恵まれた美貌と強靭な肉体を併せ持つ、屈指の美女ファイター・杉山しずか。大学時代に総合格闘技のキャリアをスタートさせた彼女は、2008年から始まった女子格闘技団体「JEWELS」に旗揚げ戦から参戦。これまで女子格闘技界を牽引してきたひとりだ。

近年は、筋肉女子たちが集うスポーツ系バラエティー番組『超人女子(テレビ朝日系)』にも出演し、美しいビジュアルとマッチョボディで注目度はさらにアップ。そんな彼女は、いったいなぜ総合格闘家になったのか?  また、2018年大晦日にはRIZIN 平成最後のやれんのか!』の舞台で、1年前に敗北を喫した渡辺華奈との再戦が決定。その大一番に向けた思いや、闘い続ける理由についても直撃した!

***

――杉山選手は、もともとバレーボールをやっていたそうですね。

杉山 はい。小4から高校まで。都大会に出たりして一生懸命にやっていました。その間は将来、体育教師になるのが夢でした。

――先生に! それは何かきっかけがあったんですか?

杉山 小学校の頃、大好きな女性の体育の先生がいて、「体育教師ってカッコいいな」って思ったんです。ただ中・高では「先生になりたい」なんて周りに言えませんでしたけどね。先生をむしろ困らせるタイプだったんで。

――困らせる? 意外ですね。

杉山 そこまで悪いことをしていたわけじゃないですよ。私、小中高とエスカレーター式の学校に通ってて、しかも女子校だったんです。女子って集団になると強いじゃないですか。だから男の先生たちをからかったりしてね(笑)。でもまた別の先生に「いま全力で頑張れば、絶対に夢は叶うから」と熱血に言われたことがあって。その言葉が胸に刺さったのか、進路を決めるときはやっぱり教師を目指しました。

――それで東海大学に進学するわけですか。

杉山 そうです。その頃は教師を目指す一方、スポーツライターにも興味があったりしたんですけど、いずれにせよスポーツに関わる仕事をしたくて、東海大学でも体育系の学部に進みました。

――東海大学というと、井上康生さんをはじめ数々の有名柔道家の出身大学ですよね。

杉山 柔道には興味がありました。体育教師って必ず柔道や剣道を教えなきゃいけないんですよ。でもそれまで私はコンタクトスポーツの経験がまったくなくて。だから、大学生になったのを機に柔道をやっておこうかなと。ただ大学の柔道部はトップの人ばかりできっとついていけない。そこで近所の道場でこっそり始めようかと思い19歳のときに、空手道禅道会に入りました。

――それ、思いっきり空手の道場ですよね(笑)。

杉山 そうだったみたいです(笑)。でも、ガラス越しに道場を覗いていたら道衣を来ているし、なんか投げ合っているし。いいんじゃないかなって。

――そこまで厳密に柔道をやりたかったわけでもないんですかね。

杉山 そうですね。武道に触れるというか、コンタクトスポーツを克服することが目的だったので。でも、かなりハマりましたね。

――ハマった理由って何ですか?

杉山 当初の目的は一人前の教師になるためにということでしたけど、もうひとつ、何か部活と同じぐらい打ち込めるものがほしいというのもあったんです。高校までの毎日バレーに打ち込む生活は嫌いじゃなく、むしろ、休みの日も「体育館を借りて練習しようよ!」と言い出すタイプだったんで。なので、柔道......じゃなくて、空手との出会いはうれしかったんです。

――空手の大会にもけっこう出場されていたんですよね?

杉山 はい。当時、空手の大会って階級がざっくりとしか分かれていなくて、その階級の中でも私は身体が大きいほうだったんです。だから、経験は浅かったですけどけっこう勝てました。

――そこから総合格闘技に転向したのは、どういう経緯からですか?

杉山 その空手の試合を、当時「JEWELS」のスタッフだった方が見てくれていて、声をかけてくださったんです。当時は身体が大きい女子選手がなかなかいなかったので、ぜひという感じで。

――そもそも総合格闘技ってご存知でした?

杉山 通っていた道場には、当時「スマックガール」(2000年から2008年まで行なわれていた女子総合格闘技団体)に参戦していた選手もいたので、なんとなくは。あと道場に大会のチラシが置いてあるのを見て「カッコいいなあ」と思ったり。単純に憧れてました。

――2008年から参戦した「JEWELS」では、デビュー戦から怒濤の5連勝を飾ります。総合格闘技にはどういうモチベーションで挑んでいたんですか?

杉山 単純に新しいジャンルに対する興味ですね。まあ、禅道会は空手の道場ですけど、柔道出身の選手もいたり、総合格闘技をやっている人もいたので、私の中でも、とにかく戦おうという感じでした。

――その頃、教師への道はどうなっていたんですか?

杉山 その後、教員免許を取りまして非常勤で私立校の体育教師をしていました。専任ではなくコマで雇われていて、ときには2~3校を掛け持ちしたり。だから、午前中で終わる日もあれば、1日中授業があるときもありましたね。

――教師に専念しようとは思わなかったんですか?

