サイバーエージェントがどこまで本気なのか、継続性はあるのか、しばらく様子を見たいと語るセルジオ越後氏

IT大手のサイバーエージェントが、J2の町田ゼルビアの経営権を取得したことを発表した。

サイバーエージェントの藤田晋社長は会見の場で、町田の現経営体制を継続したうえで「東京発、世界に通じるビッグクラブへの成長を目指す」と語ると、試合会場にも足を運び、サポーターの前で「チームを全面バックアップします」と宣言した。

率直に言って、町田だけでなく、Jリーグにとってありがたい話だ。町田は今季、J2で上位につけているにもかかわらず、スタジアムの収容人数や練習施設などがJ1の昇格基準を満たさず、J1ライセンスを取得できていない。つまり、もし今季優勝しても来季はJ1に昇格できないんだ。こんなに残念な話はないよ。

でも、サイバーエージェント傘下になることで、早期のJ1ライセンス取得は確実。そして、藤田社長の言葉を信じるならハード面の充実だけでなく、戦力補強、さらにはファン層の拡大の施策も期待できるだろう。

もちろん、企業とサッカークラブの経営は違う。かつてJリーグでは親会社が途中でチームを投げ出した例もある。また、現時点では具体的な強化ビジョンもはっきりしない。それだけにサイバーエージェントがどこまで本気なのか、継続性はあるのか、しばらく様子を見たいというのが本音だけど、それでもやはり前向きな話だし、Jリーグに新しい風を吹き込んでほしい。

その少し前に行なわれたJリーグの実行委員会では、外国人枠の段階的な拡大が議論された。現行の外国人3枠+アジア1枠+提携国1枠を、来季は外国人5枠+提携国枠に変える案が挙がっているそうだ。このコラムでは何度も言ってきたけど、外国人枠拡大については大賛成。むしろ遅いくらい。

この話題になると、いつも「日本人選手の出場機会が減る」「若手の育成が阻害される」といった反対意見も出てくるけど、ナンセンスだね。

例えば、ロシアW杯に出場した日本代表を思い出してほしい。メンバーの半分以上が海外、それも欧州でプレーしていた。彼らが選ばれたのはなぜか。それは普段からJリーグより厳しい環境で、試合に出るために競争をし、レベルアップしてきたからだ。だから、今のJリーガーはみんな海外に行きたがる。競争は激しくても、それを勝ち抜いてポジションを得れば収入も増えるし、何より代表に選ばれる、と。

だったら、それに近い環境をJリーグでもつくればいいんだ。外国人枠を増やしてポジションを奪うのが大変だとなれば、必然的にリーグのレベルも上がるはず。リーグのレベルが上がればステイタスも上がる。そのなかで結果を出した選手は今よりももっと代表に近づく。

当然、出場機会が大幅に減る選手も出てくるだろう。でも、JリーグにはJ2もJ3もある。そこで結果を残してJ1に再チャレンジすればいいだけの話。プロなら当然の競争だ。

欧州の強豪クラブの大半も自国の選手だけでなく、レベルの高い外国人選手がメンバーの半数を占めている。どこも世界選抜みたいなチームだ。でも、だからといって、その国の代表チームが弱くなったという話は聞かない。代表チームの強さは、基本的に自国リーグのレベルに比例することが多い。だからこそ、外国人枠拡大は取り組むべき価値があると思うんだ。

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