池江さんを診察してもいない医療関係者が勝手に分析している情報には気をつけたいもの

2月12日、競泳女子の池江璃花子(りかこ)選手が、自身のSNSで白血病を公表。「神様は乗り越えられない試練は与えない、自分に乗り越えられない壁はないと思っています」など気持ちをつづっている。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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2020年東京オリンピックの金メダル候補といわれていた競泳の池江璃花子選手が白血病治療のため休養することを発表しました。桜田義孝オリンピック担当大臣が「がっかりだ」と発言して批判される一方、かつて白血病と闘った俳優の渡辺謙さんが励ましのコメントを寄せるなど、連日ニュースに。

白血病と言ってもいくつか種類があり、池江選手の詳しい病名は明らかになっていません。若い世代では治癒率は高いというものの、突然の宣告を受けた池江選手はどれほどの不安を感じていることか。日本水泳連盟には励ましのメッセージだけでなく、民間療法の情報などもたくさん寄せられているようです。

池江さんは、芸人のせやろがいおじさんが「池江選手を励ますなら骨髄バンクについて知ろう」と訴える動画をリツイート。これをきっかけに骨髄バンクへの関心が高まることを期待しているようです。ドナーを待つ人たちにとっても心強いでしょう。

池江選手のように、著名人は詮索を避けるためにも病名を発表せざるをえないことがあります。詳しく知りたくなるのもわかるけれど、治療に専念できる静かな環境が必要だということを忘れないでいたいです。

白血病は血液のがんといわれる病気ですが、専門家が患者さんごとに慎重に治療方針を決めるものだそうですから、池江さんを診察してもいない医療関係者が勝手に分析している情報には気をつけたいもの。今、闘病している人たちがそうした情報に振り回されることにもなりかねません。

私は、一緒に仕事をしていた人に「がんの告知を受けた」と打ち明けられたことが2度あります。いずれもまだ30代の、小さなお子さんのいる人です。なんと言葉をかけていいか、わかりませんでしたが、「また一緒に仕事をしたい。安心して治療に専念してほしい」と伝えました。

そのうちひとりは治療を経て仕事に復帰しています。もうひとりは現在治療中ですが、通院治療のため自分のペースで仕事を続けていきたいと考えており、私も一緒に仕事をしています。幸いほかの仲間も身内ががんで闘病された経験があり、その人の事情をよくわかってくれました。

当人は「仕事先にがんであることを告げると、それだけでもう終わった人のように思われてしまうのが困る。でも病名を告げないと休む理由が説明できないし、どうしたものか」と話していました。がんの治療をしながら働いている人はたくさんいますし、休んでから復帰して活躍している人もいます。「がんと共に生きる」とか、「がんサバイバー」という言葉も浸透しつつあります。

メディアも著名人の病気を悲劇のストーリーのように消費するのではなく、がんと共に生きる時代ならではの報じ方をしていくといいですね。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が2月26日(火)に発売予定

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