杉山 いや、逆でしたね。格闘技を続けるために、専任ではなく非常勤を選んだので。その時期には教師でやっていこうという想いより、格闘技のほうが上でしたから。

――見事に逆転したんですね(笑)。もうひとつ転機として、その後、杉山選手は結婚し、出産。2014年の大晦日から2年間ほど格闘技から離れていました。でも、その後また格闘技に復帰しましたよね。

杉山 はい。戻っちゃいました(笑)。「プライベートな私」と「格闘家の私」はそれぞれ別に進んでいるわけで、格闘技をやめる理由にはならなかったんです。

――格闘技を離れている間は、教師の仕事を続けていたんですか?

杉山 いや、教師も2014年には辞めていました。本当は格闘技に本気になろうと思って辞めたんですけど、たまたま妊娠していることがわかって。だから教師時代と妊娠期間はかぶらなかったんです。

――当時はいろんな転機だったんですね。あと、杉山選手といえば、マッチョな女子が揃うスポーツ系バラエティー番組『超人女子(テレビ朝日系)』での活躍も印象的でした。

杉山 あれって最初『SASUKE』(TBS系)みたいな単発の番組だと思っていたんですよ。でも毎週放送される番組で、何度も呼んでいただきました。そしたらけっこう反響もありまして。

――芸能界には興味は沸かなかったんですか?

杉山 ......え? 芸能? それはまったく考えたことがなかったですね(笑)。楽しいし、キレイな人を見るのは刺激的でしたけど、私は格闘技をやめたら、自分の価値なんてなくなると思っているので。いくらキレイにお化粧して、キレイに撮ってもらえても、絶対「格闘技をやっているわりには」というのがあると思うんですよ。それは自分でもわきまえているので。

――杉山選手って物事にのめり込む一方、急に自分を客観視しようとする感じもあるんですね。

杉山 人の目を気にしているんでしょうね。

――今回、取材するにあたって、杉山選手ほどのビジュアルがあれば、けっこういろんな道があるだろうに「なぜ格闘技なのか?」とも思いまして。

杉山 だってこの太い足ですよ(笑)! せっかく母がこの体格に産んでくれたので、やっぱり最大限に使いたいですよね。

――格闘技こそ自分を最大限に活かせる場所だ、と。そんな杉山選手は、大晦日に『RIZIN』での大一番・渡辺華奈戦が控えています。渡辺選手は、去年の大晦日で判定負けを喫している相手ですね。

杉山 一回負けている相手との再戦できるなんて。こんなチャンスなかなか与えてもらえないですよね。率直に言うと「負けたから勝ち直したい」。ただそれだけです。

――再戦はやりづらくないですか?

杉山 私はぜんぜん。でも渡辺選手は勝ったのにまたやるのはイヤかもしれないですね。それと渡辺選手は柔道から総合格闘技に転向して2年目。総合格闘技を勉強していろいろ選択肢が増えて、ちょうど迷いがある時期だと思うんですよ。私も総合格闘技を始めた当時、何も考えずにただ殴るのはラクでしたから。

――そのぶん自分のほうが闘いやすいんじゃないか、と。

杉山 あと闘う意味もあります。これは今回に限ったことじゃないんですけど、私が闘うことで「お母さんなんだから」「一回負けているんだから」「もう31歳なんだから」とか、いろいろな意見があると思うんです。でも、どんな仕事でも自信を持ってやればいいというのを私は試合で体現したくて。どうせいつかみんな死ぬんだし、だったら「私の仕事です」と好きなことに誇りをもってやりたいです。

――試合を通して、誰もが好きなものに頑張ることを肯定したいわけですね。

杉山 そう。私の場合は格闘技で頑張るんです。みんなも自分の仕事に必死、私も必死。ひとつひとつの試合を通してそのことを伝えるために、私はいま格闘技をやっています。

杉山しずか(すぎやま・しずか)
1987年生まれ。アメリカ・ニューヨーク出身。東海大学体育学部卒業。165cm 56.7kg リバーサルジム新宿Me,We所属 東海大学1年の時、空手道禅道会入門。2007年、空手道禅道会「ジャパンオープン2007バーリトゥードアクセス リアルファイティング空手道選手権大会」一般女子の部で準優勝。以降総合格闘家に転身し、2008年、JEWELS 1st RINGでプロデビュー。以降、22戦16勝5敗1分。2018年12月31日『RIZIN 平成最後のやれんのか!』で、1年前に敗北を喫した渡辺華奈と再戦。

『Cygames presents RIZIN 平成最後のやれんのか!』
12月31日(月)8時会場/9時試合開始(終了予定12時)
全7試合、さいたまスーパーアリーナ。

『Cygames presents RIZIN.14』
12月31日(月)13時開場/15時試合開始
全14試合、さいたまスーパーアリーナ。フジテレビ系列全国ネットで放送(18:00~23:45)

※どちらも大会概要、チケット情報は「RIZIN」公式ホームページ【http://jp.rizinff.com/】まで。