『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、社会の「不公平感」について語る。

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もともとこの社会に存在していた不公平がコロナ禍で可視化されたのか、それとも新たな不公平が広がりつつあるのか、あるいは本当は存在しない幻影を見ているのか――

その内容はケースバイケースですが、ここ最近、世界中で「不公平感」に対する憤りが蔓延(まんえん)しているように思います。

直近の例でいえば、男性に対する性差別的なジョークで大炎上した韓国の女性コメディアン。その根底には、韓国の文在寅(ムンジェイン)政権が支持率回復のためにフェミニズムを前面に押し出していること、そしてそれに対する男性層(特に若い男性たち)の強い不公平感があるようです。

自分たちは兵役もあり国に尽くしているのに蔑(ないがし)ろにされ、女性ばかりが社会から守られている。前ソウル市長はセクハラ問題で自殺に追い込まれたのに、女性芸人の男性蔑視は許されるのか――そんな怒りです。

男尊女卑が激しかった韓国社会が「平等」に舵(かじ)を切ろうとするなか、社会的にも経済的にも地位が下がりつつある男性層の不満の矛先が女性に向いたという構図でしょうか。

この事例と並べて語るのが乱暴なのは承知の上ですが、日本医師会の会長がコロナ禍で政治資金パーティを主催した件や、自治体のお偉いさんがワクチンをこっそり優先的に接種していた件なども、炎上の背景には「不公平感」があると思います。

多くの国民に多大な我慢を要請してきた医師会会長らの振る舞いは確かに問題だったと思いますが、では、この「不公平感」をどんな行動に転じていくか。選択肢は大きく分けて以下の3パターンでしょうか。

①「世の中はもともと不公平だ」と受け入れ、現状維持を是とする。

②不公平に憤り、「トクしているやつら」や「諸悪の根源」を特定し、引きずり降ろそうとする。

③不公平そのものを是正するという強い意志を持ち、改善策を探す。

①と②は正反対のように見えますが、実は、社会全体の前進よりも自分の目先の利益や「気分が晴れること」を優先する点で共通しています。やや強引に当てはめれば、①は既得権のおこぼれにあずかろうとする与党支持層、②は既得権や官僚を叩くポピュリズム政党の支持層でしょう。

僕が時折悲観的になってしまうのは、少子高齢化でチャレンジ精神を失った人々がマジョリティになった日本では、①と②がののしり合いながら、ある意味で共犯関係的に現状維持を選び続けるという未来予測が容易に成り立つからです。

一方、③はいわば"グレタさん的"な、現状維持では逃げ切ることができないZ世代の思想です。不公平さの根源にある問題に目を向けるのは面倒くさいし、自分自身のライフスタイルや考え方とも向き合わざるをえませんが、グリーンランドの氷が溶けて海面が1、2m上昇することはほぼ確実だと専門家が警告するこの時代に、ゴリ押しで「昭和パラダイム」にしがみつく政府も、反対さえしていれば高齢化した固定ファンが喜ぶ野党も、より大きな問題から逃げている。

「昭和パラダイム」の恩恵をなんら受けることなく、回されたツケを払う立場にある若い世代はそれを許さないでしょう。社会が懲罰的に一部の勝者を引きずり落とすことや、そこから生まれる爽快感の意味について、今こそ真剣に考えてみてもいいのではないでしょうか。

●モーリー・ロバートソン(Morley ROBERTSON)
国際ジャーナリスト。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。レギュラー出演中の『スッキリ』(日テレ系)、『報道ランナー』(関テレ)、『所さん!大変ですよ』(NHK総合)ほかメディア出演多数。NHK大河ドラマ『青天を衝け』にマシュー・ペリー役で出演し大きな話題に。

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