元総合格闘技家でクラヴマガ・ジャパンのインストラクター・川畑勇人氏 元総合格闘技家でクラヴマガ・ジャパンのインストラクター・川畑勇人氏 週プレNEWSで連載中の漫画『50代の☆リアル体験入門 ドラゴン先生 格闘ロード』で、6月22日から配信公開となった「第3闘:クラヴマガ・ジャパン編」。

イスラエル軍やアメリカの政府機関でも使われ、合理性を重要視するという戦闘格闘技であるクラヴマガ。「(兵士に)今日教えることは今日できるようにする」方針でプログラム化されている、まさに即効性にも価値のある軍隊格闘術だ。

DDTプロレスに始まり、第2弾ではロシア軍の誇るシステマの道場に挑戦、強くなるための武器を手に入れてきたドラゴン先生こと漫画家・岡村茂氏だが、今回は54歳の自称"漫画家界最強"がはたしてどこまでその「息をつけない」ハードトレーニングについていけたのか?

気になるガチ体験は漫画で読んでいただくとして、この挑戦を受け、鬼教官のように指導してくれたクラヴマガ・ジャパンのインストラクター、川畑勇人氏にインタビューを敢行。前編では、クラヴマガのパンチについて伺ったが、その真髄について明かす。

―では、そもそもクラヴマガの特徴といえば、なんでしょう?

川畑 日本語でいうと『攻防一体』ですね。必ず例外もなく、これだけ!といってもいいくらいです。

―今回の漫画にも描かれていますが、初手で受けて、同時に攻撃するという。

川畑 後は『条件反射』。攻撃されたら、普通の人はびっくりします。その時にパニックにならず、自然なリアクションを利用しつつ対処できるよう訓練します。そうすると、だんだん相手の攻撃を止めるのか流すのかを決める余裕もできてきます。

―『攻防一体』と『条件反射』...このふたつで語られるわけですね。では、クラヴマガで上達していくにはどんなことが大切でしょう? 

川畑 まずは先ほどの条件反射ですかね。首を絞められたら、ついそこに手が伸びるのが人間です。その時、クラヴマガを使うために手のひらをフックの形にできるようにするのがトレーニングです。

次に大切なのが気持ちですね。どんなにいいものを持っていても、気持ちがないと体は機能しなくなります。クラヴマガのトレーニングでは首を締められたり凶器で襲われるなど、かなり追い込まれた状況を想定し、繰り返し行なうことでメンタル面での準備ができるようになる。

あとは、体力も必要です。複数の相手に囲まれても、技を知っていて多少なりとも圧せれば、タイミングを見て逃げられます。体力が足りず、逃げるまで残っていないというのではやられてしまうだけですから。最低限、危機を回避できるだけの体力は必要だなと。

―最初の入門希望者レベルだと、体力不足の人も多そう...。

川畑 そう、そこでレベル1など初心者・入門者用のプログラムでは、いつの間にか体力がつくようなメニューを取り入れているわけなんです。

―そういう人たちを軍隊流で号令かけて、グワーーっと追い込んでいくわけで。

川畑 むしろ、追い込まないと自然と体がセーブしちゃうことも多いんです。号令かけて「ハイ! 次!」ってやることで、力を引き出すことができる。

―ところで、クラヴマガは世界に広がって、日々、進化しているそうですね。

川畑 イスラエルが発祥ですが、合理性があることからアメリカ人にも好まれて広まっています。そして、それぞれの国で環境に合わせて変化しています。日本は日本で変わっているんで、使われている技で他国にはないものも多い。

―それぞれの国民性とかが影響してくるんでしょうか?

川畑 豪快なスタイルが好まれたり、繊細なものを求められたりなど国民性もありますけど、メインの指導者のベースが反映されてくるというのが大きいですかね。それも面白いところです。

―ということは、道場ごとにも違う?

川畑 そうですね。うちの場合は、普通は対極にあるような武道とか軍隊格闘術...様々なものを取り入れているのが特徴であり個性です。いいところをちょっとずつ応用して「できないことをできるようにする」ことを日々、目指しています。

―オープンで柔軟な考え方をしているんですね。

川畑 何より応用力が大切だと。「相手がこう襲ってきたら、こう行く」みたいに決めつけてしまうと対応できない場合があるし、攻防のバリエーションはたくさんあるほうがいい。クラヴマガの技は無限に考えられますから。

―では、入門希望者はそういうものも理解し、軍隊格闘術あるいは実戦戦闘術で強くなりたい!という人が多い?

川畑 実際、ガチンコで危機感持って強くなりたいっていうニーズは少ないですけどね。今の日本で入門してくる理由は「できたらカッコいい」とか「体力不足を解消しよう」「フィットネス目的で」などという動機で気楽に来られている方たちがやはり圧倒的です。

その中で真剣に「軍隊戦闘術をやりたい!」という人もいて、続けているうちにハマって、どんどん高いレベルに上がっていく方も目立ちます。

―そこで本日はその戦闘術で強くなりたい人の見本でもあり、憧れの対象である川畑さんのフルのデモンストレーションを拝見させていただけるとのこと...そろそろよろしいでしょうか?

川畑 そうですね。では、まずは全身を使ったパンチから。その場で手だけ出すのではなく、体で相手に当たって行きます。(以下、動画参照)

―体重差のある相手でも吹っ飛ばせますね! 音もすごい!

川畑 続いて、対素手の闘いです。相手役になってくれるのはクラヴマガ・ジャパンの中村康之トレーナーですけど、間違えてパンチが当たりそうになっても、彼なら見切れるので安心です(笑)。

―相変わらず、ものすごいスピード感です。

川畑 次は対刃物。腹のあたりを狙ってくるという設定で行ないます。

―刃先がくるラインから素早く体をずらすと同時に攻撃、ですね。

川畑 最後は対拳銃。拳銃を奪う時に手首に支点を作り、相手が拳銃を保持できないよう方向、主に親指方向に力を入れるのがコツです。

―すさまじい攻防一体、しかと拝見しました! あっという間に決着がつくのはクラヴマガの理想ですね。本日はありがとうございました!

(取材協力/クラヴマガ・ジャパンwww.kravmaga.co.jp/)

■連載漫画『50代の☆ リアル体験入門 ドラゴン先生 格闘ロード』『第3闘:クラヴマガ・ジャパン編』は週プレNEWSで配信中!

■川畑勇人(かわはた・はやと) 1984年生まれ。プロ格闘家としてキックボクシング、総合格闘技の大会で活躍。国内のみならず海外の試合も経験し、引退後は武術や身体操作の道を追求、クラヴマガに出会い、指導者に。クラヴマガ・ワールドワイド公式認定インストラクターでもあり、現役最強クラスの格闘家の指導にもあたる。ラーメンライスをこよなく愛し、特に麺を食べ切った後のスープ&ライスが好物というナイスガイ