがついているペットボトルは工場に持っていって、清掃員が手作業で外しているんですよ。

リモート取材に応じてくれた滝沢氏

――え! 相当な量じゃないですか?

滝沢 ものすごい量ですよ。普通は夏がピークで飛び抜けているんですけど、今年はすでに夏並みで、例年の今頃と比べると倍以上。キャップを外していると腱鞘炎(けんしょうえん)になることもあります。それにペットボトルの飲み口に付着したウイルスは3日くらい残るとも聞きます。どうしても飲み口を触るので怖いですよね。

――滝沢さんはそういった清掃員目線のゴミ出しの注意点をツイッターに投稿していましたよね。しかも小池百合子東京都知事から「わかりやすくまとめてくれています。ぜひご一読ください」とリツイートされました。

滝沢 感謝のコメントもいただきました。その後、東京都がライブ配信している、東京都公式動画チャンネルの『東京動画』で対談もさせてもらいましたよ。

――見ましたよ。都知事と対談できる芸人はなかなかいないですよ。

滝沢 小池さんに「秀一さん」と名前で呼んでもらえました(笑)。本番の前後も気を使っていただいて、「何年くらいやっているんですか?」「ナチュラルな感じで良かったですよ」と声をかけてくれて、すごく優しい方でしたね。

――対談の最後に、都のホームページに自身のマンガ『ゴミ清掃員の日常』を掲載してもらいたいとお願いしていましたが、どうでしたか?

滝沢 つい芸人のノリで笑ってくれるかなと思って言ったんですが......。小池都知事からはまじめに「検討します」と言われました。放送を見た僕の周りの何人かに「出すぎたマネじゃないか?」と言われちゃいましたね(笑)。

5月10日に東京都公式動画チャンネル『東京動画』で小池都知事と対談。都知事からは「秀一さん」と名前で呼ばれていた

■マスクやカッパ、ゴーグル装着で夏は熱中症が心配

――清掃員として感染対策は何かしていますか?

滝沢 清掃車の回転板が動いているときはすごくほこりが立つんです。そのときにウイルスが舞って目に付着したら怖いので、僕はゴーグルを装着しています。あと呼吸器感染症のリスクを低減するN95というマスクもつけていますね。

――そういった装備品は支給されるんですか?

滝沢 ゴーグルは自前です。N95というマスクは粉塵(ふんじん)がひどい現場で以前支給されたもので、繰り返し洗って使っています。これまでは普通のマスクが毎日支給されていたんですが、コロナ禍で会社のマスクが不足して配れなくなったんです。

でもやっとゴールデンウイーク明けから月・水・金曜だけ配られるようになりましたね。でもまだ不足していて、みんなで譲り合ってなんとかしています。

――感染リスクが高い現場なので国からいいマスクを支給してほしいですよね。"アベノマスク"は使わない?

お笑いコンビ「ジャリズム」やピン芸人「オモロー山下」として活動していたインタビューマン山下が聞き手を務めた

滝沢 見たことないです(笑)。普段どおりに働きたいので、コロナの感染情報をあえて入れない清掃員も意外といるんですよ。知ってしまうと怖くて仕事ができなくなりますから。

――大変な精神状態で仕事をされているんですね。清掃員として国や自治体にお願いしたいことはありますか?

滝沢 自治体によってバラバラなルールを統一してほしいです。もしくは自治体ごとに独自のルールを作るならば、周知に力を入れてほしいですね。通常、ペットボトルは資源なんですが、環境省はコロナ感染者や感染が疑わしい人に限り、緊急処置としてペットボトルを可燃ゴミとして出すように呼びかけているんです。

でも自治体によっては「ペットボトルを1週間置いてコロナウイルスが消えてから資源ゴミとして出してくれ」というところもあるんですよ。

――それはゴミを出す側も混乱してしまいますよね。ほかに心配なこと、気になっていることはありますか?

滝沢 今はまだ大丈夫ですが、これから夏になると熱中症が心配ですね。感染対策でマスクやカッパ、ゴーグルを装着して作業しているんですが、暑くなったら外してしまいそう。汗で曇ったゴーグルを拭くと、目から感染して危なそうだし......。清掃員としては夏までにコロナが終息してほしいですね。

昨年5月に発売された、エッセイマンガ『ゴミ清掃員の日常』。妻・友紀さんが作画を担当し、発売当初から各メディアで話題を呼んで現在6刷

●滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
お笑い芸人・マシンガンズ。1976年生まれ、東京都出身。1998年に西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。「THE MANZAI」2012年、14年の認定漫才師。2012年、定収入を得るために、お笑い芸人の仕事を続けながらもゴミ収集会社に就職。ゴミ収集中の体験や気づきを発信したツイッターが人気を集め、話題を呼んでいる