勝利の方程式「JFK」で優勝した2005年の記憶も薄れ、阪神ファンも関西メディアもすっかり疑り深くなってしまった。しかし、今年は違う。「いや、結局ダメでしょ」という悲観的な声を打ち消すだけの材料がそろっている。

第一の理由は、2001年以降のセ・リーグ優勝チームのパターンから見えてくる。

そのパターンはふたつ。「独走」か「マッチレース」を経てのぶっちぎり優勝、もしくは、3チーム以上の「だんごレース」から抜け出すケースのどちらかだ。そして、今季は明らかに後者。首位ですら貯金わずか10前後、勝率5割5分に届くかという、例年になく低レベルな優勝争いなのである。

阪神の勝率は現在、5割4分1厘(8月25日時点)。だから、これから破竹の勢いで連勝する必要などない。今の調子を大きく崩さず、最後に巨人や広島よりちょっと上にいればいいだけなのだ。

しかも今年は、ライバルチームの勢いも心配する必要がなさそう。客観的に見て、そろいもそろって不安要素だらけ。

例えば巨人。先発陣では内海が全然ダメ、ベテランの杉内もパッとせず、前半戦を引っ張った2年目の菅野も指を故障。大乱調の西村の代わりに抑えを務めるマシソン、中継ぎエースの山口も従来の安定感はなく、打線の低迷も深刻だ。

広島は新人の大瀬良(おおせら)ら若手投手の頑張りと、エルドレッドの異常なホームラン量産で春先は快進撃を見せたが、それがずっと続くはずもなく夏場は一進一退。

こんなとき、いつの間にか上がってくるのが得意パターンの中日も、主砲の和田が右手の骨折で離脱し大幅に戦力ダウン。各チームが夏場に総崩れした今季は「阪神が優勝するためのシーズン」だといっても過言ではない。

「今の阪神は、どう見ても〝本当に強いチーム〟じゃない(苦笑)。エースの能見が不振で、先発の枚数もギリギリ。内外野の野手層も相変わらず薄い。とても〝優勝争いの本命〟という感じではありません。しかし数字を見ると、負けが込んだのは9勝15敗に終わった交流戦だけ。同一リーグ内の対戦に限れば、実は驚くほどいい成績を残しているんです」(スポーツ紙デスク)

確かに、阪神はセの全5球団に勝ち越している上、DeNAという〝お得意さん〟もつくっている。一方、優勝候補本命といわれる巨人は、交流戦で16勝8敗と大きく貯金をつくったものの、同一リーグでは阪神、広島、DeNAに負け越し。とても優勝するチームの数字ではない。

「そういう意味では、阪神にとって怖いのは巨人より広島ですが、ここもエース・前田健が本調子ではない。広島が優勝狙いから〝2位狙い〟にシフトしてくれれば、阪神はもらったも同然です」(前出・デスク)

優勝から離れて経験のなさもプラスに?

次に、優勝チームには投手部門の主要タイトル獲得者がつきものだ。2001年以降の13年間を見ても、最多勝9回、最優秀救援投手5回、そして2005年に新設された中継ぎの最多HP(ホールドポイント)が9年間で6回と、まさに優勝に直結する重要な指標だ。

そこで今季の阪神はというと、先発ではメッセンジャーが11勝でリーグトップ。しかも今季は巨人を4勝0敗とカモにしており、残り2カードの対戦も先発ローテを崩さずに登板できる。ライバルを叩き、かつ勝ち星を稼げる最高の日程だ。そのほかの対戦相手も、ローテどおりなら相性のいい対DeNA戦が3試合。どう考えても最多勝だ。

さらに、抑えの呉昇桓(オ・スンファン)は32セーブで2位に大差をつけ、タイトルはほぼ確定的。中継ぎの福原も、32HPでリーグトップ……。投手3部門を独占となれば、セ・リーグ初の快挙である。

加えて、打撃も好調。現在打率トップのマートンと、大不振で二軍調整中の広島・エルドレッドを6打点差で追うゴメスがいる。この調子がこのまま続けば、最多勝、抑え、中継ぎ、打率、打点のタイトルを総ナメ。これで優勝しないほうがおかしい!

とはいえ、球界ではしばしば、「最後は優勝経験者の存在がカギになる」といわれる。阪神には主力に優勝経験者が少ないため、夏場以降の勝負どころでプレッシャーが強くなったとき、踏ん張れないのでは……という不安だ。

しかし、今季の阪神に限っては、むしろ「優勝経験のなさ」がプラスに作用しているという。

「2年前までは、藤川球児(現カブス)や金本知憲(現解説者)がチームの中心にいて、過去の体験をもとに『今踏んばらなきゃ優勝できない』とか、『今季優勝しなかったら、いつするんだ』という熱い気持ちを充満させていた。でも、外から見ていた印象では、それが逆に若手をガチガチに萎縮(いしゅく)させ、結果的に優勝を逃してしまったという面も否定できません」(セ・リーグ某球団関係者)

幸い、今の阪神にそんな空気はない。優勝争い常連の巨人や中日と違って、阪神は「重圧を感じないままコロッと優勝」するべきチームなのだ。

「そんな伸び伸びした環境で台頭してきたのが、日本ハムから移籍して3年目の今成(いまなり)と、ドラフト4位の新人捕手・梅野です。今成はもともと捕手ですが、サードの守りもうまくこなし、持ち前の勝負強い打撃でチームに大貢献。 梅野も〝将来の正捕手〟という扱いだったのが、ベテラン捕手が立て続けに故障や不振で離脱したことで出番が回ってきました。最近では、首脳陣が『そろそろ休ませよう』とヘンな配慮をして梅野を外した日はかえって勝率が悪くなるほどです(笑)」(前出・デスク)

夏場に使い減りしなかった若手がゴロゴロ!

では、夏から秋にかけての「ガス欠」は心配ないのか? だが実はそれも、今季の阪神は二軍の層も厚く、イキのいい多くの若手が出番を待っている。

「先発では二神(ふたがみ)、中継ぎでは玉置(たまき)、歳内(さいうち)、岩本。使えば絶対、いい仕事をする若手だと思います」(前出・スポーツ紙デスク)

では、なぜ今まで出番が少なかったのか? 阪神球団関係者が苦笑する。

「和田監督は、よく言えば手堅い。悪く言えば、積極的な采配は一切せずに選手任せ。若手には一度チャンスを与えても、結果が出ないとすぐに落とす。実績のない選手が失敗して負けたときに『なぜ使った?』と批判されるのが怖いからなんだけど。それで結局、特に中継ぎは安藤、加藤、福原といったベテランばかりが一軍で奮闘し続けているわけ」

逆に言えば、シーズン終盤に元気な投手が「余っている」チームなどほかにはない。たとえ主力に何かあっても、阪神にはそれを補う底力が残っている!

これだけの好条件がそろっている以上、今季の阪神は絶対に優勝する。そうとしか言いようがないのだ!

■週刊プレイボーイ36号「史上最大の“凡セ”で阪神が絶対優勝する7つの理由」より(本誌では、さらに虎ファンを安心させる理由も解説!)