来季は新たなエース候補の台頭に期待したいと語るセルジオ越後氏

新型コロナウイルスの影響で、Jリーグどころか世界中のサッカーが止まった。なかでも世界のサッカーの中心である欧州各国の状況が深刻だ。

シーズンも終盤に差しかかり、本来であればここからが一番盛り上がるところだっただけに残念。今回は早期の事態収束とシーズン再開を願いつつ、今季の日本人選手のプレーぶりを振り返りたい。

まず印象的な活躍をしたのは冨安(ボローニャ)。レベルの高いイタリアの中堅クラブで定位置を勝ち取り、故障期間以外は先発出場を続けた。体のサイズがあって、ヘディングが強く、意外とスピードもある。サイドバックを難なくこなす器用さも見せた。守備の選手はどうしても地味な扱いになるけど、"守備の国"イタリアでこれだけの成績を残せたのは立派なこと。

まだ21歳と若く、今後はビッグクラブへのステップアップも期待したい。ただ、そのためには攻撃面でのアピールも必要になる。DFは守れて当然みたいな見方をされがち。守備だけでは評価に差がつきにくい。セルヒオ・ラモス(レアル・マドリード)のようにたくさんゴールを決めるのは難しいにしても、セットプレーなどでチャンスに絡んで目立つことも重要だ。

一方、ステップアップした新天地で苦労しているのが南野(リバプール)、堂安(PSV)、中島(ポルト)。森保監督体制の日本代表がスタートした当初、「ビッグスリー」と言われた3人だ。

結果を出して、名門クラブに引き抜かれたのは素晴らしいこと。ただ、当然のことながらそこで活躍するのは簡単じゃない。3人ともビッグクラブの壁にぶち当たっている。限られた出場機会で目に見える結果を出せるか。ここまでは率直に言って厳しい。今後、出場機会がさらに減って、その状況が続くようなら、試合に出られるチームを探すことも考えるべきだろう。

同じく攻撃陣で注目を集めた久保(マジョルカ)は、弱小チームにあって結果を出せずにいたけど、中断前の3試合で2得点1アシスト。ようやく上向きになってきた。それだけにコロナ余波による中断は気の毒だ。

来季、レアル・マドリードに復帰できるかといえば、数字的にもプレー的にも難しい。マジョルカではサイドからドリブルを仕掛けて相手をひとりふたりとかわしても、結局、相手に潰(つぶ)されるシーンが目立った。ケガも怖いし、もっとプレーに緩急をつけ、接触プレーを減らすことも大事だ。

チームの戦術との兼ね合いもあるとは思うけど、中央でタメをつくってパスを出す役割も意識したほうが、彼の高い技術がより生きる。メッシ(バルセロナ)ではなく、モドリッチ(レアル・マドリード)のイメージだね。

そのほかで気になるのは、ここ数年、日本代表のワントップを務める大迫(ブレーメン)。出足こそ良かったものの、なかなか得点が伸びない(今季4得点)。日本代表はこのポジションの層が薄いだけに心配だ。

個人的には故障で出遅れた鈴木(シント・トロイデン)の成長に期待をしているんだけど(今季7得点)、現状ではスペイン2部で8得点の岡崎(ウエスカ)の頑張りが目立っている。ダイビングヘッドでゴールを連発するなど"小さなゴン中山"は健在だ。

でも、いつまでも大迫や岡崎に頼るようではダメだし、来季は鈴木を筆頭に、新たなエース候補の台頭に期待したいね。

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