ブラジルW杯の悔しさを払しょくするため、ロシアW杯の長友には執念みたいなものを感じたと語るセルジオ越後氏

もう何年も前のことのように感じるね。

今年の日本サッカー最大のトピックはなんといってもロシアW杯だろう。日本は2大会ぶりにグループリーグを突破。決勝トーナメント1回戦では強豪ベルギー相手に一時2点のリードを奪いながら、痛恨の逆転負けを喫して大会を終えた。

あらためて、この結果をどう考えるべきか。

昨年8月にW杯出場を決めて以降、ハリルホジッチ監督率いる日本は低調な試合を続けた。今年に入っても流れは変わらず、世間にもW杯イヤーの盛り上がりはナシ。このままロシアでも惨敗したら、今後の日本サッカーはどうなるのかと僕も不安に思っていた。

その後、4月に日本サッカー協会が「コミュニケーション不足」という、腹落ちしない理由でハリルを更迭。後任にはハリルを支える立場(技術委員長)の西野さんが就いた。本番まで約2ヵ月。何かを変えるには時間がなさすぎ、やはり明るい展望は持ちにくかった。僕はテレビ番組で「決勝トーナメント進出の可能性は1、2%」と厳しい予想をしたけど、当時は多くの人が同じような見方をしていた。

その意味では決勝トーナメント進出は予想外。不利な下馬評を覆すべく、選手たちがよく奮起したと思う。吉田、昌子を中心にチームとしてしっかり守り、カウンターから数少ないチャンスをモノにした。大迫ならポストプレー、乾ならドリブルやワンツーでカットインしてのシュートと、攻撃陣もそれぞれの役割を果たした。

MVPを選ぶなら長友で決まり。大会直前、彼は「ネガティブな雰囲気も批判も吹き飛ばしたい」と髪を金色に染め、チーム内外に漂う重苦しい雰囲気を一変させた。メディアの注目を自分に集中させて、雑音を消したんだ。あれは明るい性格の彼にしかできないナイスプレー。大会に入っても、持ち前の豊富な運動量で大きく貢献した。

長友は今年1月、出場機会を求めてインテルからガラタサライに移籍したけど、それもすべてはW杯のため。新天地で一気にコンディションを上げ、本番にピークを合わせてきた。よほど前回ブラジルW杯の惨敗が悔しかったんだろうね。何か執念みたいなものを感じたよ。ベルギー戦の終盤はさすがに疲れを隠せなくなっていたけど、それまでの活躍を見れば、誰も彼を責められない。

ただ、選手たちは頑張っていたけど、W杯を迎えるまでの協会のチームマネジメントはお粗末だった。また、西野監督の采配も納得感のあるものではなかった。特に、ベルギー戦で2点リードしてからの選手交代では後手を踏んだ。高さのある選手を次々と投入する相手の狙いどおりに逆転された。

結局、日本が勝ったのは、試合開始早々に相手が退場者を出した初戦のコロンビア戦だけ。大きな幸運に恵まれながらも、2002年日韓W杯、10年南アフリカW杯と同じベスト16に終わった。だから、「ある程度の結果が出たからよかった」で終わらせることなく、反省すべき点は反省し、次につなげていかなければならない。

ロシアW杯後、長谷部、本田らが代表引退を表明。その一方、森保新監督の下、南野、中島、堂安といった若い世代が台頭してきた。来年もアジア杯、コパ・アメリカと大きな大会が続くけど、どんなプレーを見せてくれるのか。しっかりと見守りたいね。

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