サッカーリーグ再開について語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第150回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマはサッカーリーグ再開について。新型コロナウイルスの影響で、各国のサッカーリーグが中断していたが、ついにブンデスリーガが再開。宮澤ミシェルは、「恐怖と戦っている選手たちの頑張りに感謝したい」と語った。

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ブンデスリーガが再開されたね。日常にサッカーがあるっていうのは、やっぱり最高だよな。長谷部誠や鎌田大地など日本人選手も多いから、観ている人も多いんじゃないかな。

ただ、やっぱりこれまで通りというわけにはいかないね。何万人と収容できるスタジアムに観客はゼロ。控え選手たちが距離を取りながら、スタンド席に座っていて。なんとも言いようのない寂しさがあったね。

ゴールを決めても選手たちの熱い抱擁はなし。「ひじタッチ」はしていたけど、基本的に不要な接触を避けて、ソーシャルディスタンスを守っていた。

ちょっとやりすぎな部分も感じたな。コロンビア代表のファルカオもTwitterで疑問を投げかけていたけど、ゴールが決まったら選手たちはこれまで通り素直に喜んでいいんじゃないか。

だって、ブンデスリーガは再開のために、試合前日を含めて最低でも週2度のPCR検査などを受けているんだぜ。徹底した感染チェックをして、再開1週間前はほぼ全チームが安全を保持するために隔離生活。外出した場合はチームに戻れないらしいんだよね。

感染者がいるならソーシャルディスタンスは必要だけど、感染者がいないなかでは不要だと思うんだ。ゴール後に抱擁して喜んじゃいけないけど、コンタクトプレーはOKなんて矛盾しているよ。新型コロナウイルスに対してブンデスリーガは考えられる万全の予防線を敷いているし、そこは信じていいんじゃないかな。

まあ、何事も100%の安全ってものは無いからね。万全を期しても出ちゃう時は出ちゃう。だけど、それでも予期せぬ感染を防ごうという姿勢を崩さないのも、ブンデスリーガらしくていいよな。

ブンデスリーガに続いて、イタリアのセリエAは6月13日、もしくは6月20日からの再開に向かっているね。冨安健洋に吉田麻也という日本代表の新旧CBがいるからね。吉田は冬にサンプドリアに移籍して、デビュー直後にリーグ戦が中断。新天地での仕切り直しのスタートでどんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみにしているよ。

さらに、スペインのラ・リーガも6月8日以降の再開を目指しているから、乾貴士にメールをしたんだ。そうしたら「不安は拭えないですが、頑張ってやってきます」という内容の返事があってね。あのサッカー小僧のようなボールを蹴るのが大好きな乾でさえ、「うれしい」よりも先に不安を覚えているんだよね。

当たり前だよな。ボクらはサッカーが再開されたら試合を見て、元気や勇気をもらう。だけど、そのためにピッチに向かう選手たちは、ものすごい恐怖を乗り越えているわけだから。

サッカーが再開されたことの裏側では、選手たちの数多い葛藤があることを忘れちゃいけないよな。ひと頃よりは収束してきたけど、終息したわけではないからね。選手たちが体を張ってエンタテインメントを提供してくれることに感謝して、ここからも気を緩めずに参りましょう!!

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