今オフシーズンのJリーグの移籍について語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第81回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、Jリーグの移籍について。いつにも増して、移籍の噂が飛び交っていた今オフシーズンだったが、やはり多くの移籍が行われた。そこで、宮澤ミシェルが注目の移籍について解説する。

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このオフシーズンのJリーグは、移籍が活発だったね。なかでも、去年はベガルタ仙台でプレーした板倉滉(前川崎フロンターレ)のマンチェスター・シティ経由での2020年までのオランダ・フローニンゲンへの移籍には驚かされたね。

堂安律と同じチームで東京五輪世代のふたりがプレーするメリットはあるからね。2020年以降はマンチェスター・シティでプレーする可能性もあるのだから、大きく成長していってもらいたいよ! 

ほかにも昌子源(前鹿島)がフランス・トゥールーズへ移籍。これは日本代表にとって大きい。体のデカイ相手に対してガツンと勝負して、そのなかで世界基準に足りない部分を伸ばしてもらいたいね。

海外移籍した選手の中には若手も多いんだよな。柏レイソルでU-21代表の中山雄太がオランダのズウォレ。柏のユース育ちからは他にも20歳のMF・安西海斗がブラガ(ポルトガル)へ移り、GKでU‐18日本代表の小久保玲央ブライアンがベンフィカ(ポルトガル)に移籍したんだ。うちの息子も柏の下部組織育ちだったけど、あそこは酒井宏樹をはじめ海外に行く選手が多いんだよね。

海外だけではなく、今年はJリーグ内での移籍も活発だったよね。ユン・ジョンファン監督が退任したセレッソ大阪からは主力がガツンと抜けた。FW杉本健勇が浦和レッズへ、ボランチの山口蛍がヴィッセル神戸へ、DFの山村和也が川崎フロンターレへ。センターラインの主力が抜けたのは痛いねえ。新たに獲得した元日本代表MFの藤田直之(ヴィッセル神戸)や、FWの都倉賢には、ミゲル・ロティーナ新監督のもとで頑張ってもらいたいよ。

杉本が移籍した浦和は、サイドバックに山中亮輔(横浜F.マリノス)、センターバックに鈴木大輔(前柏レイソル)を獲得したけど、ACLを本気で狙っているのが伝わってくるね。あとはタイトル獲得に向けてチームにどれだけフィットしていけるかが課題だよな。

昌子が抜けた鹿島は、西大伍も神戸に移籍した。新加入には横浜FMから伊藤翔、清水エスパルスから白崎凌兵を獲ったけれど、これもACLを睨んでの補強だよね。

川崎Fだって悲願のACL優勝に向けてセレッソから山村を獲って、広島からDFの馬渡和彰を獲ったのに加えて、ブラジル人FWのレアンドロ・ダミアンと、DFのマギーニョも獲得したからね。本気度がビンビン伝わってくるよ。

そして、Jリーグ上位が定位置のクラブにとっては、リーグ戦とACLのどちらも優勝する戦力を整える時代になったということ。それに、よそのクラブから主力クラスを引き抜けるだけの結果を残してるってことでもあるんだよ。

ただ、これだけ移籍の玉突きが起きると、サポーターなら自分たちのクラブから出ていった選手と、入ってきた選手のことはわかるけど、Jリーグ全体を観て楽しんでいるサッカーファンには大変だし、解説者はもっとシンドい(笑)。

主力クラスの移籍なら追いかけられるけど、前シーズンで数試合に出ていた選手が移籍すると覚えきれないんだよ。だから、新シーズン序盤は「どこかで見た選手だな」と思って資料を見直すと、前シーズンは違うクラブで、たまたま試合を見てちょっと気になるプレーをしていてチェックした選手だったなんてことが多いんだよな。

でも、Jリーグが誕生するにあたって、移籍第1号のような経験をした私にしたら、これほど簡単に移籍ができるっていうのはいいことだよ。以前にも紹介したけれど、私の移籍は本当に苦労したからね。

だから、新シーズンを新天地で迎える選手たちには、新しい環境に早く慣れて、しっかりと自分の居場所をつくって、新しいユニフォームと背番号を自分のモノにしてもらいたい。そして、それだけのプレーを見せてくれると期待しているよ!

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