横浜F.マリノスについて語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第126回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは横浜F.マリノスについて。15年ぶりにJ1優勝を果たした横浜F.Mを、宮澤ミシェルも称賛した。

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今年も最後までドラマチックなシーズンになったね。最終節で横浜F.マリノスが15年ぶり4度目の優勝。本拠地の日産スタジアムで眼下のライバル、FC東京を3-0で倒してのタイトル奪還は、マリノスサポーターにとっては最高のエンディングになったよな。

最終節に首位と2位が直接対決して優勝が決まったのは2006年の浦和レッズとガンバ大阪の争い以来。あの時も首位だった浦和が直接対決を制したんだったよな。

Jリーグが最終節まで白熱するのは、『Jリーグ・マッチスケジューラー』のおかげかもしれないな。影の演出家と言ってもいいと思うほどだよ。

Jリーグの試合日程は、2004年シーズンから最適化技術の専用アプリで組まれていて、2005年以降の1シーズン制で争われた13シーズンのうち、今年も含めて10度も優勝争いがもつれ込んでいるんだよ。

横浜F.Mも2013シーズンは、あと1勝すれば優勝だったのに、ラスト2試合で2連敗して優勝を逃しているからね。来シーズンは日程が発表されたら、まず最初に最終節の対戦カードをチェックするようにしないとな。

横浜F.M優勝の立役者は、攻撃陣では仲川輝人とマルコス・ジュニオールになるよね。15得点で得点王を分け合ったふたりのうち、どちらかだけを選ぶのは難しいよ。

身長161cmの小さな体の仲川が、大きなDFの間を切り裂いていくスピードは爽快だった。ただ、あの速さは昨シーズンも見られたもの。彼が一段階上がったなと思わせてくれたのはシュート。左足でも決められるようになったのが大きかったんじゃないかな。シーズンにPKを1度も蹴らずに得点王ってのは、久しぶりのことだと思うよ。

12月10日から始まるE-1選手権の日本代表にも初選出されたし、スピードとシュートで森保一監督にアピールして、日本代表争いに深く食い込んでいってくれることを期待しているよ。

マルコス・ジュニオールは、今年から加入したとは思えないほどチームに馴染んだよな。ゴールを決めた後に見せたドラゴンボール・ポーズも大きかったのかもしれないね。素晴らしいプレーだけではなく、パフォーマンスでもサポーターを楽しませてくれる。本物のプロフェッショナルだよ。

だけど、攻撃陣も魅力的だけど、やっぱりDF出身としては、タイトル奪還は守備陣の成長無くして実現しなかったと声を大にして言いたいな。リーグ戦の総失点は、昨季はリーグ16位の56点もあったのが、リーグ7位の38失点。

J3からJ1へ移籍して守護神の座をつかんだパク・イルギュの守備範囲の広さや、スピード抜群のCBチアゴ・マルチンスのカバー能力の高さ、日本代表にまで上り詰めたCB畠中槙之輔の存在が、総失点を大きく減らすことにつながったけれど、忘れちゃいけないのが、ボランチの喜田拓也。

彼は本当によく働いたよ。優勝を決めた直後に涙したけれど、キャプテンとしての苦労が報われたよな。派手さはないけれど、間違いなく攻守両面で喜田がチームの屋台骨を支えていたね。

FC東京は優勝するのに最終節で4点差をつけての勝利が必要だったけど、結果的には3点を奪われて敗戦。だけど、内容的には紙一重だったよな。

前半戦にチームを牽引した久保建英が移籍でチームを去り、9月からは本拠地をラグビーW杯のために使えないなかでも、シーズン終盤まで首位を守っていた。昨季は夏場で失速したのが、今年はそれが伸びて、クラブ最高位の2位。来季こそだよな。

両クラブとも来季はACLも戦う。横浜F.Mは6年ぶり、FC東京は4年ぶりの舞台。過密日程になるなかで、J1リーグでどういう戦いを見せてくれるのかも、いまから楽しみだよ。

今年のJ1シーズンの観客動員数は、過去最多となる634万9681人。Jリーグの魅力が増した成果だよな。来シーズンは今年以上の観客がスタジアムに足を運んでくれることを期待しているよ。

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