あの興奮と感動をもう一度! 優勝候補の南アフリカを相手に"世紀の番狂わせ"を起こし、空前のラグビーブームをもたらした前回大会からもうすぐ4年。再び世界を驚かせるべく、最後の調整に入ったラグビー日本代表。

7月29日(月)発売の『週刊プレイボーイ32号』では、福岡堅樹(ふくおか・けんき)、田村 優(たむら・ゆう)、姫野和樹(ひめの・かずき)、松島幸太朗(まつしま・こうたろう)という4名の主力選手のインタビューを収録。その中から福岡堅樹選手のインタビューを特別掲載します!

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現在、日本代表のトライゲッターとして活躍する福岡堅樹は、50m5秒8を誇る俊足と、巧みなステップを駆使するウインガーとして、強豪国のディフェンス陣を切り裂いてきた。

内科医の祖父、歯科医の父を持つ福岡は、来年の東京五輪を最後に引退して医師を目指すことを公言している。ラグビー選手としてのキャリアの佳境となる、日本開催のW杯への熱い思いを激白した。

■前回大会の敗戦をバネにやってきた

――福岡選手といえば、飛び込んでトライを決めた後の笑顔が印象的です。

福岡 ありがとうございます(笑)。トライはラグビーの醍醐味(だいごみ)のひとつですし、チームがつないでくれたボールを得点にできたことがうれしくて、自然と笑顔になるんです。

――チームの得点源として期待されることに重圧を感じたりしないのですか?

福岡 いえ、僕はあまり緊張しないんですよ。というよりも、自分が緊張している状態を把握し、それに体が慣れてきたことで普段と変わらないプレーができるようになりました。試合前も、『会場にいるたくさんのお客さんたちを沸かせられたら、どれだけ気持ちいいだろう』と、ポジティブに考えるようにしています。

――そこからどのようにモチベーションを高めていくのでしょうか?

福岡 ピークを試合当日にもっていくために、それまでは試合のことを考えすぎないようにしています。特に前日の夜はコンディション調整のためにしっかり寝ることが大事。集中し始めるのはロッカールームに入ってウオーミングアップを開始した頃から。そしてピッチに向かう際に『絶対に相手を倒す』という気持ちが最高潮に達するんです。

――W杯のような大舞台を前にすると、どうしても気持ちが昂(たかぶ)ってしまうこともあると思うのですが。

福岡 そうなりそうなときは、飼っている大好きな猫と一緒にいて気持ちを落ち着かせます(笑)。さすがに合宿所には連れていけないので、合宿中などは自分の部屋でコーヒーをひいて飲むことでオフモードに切り替えています。

――これまで世界の強豪と対戦を重ねてきて、差を感じることはありますか?

福岡 やはり世界のトップチームは身体能力が高いですね。それでも今の日本代表は十分世界に通じるチームになっていると思います。自分たちの"速い攻め"の形がつくれればトライを奪うことも難しくない。W杯開幕の直前まで、どのように戦えば勝つことができるかを突き詰めていきたいです。

――ラグビーを始めたのは5歳と早いですが、そのきっかけは?

福岡 実は、生後11ヵ月くらいから水泳をやっていたんですよ(笑)。でも、高校と大学でラグビーをやっていた父親が『息子と一緒にラグビーやりたい』という思いがあったようで、スクールに通うようになりました。

――やはり目標は日本代表に入ることだったんですか?

福岡 僕は世代別の代表を経験してこなかったので、『将来はラグビーで食べていこう』『世界と戦いたい』とはまったく考えていませんでした。そういったことを意識するようになったのは筑波大学2年生のとき(2013年)に日本代表に初選出されてからです。

――その筑波大学にも、医師を目指して一般入試で入ったんですよね。

福岡 そうですね。昔から医師になることが夢で、これまでにお世話になった方のなかに憧れの存在がいるんです。医師になるための勉強は継続していますが、義務と思いすぎないようにしています。いやな気持ちになると、なかなか机に向かえなくなりますからね。どうしてもキツいときには次の日に回すこともありますし、短時間集中で目標を決めて取り組んでいます。

――W杯の後には、来年の東京五輪(7人制ラグビー)、そして医師になる目標が控えています。

福岡 "トップアスリートが医者になる"という新たな道を開拓したいです。自分に続くような人たちが出てくることは、選手のセカンドキャリアの選択肢を広げる意味でも、スゴくいいことだと思っていますので。

――選手としては、昨年の2月に右膝の手術を行ないました。体のケアで気をつけていることは?

福岡 トップスピードを出すために、コンディションの調整は徹底しています。お湯と水に交互につかる交代浴、トレーナーのマッサージだけでなく、自分でもストレッチをしたり道具を使って体をほぐしています。スパイクも、天気がいいときにはスタッド(スパイク裏側についた突起)が太く足が疲れにくい固定式を、雨で滑りそうな場合はスタッドが長い取り換え式とのミックス型を使用するようにしています。

――順調に復帰して再びスピードでファンを魅了していますが、あらためて今大会への思いを聞かせてください。

福岡 前回大会では、負けた試合(スコットランド戦)に出ただけなので悔しい思いをしました。あの敗戦をバネとしてここまでやってきたので今回はすべてを出し切りたい。ひとつでも多く勝利し、大会が終わったときに笑顔になれたらと思います。

トップレベルでプレーする機会が限られてきているので、すべての試合で皆さんを楽しませられるようなプレーをしたいです。"記憶に残る選手"になれるように頑張りますので応援よろしくお願いします!

単にスピードがあるだけでなく、緩急をつけたステップで相手のディフェンスを翻弄する

●福岡堅樹(ふくおか・けんき) 
1992年生まれ、福岡県出身。パナソニックワイルドナイツ所属。驚異のスピードと華麗なステップでトライを重ねる日本代表の得点源。7人制ラグビーのメンバーとして、2016年のリオ五輪にも出場。身長175cm、体重83kg。代表キャップ数30