芸人コンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、日々「ゴミ清掃員」としても働く滝沢秀一が、ゴミの捨て方を指南する連載「ベンキマンの捨て方」! ただし、ここで扱うゴミたちは、架空のものばかり。あの漫画で出てきたあの道具や、映画で見たあんな機械など......。実在しない架空のゴミを、現実世界ではどう捨てればいいのか? 前代未聞の"ファンタジーゴミ連載"!

【捨てるもの第6回】大量の矢(キングダム)

「キングダム」(原泰久)の52巻に登場する、大量の矢が降り注ぐ一場面。敵将ブネンの本陣へと突撃する壁将軍。ブネンは敵味方の区別なく、弓隊によって矢の嵐を浴びせかける。そんな「矢の雨」のなかで乱戦は続くが、族長カタリが討たれたことで壁軍・メラ族は退却を余儀なくされてしまう。

漫画「キングダム」で、大量の矢が雨のように降ってくるという戦の回がありますね。戦いが終わってみんなが帰った後、そこに残されたであろう大量の矢はどうやって捨てりゃいいんでしょうか? 

この矢は家庭から出たゴミではないので、専門の回収業者を呼んでもらわないと困ります。連載第2回(油風呂の油・魁!!男塾の回)でもやりましたけど、家庭ゴミ以外の事業系ゴミは業務用扱いとなるので、ゴミ処理券を買って貼っておかないといけないんですよ。料金を払って「大量の矢を捨てたいので回収に来てください」と頼むことになります。

あと、どうせまた戦争するなら、なんとか再利用できませんかね? また作って先尖らすのめんどくさいでしょう。捨てることを考えないで、まずはリサイクルから考えてほしいところです。

それでも、もし家庭ゴミとして毎日1本ずつ捨てるなら、我々も少しは目をつぶって回収しようかなと思うかもしれませんが、全部捨てるのに何日かかるんでしょう(笑)。

仮に1本ずつ捨てる場合、矢の先端が金属で他は木製だった場合、ゴミの回収には「9割ルール」というのがございまして、構成されている素材の9割が燃える素材であれば、燃えるゴミで出して大丈夫なんです。逆に9割が燃えない素材であれば、それは燃えないゴミになります。

ベルトなんかも、金属のバックル以外が燃える素材だとすると、これは燃えるゴミでOKです。本当はバックル部分だけ切ってほしいんですけど、手間がかかりますからね。書類の束を止めているホッチキスなんかも、このルールでいけばわざわざ外さなくても問題ありません

なので、この時代の矢なら燃えるゴミでいいと思います。可能だったら先端の金属部分だけは切って捨てましょう。

1本ずつ捨てる場合はそうだとしても、この何万本もの矢をある程度まとめてゴミに出したいという場合はどうでしょう?

東京のある区では、ビニール傘10本をまとめて捨てるなら粗大ゴミ扱いってところがあったりします。なので、一気に出したいときは粗大ゴミになると思います。

ゴミの回収はある程度計算して各地域を回っているので、大量のゴミをいきなりドバッと出されると他の家のゴミが回収できなくなります。あまりにも量が多いと、シールを貼ってそのまま置いていく場合があります

基本ルールで、1家庭で1回に出すゴミの量は「最大4袋(自治体によって3袋のところも)と決まってるんです。去年のコロナの時期にみんな一斉に断捨離をやった地域があったんですが、各家庭で一気に20袋とか出すから、予定のところまで回収しきれなくなりました。だから量が多すぎる場合は「1家庭で出せるゴミは4袋まで」というシールを貼ってそのまま置いていったことがありました。それで次回の回収時にもう一度出してください、とお願いします。

あと気を付けたいのが、これは戦争で使われた矢ですから、矢じりに毒とか塗ってる可能性もありますよね? そうなると清掃員の命が危ない。絶対に矢がゴミ袋を突き破らないように出してもらわないと困ります。

尖ったもので言えば、秋になるとイガ栗とかいっぱい捨てる人がいますが、気付かずに触ると刺さって痛いんですよ。トゲの付いたバラとかもまとめて捨てる人もいますが、これも危ない。

もっと危ないと言えば、不燃ゴミに包丁をそのまま出す人がいて、袋を持ち上げたときに飛び出してきたことがあります。そのときは包丁の柄の側が飛び出したからいいけど、逆だったら危なかった。そういう場合は刃にガムテープや段ボールを巻いて、「刃物です」とかひと言袋に書いて出してもらえるといいですね。

あと、矢が撃ち込まれた場所が自分の敷地だった場合、これは矢を撃った側の不法投棄になります。ちなみに不法投棄は重罪ですよ。個人では5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。法人は3億円以下の罰金刑。ニュースで顔が出でしまうくらい重大な犯罪なんです。

なので、矢を撃ってきたやつがいたら不法投棄だといって警察に任せちゃいましょう。矢を撃ってくるやつなんて大体ヤバいやつですよ。自分で対処するにはリスクが高すぎます

戦争は最大の資源の無駄遣いですから、許せないですね。壊れた家などのがれきも、あれ全部ゴミになりますから。戦争はやめましょうって話ですよ! 最後はゴミ以前の大きな問題になっちゃいましたけど(笑)。

滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数

※ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。お住まいの地域のルールをご確認ください。

★マシンガンズ・滝沢秀一の『ベンキマンの捨て方』は毎週木曜日更新!