デビュー当時から「ゲイレスラー」として戦う男色ディーノダッチワイフや透明人間との試合、キャンプ場や本屋で行なう「路上プロレス」など、独自の路線でコアなファンを獲得するインディプロレス団体「ＤＤＴ」。そのＤＤＴが昨年、設立２０年にしてあのサイバーエージェントのグループ会社入りし、業界を驚かせた。
その直前、団体プロデューサーに就任していたのが、ゲイレスラー・男色ディーノ選手。好みの観客の唇を次々と奪う入場パフォーマンスで会場に恐怖と爆笑の渦を巻き起こす人気レスラーだ。
今年８月、ＫＯ－Ｄ無差別級王者になった際に、両国国技館大会（１０月２１日開催）のメイン試合に注力するためプロデューサーは辞任したが、団体を想う彼に、団体としての変化や課題、そしてヤリすぎた過去まで、赤裸々にお話しいただいた！
■グループ入りで「ゼロからのやり直し」！
――団体プロデューサー就任とほぼ同時期にサイバーエージェントのグループ会社になり、１年が経ちましたね。
男色ディーノ（以下：ディーノ） サイバーエージェントの件は、寝耳に水だったのよ！
――そうだったんですか！？
ディーノ そういう状況なら私も引き受けてなかったんだけど（笑）。インサイダー取引になっちゃうとかで、さすが上場してる会社は違うわ。就任当時に練ってた構想もあったんだけど、ＡｂｅｍａＴＶが乗ってきちゃったから、根底から崩れ去って。ゼロからのやり直しを余儀なくされたわね！
――インディならではの独自路線で人気を獲得したＤＤＴだけに、放映するとなるとＮＧも多そうですね。
ディーノ 地上波に比べたらそこまででもないとは思うけど、例えば今まで私は平気で中指を立ててたの、アリかナシかというとナシって言われちゃった。まあ、どさくさに紛れて使ってはいるけど。
――結局使ってるんですね（笑）。
ディーノ あと、私が入場する時は注意事項がアナウンスされるんだけど、そこに含まれる「ホモです」って表現がそもそもアリなのかとか！
――コンプライアンス的には一番危ないディーノさんが自ら判断していくという（笑）。
ディーノ そうなのよ。観ている層の想定も難しいし、ＡｂｅｍａＴＶに関しては今のところすべて手探りね。
■そもそもインディプロレスはスキマ産業
――ＤＤＴはプロレス業界で売上規模２位の人気を誇ります。
ディーノ 市場原理で、需要と供給が成り立ったってことよね。おかげさまで一定の方々に支持を得てるようね。
――とくにディーノさんの入場は、男女問わずみんな楽しみに待ち構えてます。
ディーノ そこに関しては、ただオスの原理で動いてるだけだから、わかんないわね（笑）。そもそもスキマ産業だし。
――スキマ産業とは？
ディーノ 大手にはできないやり方を探らないと、インディプロレスは生き延びることはできない。裏を行くってことね。私も学生プロレス時代に「プロがやってないことって何だろう」って考えて、自分の性癖をさらけすことにたどり着いて、たまたまここまでやって来られた。でもそういう面白さもあるのよ。ＤＤＴもだいぶ大きくなったとはいえ最大手ではないし、ここから大きくする喜びもあるし。
プロレスの歴史って意外と短くて、力道山先生が街頭テレビで応援されてた時代から６０、７０年しか経ってない。正直、そんな短い中で「伝統」とか「しきたり」って言われても......っていうのはあるわね。それを好きな人はいるだろうし否定はもちろんしないけど、そうじゃないアプローチの仕方もあっていいんじゃない？
――価値基準が１個だとつまらないと。
ディーノ そうそう。今は新日本プロレスが一強になってて、そこで通用するかしないかの論調だけなのが、解せないわね。なんでその軸だけで考えちゃうのかしら。もちろんそっちのほうが観ている絶対数は多いし、言うなれば世界で使われている英語みたいなもの。だから英語も日本語もしゃべれればいいんだけど、英語だけ話せるからイイとか優劣をつけたがるのは、ちょっと不思議ね。
――世界の共通語だけでなくていいと。
ディーノ そう。英語を覚えるのは自由だけど、日本語のまま大きくしてもいい。むしろ自分の語学に自信があるなら、その言語を話す人口を増やしたほうが楽しいんじゃないって思っちゃう。レスラーはまず独自の自国語を広めていくべきじゃないかしら。
■人形に見えて奥深いレスラー「ヨシヒコ」
――スキマ産業などと表現される通りＤＤＴのプロレスは独特で、そのひとつはリング以外で試合する「路上プロレス」ですよね。
ディーノ 路上プロレスはＤＤＴの特徴かも。社長の高木（三四郎）が自伝を出す時、プロモーションがてら本屋でプロレスしたのが最初だけど、昔から（所属していた）飯伏幸太もあらゆるところでやってたし。
――自動販売機の上から飛んだり、相手を岩の上から池に落としたり、やりたい放題ですね！
ディーノ 彼は子供の頃から学校とか砂浜でもやるようなコで、プロレスを知らない人の前で、自分のスタイルをやりたいって欲がすごい。まったく知らない人でも「何これ！？」と興味を沸かせる自信があるのよね。
――選手も個性的で、まるでダッチワイフのような姿の「ヨシヒコ」という所属選手も。
ディーノ 彼の存在に関して明言しづらい部分はかなりあるんだけれども（笑）。でも一見、人形と戦っているように見えるけど、彼は鏡みたいな存在。深く観てると対戦選手の個性や哲学が試される部分もあるの。ヨシヒコに対しては理想の試合ができるわけだから、そのへんが見えて面白い選手よ！
――そうだったんですね。ヨシヒコ戦はとにかくインパクトがあり、プロレスを知らなくてもバラエティとして楽しめます！
ディーノ だとしたらうれしいわね。私は「ふーん」より「何これ！？」「何してんの！？」が大事だと思ってるから。そういう引っ掛かりがないことには「もっと知りたい」ともならない。引っ掛かる率が１割だとしても、１０人だったら１人、１００人だったら１０人になるから、そのために広く届けていきたいわね。
――そういう意味ではＡｂｅｍａＴＶはピッタリのタイミングで出会った媒体ですね。
★後編では、世代が広がるＤＤＴの問題点やプロレス愛を語る
■男色ディーノ
１９７７年５月１８日生まれ 広島県出身 １７９ｃｍ １０５ｋｇ 得意技・男色ドライバー
日本が誇るゲイプロレスの第一人者。２３日（日）に行なわれる「Ｒｏａｄ ｔｏ Ｒｙｏｇｏｋｕ ２０１８」（後楽園ホール）に出場予定。１０月２１日（日）に開催する「両国ピーターパン２０１８～秋のプロレス文化祭～」でのメイン試合出場を目指す
Ｔｗｉｔｔｅｒ【@dandieno】
ＤＤＴ公式サイト【https://www.ddtpro.com/】