コロナウイルスを忘れられる時間を提供するのは大事なことだと語るセルジオ越後氏

よくピンチはチャンスと言うけどいい言葉だよね。僕はスポーツには人の気持ちをほぐす力があると思っている。苦しい状況だけど、サッカー界もこのピンチを前向きに受け止めるべきだ。

感染が拡大する新型コロナウイルスがスポーツ界にも大きな影響を及ぼしている。多くのスポーツイベントが中止、延期、さらには無観客での開催になるなど苦しい決断を迫られている。

そんななか、Jリーグはいち早く動き、2月26日から3月15日までに開催が予定されていた全94試合の延期を発表した。

その発表前日の2月24日、政府の専門家会議が「今後1~2週間が感染拡大を急速に収束できるかの瀬戸際になる」との見解を発表したことが影響したはずだ。未曽有の状況にあって、Jリーグの村井チェアマンの下した決断は尊重すべきだろう。

ただ、個人的には大相撲春場所やプロ野球のオープン戦と同様に無観客で試合を行なってほしかったし、今後の状況次第ではあるけど、3月15日以降は無観客でも試合を再開してほしい。

無観客となれば、入場料、グッズ販売などが得られず、各クラブの経営が苦しくなる可能性も出てくる。それでも、マスクが手に入らなかったり、トイレットペーパーの買い占めが起きたり学校が休みになったりと予想外のことが次から次に起き、日本の国民がバラバラになってトラウマを抱えている今こそ、ひとつの社会貢献として試合を行なってほしいんだ。これはJリーグに限らず、ほかのプロスポーツにもいえること。

テレビをつければ一日中コロナウイルスのニュースばかり。誰だって暗い気持ちになる。特に子供への影響が心配だ。でも、試合をやれば、少なくともニュースのスポーツコーナーで映像が流れる。それを見て一瞬でも気を紛らわせてもらえれば十分。

外出を控えている人がいる。家族や子供がこれからどうなるのかと不安な人がたくさんいる。そういう人たちのために、わずかな時間かもしれないけど、コロナウイルスを忘れられる時間を提供するのは大事なこと。そのお手伝いができるのがスポーツだと思う。

なかには家庭や職場で話題にしてくれる人がいるかもしれない。事態が収束したらサッカーを見に行こうと思ってくれる人がいるかもしれない。無観客による損失は大きくても、いつか必ず取り戻せると思うんだ。

いっそのことJリーグは、全試合を中継するDAZNに特例での無料放送をお願いしてはどうだろう。これ以上ない宣伝効果を見込めるし、新規ユーザーの獲得につながりますよと提案すれば、DAZNだって「なるほど」となるかもしれない。そこは村井チェアマンの腕の見せどころだ。

試合ができない状況に無力感を覚えている選手もいるかもしれない。でも、たとえ無観客でも、自分たちがプレーすることで少しでも世の中の役に立てるなら、選手は喜んでプレーする。いつも以上にいいプレーをしようと気合いも入る。折しも東日本大震災から9年、あらためてプロスポーツはなんのためにあるのかを考えるいい機会だ。

それは、普段どおりに試合を行なえている海外組も一緒。今季は不調の選手が多いけど、今こそ奮起を期待したい。明るいニュースをたくさん届けてほしい。こういう時期だからこそ、サッカー界がひとつになって頑張らないといけないね。

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