森保監督が率いる日本代表について語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第62回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、森保一(はじめ)監督が率いるサッカー日本代表について。A代表とオリンピック世代となるU-21代表、両方の監督を森保監督が兼任することによってどのようなメリットがあるのか? 宮澤ミシェルに日本代表の今後の展望を含めて話を聞いた。

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森保監督に率いられたU-21日本代表が、アジア大会で準優勝。昼間は外出するのがシンドイくらい暑い赤道直下のインドネシアでのハードスケジュールの中、しかも他国はU-23年代の選手たちに加えて、オーバーエイジも使った上での結果だから、本当によくやったよ。

決勝では韓国に1対2で負けたけれど、相手にはオーバーエイジでトットナム所属のソン・フンミンや、W杯ロシア大会で守護神だったチョ・ヒョヌ、ガンバ大阪でプレーするファン・ウィジョがいた。

その相手に対して粘り強く守備をして、延長まで持ち込んだ。東京五輪を目指す日本の若い選手たちにとっては自信にしていいと思うな。

その森保監督のもとで、いよいよ9月からはA代表も始動するけれど、今回のアジア大会を戦った東京五輪世代と、その上のA代表のサッカーが同じ監督の評価基準で繋がっている。これは日本サッカーが面白くなっていく予感がするよ。

「下のカテゴリーでいいプレーをしたら、A代表に入るチャンスがある」とストレートに言われたら、東京五輪世代の選手たちにとっては大きなモチベーションになるからね。

これまでの日本代表は、下のカテゴリーで結果を残しても、A代表の外国人監督がやっているスタイルが違うから、別物として扱われることが多かった。だから、下の世代からの突き上げも、なかなか生まれなかった。

ただ、バルセロナは育成年代からトップチームまで、やっているサッカーのスタイルは一貫している。若い選手であっても実力があればトップチームで起用されるチャンスがあるし、指導者の側も選手の実力を測る物差しがブレないメリットもある。

バルサと同じように日本代表と五輪代表も森保監督のもとに一貫したスタイルを取るから、選手にとっても、監督にとっても風通しのいいサッカーができるはずだよ。

森保監督といえば3-4-2-1のフォーメーションでアジア大会も戦ったけれど、相手や状況によっては4-2-3-1や4-3-3も柔軟に使っていくんじゃないかな。そうじゃないと、4年後のW杯カタールに向けての幅がなくなってしまうからね。

だから、選手が生き残っていくためには、戦術理解度も重要な要素になるだろう。ただ、いまの若い選手たちは幼い頃からクラブ育ちが多いから、そのあたりの勉強もきちんとやってきているだろうし、心配はあまりしてないけどね。

森保監督にとって大きな課題は、いかにして海外でプレーする選手を見ていくかになるよね。Jリーグで五輪世代とA代表の選手をチェックし、大学やクラブのユースでプレーする五輪世代も見なくてはいけない。それだけでも大変なのに、海外組ともなると、時間をどう作っていくのかは鍵になるだろうな。

初陣となる9月のA代表の親善試合には、堂安律や冨安健洋といった海外でプレーする東京五輪世代も招集したけど、これにはA代表の新鋭探しの意味もあるが、アジア大会に呼べなかった東京五輪代表の選手をチェックする思惑もあるだろうね。

五輪代表の活動には海外クラブの選手への拘束力がないから、海外組を呼ぶのは難しい。だけど、森保監督のもとでA代表も五輪代表も同じサッカーをやるから、ポジションごとに選手を使ってみて、能力を判断しようという狙いだし、両方の代表監督を兼務しているからこそのメリットを活かしている。

2年後の東京五輪を目指す世代には、攻撃的なMFには堂安律や三好康児などのタレントが揃っていて、さらに下の世代には久保建英などもいる。誰が使われても不思議ではないレベルにある。

まずは2年後の東京五輪に向けて、五輪代表での生き残りを目指すことになるけれど、彼らがそこで切磋琢磨しながら、A代表まで突き抜けてくれることを期待しているよ。

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