今シーズンの川崎フロンターレについて語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第87回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、川崎フロンターレについて。リーグ戦3連覇を狙うチームとしては、パッとしない開幕からの3戦だったが、宮澤ミシェルはこの結果に心配はないという。

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川崎フロンターレが開幕からパッとしないね。3試合連続の引き分け。先週末の横浜F.マリノス戦は2-1でリードしていながら、アディショナルタイムに痛恨の失点をして勝ち点3を逃した。開幕戦のFC東京戦はスコアレスドローで、2戦目の鹿島アントラーズ戦は先制点を奪いながら、追加点を決めきれない間に追いつかれて引き分け。

リーグ戦3連覇を狙うチームのスタートダッシュとしたら物足りなく映るけど、去年も開幕直後は同じような感じだったからね。勝てはしなかったけど、負けもせずに勝ち点を粘り強く積み重ねていって、中盤戦から勝ちまくって後続を一気に引き離した。

だから、この結果はまだ心配していないよ。今年は新たなことにチャレンジしているから、多少は時間がかかるのは当然。その中で新戦力のレアンドロ・ダミアンが得点という結果を残しているのは心強いよ。

レアンドロ・ダミアンとキャンプの時に喋ったんだ。冷静で謙虚なんだけど、元ブラジル代表のキャリアを持つプライドも覗かせていてさ。フロンターレのパスサッカーに慣れればやりそうな予感はあったけど、こんなに早く結果を出すとは思っていなかったね。

188cmのあのデカさがゴール前にいたら、相手DFは嫌だよ。ポストプレーもハマる。なにより、去年までのフロンターレになかった「高さ」と「深み」が、レアンドロ・ダミアンが入ったことで生まれたね。

しかも、鬼木達監督がキャンプで「我々のスタイルは崩さない」と言った言葉通り、レアンドロ・ダミアンの高さを安易に使うクロスボールを放り込むようなことはせずに、レアンドロ・ダミアンのポストプレーを生かしながら、そのまわりで小林悠、中村憲剛、家長昭博が自由にポジションを変えながら動き回っているよ。

とはいえ、コンビネーションはまだまだ。ここからもっと高めていければ、攻撃陣がどれだけゴールを稼ぐのか楽しみだよ。

一方で、今年のACLはグループステージ初戦を落として黒星発進。リーグを戦いながら、ACLでも結果を残していくには、選手層がポイントになるけど、フロンターレはサブ組も知念慶、齋藤学、田中碧、下田北斗など、いい選手が揃っている。

あとは新加入のCBジェジエウやSBマギーニョがどれだけ早くチームにフィットできるか。馬渡和彰はチームにフィットし始めているから、外国籍DFがフロンターレのスタイルの中で本領発揮できれば、決勝トーナメントに進めると思うよ。

キャンプの時には鬼木監督が、新加入選手だけを集めて、フロンターレのスタイルを教えていたんだ。狭いグリッドのなかで、どう動いてどこにパスを出すのかタイミングとコースを最初は手でボールを扱いながら教えて、次は足でやって。ここの意思統一が彼らのサッカーの肝。すぐに慣れることは難しんだけど、早く慣れてもらってチームを助ける存在になってもらいたいね。

そのキャンプでのことなんだけど、フロンターレの練習が楽しそうで羨ましくてね。攻撃陣がシュート練習している横で、守備陣はフィードの練習だよ。ニカノール監督のもとでは朝からロングボールのクリア練習をしていた僕の現役時代とは大違い。僕もフロンターレのような練習がやりたかったよ。

リーグを2連覇しているフロンターレのスタイルは、日本人選手の特長を最大限に生かすものだから、今年こそACLを制覇してもらいたいんだ。今季の彼らは本気でそれを狙っているし、いままで持たなかった武器もレアンドロ・ダミアンを獲ったことで手にした。

彼らのサッカーはコンビネーションが生命線だから、シーズン当初はなかなか思うようにはいかないものだけど、去年のようなACLグループステージ敗退だけは見たくないんだ。彼らのサッカーは間違いなくシーズンが深まるにつれて、コンビネーションが高まっていくもので、そのスタイルでアジアの頂点に立ってくれるのを楽しみにしているんだ。

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