強化が遅れていた五輪代表にとって、準備期間が増えたのはプラスだと語るセルジオ越後氏

新型コロナウイルスの影響で東京五輪の1年延期が決まった。

当然の判断だと思う。世界中でウイルスによる被害が拡大し、いつ収束するのかもわからない状況にあって、五輪を強行開催する理由は何もない。五輪が大好きな日本人も、さすがにお手上げだ。

アスリートも試合どころか練習さえできない状況が続いている。すでにこの段階で、夏の五輪にベストコンディションで臨むことは難しくなっているはず。むしろ1年延期でホッとしている人が多いんじゃないかな。

サッカー(男子)に関していえば、他の種目と異なり、出場資格が23歳以下という年齢制限がある。サッカーのメインイベントはあくまでW杯だというFIFA(国際サッカー連盟)の意向によるものだ。それが来年に延期されたことで変更されるのかどうか。これは日本に決める権限があるわけではないけど、個人的には絶対に24歳以下に引き上げるべきだと思う。

対象となる選手が気の毒なのはもちろん、厳しい予選を勝ち上がってきたチームが全く別のチームになる可能性もあるわけだからね。平等ではなく、魅力が薄れる。FIFAとIOC(国際オリンピック委員会)は早く決定して安心させてほしい。

また、日本代表については、五輪が1年延期になったことで、A代表と五輪代表の監督を兼任する森保監督をA代表監督に専任させてはどうかという話が出てきた。これも賛成だ。

兼任といいつつ、森保監督はこれまでもスケジュールの都合でA代表を優先、五輪代表の指揮は横内コーチにまかせることが多かった。ようやく今年1月のU-23アジア選手権で五輪代表の指揮を執ったけど、まったくチームの形が見えず、グループリーグで早々と敗退。森保監督はどうしていいのかわからないように見えた。

でも、A代表の専任となれば森保監督の負担は軽くなる。選手たちにとってもずっと五輪世代を見てきた横内コーチのほうが正直、安心だろう。

強化が遅れていた五輪代表にとって、準備期間が増えたのはプラス。当落線上の選手にとってもアピールするチャンスが増えた。1年で急激に伸びる選手が出てくるかもしれないし、新たな競争が生まれる可能性もある。そう前向きにとらえればいい。

ただ、それにしても問題はコロナがいつ終息するかだね。Jリーグに限らず、今は世界中のサッカーがストップしていて、いつ再開できるのかわからない。Jリーグでアピールしようにも、J1は本当に5月9日にリーグ戦を再開できるのか。今の状況では再び先延ばしとなってもおかしくない。

欧州の主要リーグもこのままシーズン打ち切りになるという見方もある。給与をカットされたり、契約を切られる選手も出てくるかもしれない。そんな状況でコンディションを維持するのは至難の業。精神的にも苦しいと思う。

来年はA代表も2022年カタールW杯アジア最終予選があるし、五輪代表強化のマッチメイク、選手の招集も難航が予想される。オーバーエイジ枠候補の選手を強化試合で試すこともできないだろう。難しい条件ばかり揃ったなかで何ができるのか。日本サッカー協会はいろいろな事態を想定し、強化策を練ってほしい。

無駄になることも多いかもしれないけど、来年の夏に「延期になったことがメダルにつながった」と言えるようにしたいね。

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