1stステージで優勝した鹿島。ピッチではベテランの小笠原の活躍が印象に残ったと語るセルジオ越後

最後はクラブとしての経験の差が出たのかな。

Jリーグ1stステージは鹿島が優勝した。最大の勝因は17試合で10失点(18チーム中1位)という堅実な守備。攻撃陣に爆発力はないものの、力の拮抗する上位陣ではステージを通して最も好不調の波が少なかった。安定した戦いぶりが光ったね。

かつての三冠(Jリーグ、ナビスコ杯、天皇杯)達成時(2000年)やJリーグ3連覇時(07~09年)に比べれば、選手の顔ぶれはずいぶん地味になった。でも、“勝利の伝統”はしっかりと受け継がれている。石井監督以下、黄金時代を知るOBスタッフがベンチにいるのも大きい。

また、ピッチ上ではベテラン小笠原の活躍が印象に残った。37歳になった今もチームの大黒柱。豊富な運動量で守備を頑張るのはもちろん、相手との駆け引きがうまく、試合の流れを読む力がある。キャプテンシーも見事。若い選手たちのいいお手本になっている。ベテランはこうあるべきという素晴らしいプレーぶりだった。

2位の川崎は、鹿島とは対照的な攻撃的なサッカーで初タイトル目前までいった(18チーム中1位の33得点)。でも、16節の最下位・福岡戦に引き分け、首位から転落したのが響いた。その試合、(中村)憲剛を腰痛で欠く不運があったけど、それも含めてチームの総合力。これまでに数多くのタイトルを獲得してきた鹿島と、いまだ無冠の川崎、最後にその差が出てしまったように思う。

ただ、川崎の負け数は鹿島の2敗よりも少ない1敗。限りなく優勝に近い2位だし、あの攻撃的なサッカーは面白い。2ndステージでもチャンスは十分あるんじゃないかな。

一年でも早く1ステージ制に戻すべき

開幕前に優勝候補に推す声の多かったG大阪、浦和らアジアチャンピオンズリーグ(ACL)組は、いずれも過密日程で調子を崩した。実にわかりやすい現象だね。特に、ACLで決勝トーナメントに勝ち進んだ浦和は、Jリーグでも首位を維持していたものの、ステージ終盤に週2ペースでの5連戦をこなすことになり、そこで失速した。せっかくACLで頑張ったのに、まるで罰ゲームのように試合を詰め込まれた。2ステージ制の弊害だ。浦和はJリーグに文句を言いたいだろうね。

すでに開幕している2ndステージは鹿島、川崎に加え、ACLから“解放”されたG大阪、浦和による優勝争いになるだろう。宇佐美が抜けたG大阪と、外国人枠の余っている浦和は、ともに前線に効果的な補強ができるかどうかがカギ。ぜひ巻き返して、リーグを盛り上げてほしい。

それにしても、1stステージ最終節に対する世間の盛り上がりのなさを見て、あらためて2ステージ制への疑問を感じた。優勝のかかった鹿島の試合のテレビ中継はBSで、地上波で中継していたラグビー、陸上競技のほうが目立っていたし、スポーツニュースやスポーツ新聞での扱いも同様。

でも、それも当然だよね。メディアもファンも、1stステージ優勝にはそれほど特別な意味はないと思っているのだから。何より優勝した鹿島の選手たちがはしゃいでいなかった。各選手ともインタビューで「年間優勝しなければ意味がない」と強調していたね。

やはり、2ステージ制には無理がある。目先のお金も重要だけど、長期的に見れば、一年でも早く1ステージ制に戻すべきだ。

(構成/渡辺達也)