バルセロナとレアル・マドリードについて語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第142回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマはバルセロナとレアル・マドリードについて。新型コロナウイルスの影響によるリーグ中断まで優勝争いをしていたこの2チームの今季を宮澤ミシェルが振り返った。

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ヨーロッパでも新型コロナウイルスの猛威が凄まじいことになっているね。サッカー界への影響も大きくて、UEFAチャンピオンズリーグをはじめ、各国リーグも中断されたままになっている。再開の目処も立てられない状況なんだよな。

こればかりは仕方ないことだけど、今シーズンのスペインのラ・リーガの優勝争いが、久しぶりに2強のどちらに転がってもおかしくない状況になっていたから、本当に残念でならないよ。

ラ・リーガは3月6~8日にあった第27節まで行なわれ、それ以降の試合を当初は無観客でやる予定でいたけど、結局は感染が拡大したことで延期が決まった。

中断時点の首位がリーグ3連覇を狙うバルセロナ。2位にはレアル・マドリードがつけていて、3年ぶりのリーグ優勝を視界に捉えているんだよ。

その差は勝ち点2だからね。終盤に差し掛かろうとする時期に、2強がこれほどの接戦でラ・リーガの優勝争いをするシーズンは、あまり多くはないんだよ。

レアル・マドリードは3月2日に本拠地サンチャゴ・ベルナベウで直接対決したクラシコで、バルセロナに2対0で完勝。この勝利で首位に立ったときには、このままシーズン終了まで突っ走るかなと思ったほど。だけど、そう上手くは運ばなかったね。

翌27節でリーグ戦で中位をさまようベティスに1対2で敗戦。0対1からベンゼマのゴールで同点にしたんだけど、試合終盤の80分過ぎにベティスに勝ち越しゴールを奪われてしまった。

レアル・マドリードにとっての課題はやっぱり得点力だよな。とりわけゴールを誰が奪うのかが明確になっていないことが悩ましいところだよ。

カリム・ベンゼマはよく頑張っているよ。ゴールを獲ろうとするだけではなく、味方をうまく使う動きやプレーで得点に貢献しようとしている。だけど、チームが彼を活かせないことも多いよな。

ガレス・ベイルは好調時には素晴らしい働きを見せるけど、少し働くとその後はどこかが痛くなって休暇期間になっちゃう(笑)。コンスタントに試合に出れる選手だったら、もっと高く評価されていたのにね。もったいないよな。

今季から加入したエデン・アザールはチームに適応するのに苦しんだね。度重なる故障があったのが痛かったけど、10試合で1ゴール4アシストは寂しい成績だよ。2月下旬に受けた手術から復帰できるのが2~3ヶ月ということだったから、来季の活躍を期待するしかないかもしれないね。

若手選手たちも伸び悩んだよ。ビシニウスやバルベルデは得点力という部分だけにフォーカスするとまだまだ足りないし、開幕前に獲得した21歳のセルビア代表のルカ・ヨヴィッチも移籍1年目と考えれば、多くを期待するのは酷なことではある。

ポテンシャルは素晴らしいフォワードが揃っているんだけど、ダメだとわかっていても、やっぱりひとりでゴールをこじ開けられたクリスティアーノ・ロナウドの得点力と比べちゃうよな。

そうした過去の偉大な選手と比べられてしまう宿命を覚悟して、どの選手もレアル・マドリードのユニフォームを着ているだろうけど、そのプレッシャーも決定機で少しは影響しているのかもしれないね。

そのレアル・マドリードに比べると、スアレスが故障で長期離脱して苦しい状況のなかで、しぶとく勝ち点を積み重ねてきたのがバルセロナなんだよ。

クラシコの翌節にレアル・マドリードが負けたのに対して、バルセロナは同節で来季のCL圏内を狙う位置につけるレアル・ソシエダに1対0で勝利。このあたりの安定感でやっぱりバルサが上回ってきたよね。

グリーズマンはチームにフィットしていないし、デンベレも故障続きで戦力として計算しにくいけれど、レアル・マドリードとの大きな違いは、誰が得点を決めるのかが明確なことだよな。

大黒柱のメッシがいることでの守備の不安定さもあるけれど、それを差し引いても上回る得点力がある。彼がいなくなったらバルセロナがどうなるかわからないけれど、当面はやっぱりメッシ頼みで行けるよね。

スアレスも手術から順調に回復していて、5月上旬には復帰できるという話なんだよ。本来ならシーズンが終わっていたはずだったのが、スアレスが戻ってくるとなれば、リーグ4連覇にもグッと近づけるんじゃないかな。

とはいえ、すべてはラ・リーガが再開されればのこと。当初は4月4日までの延期だったけれど、その後に無期延期へと変更になってしまった。もしかすると最悪の場合、このまま今季が終わる可能性もあるけど、1日も早く感染が収束し、健康のリスクがないなかで、選手もファンもサッカーを楽しめる日が戻ってくることを願うばかりだよ。

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