今の状況で優勝争いを予想するのは難しいけど、あえて挙げるとすればFC東京と語るセルジオ越後氏

ようやくJ1が再開したね。カップ戦を含めると週2試合ペースの過密日程、1試合の選手交代枠3人→5人、当面は無観客で近隣チームと対戦、降格なし、日本代表の活動優先などの特別ルールの下、各チームとも手探り状態でシーズンを戦うことになる。

J1に先んじて行なわれたJ2、J3の開幕節は、よくも悪くも練習試合みたいだった。無観客だからホームとアウェーの差が出にくく、サポーターの声援で気持ちが高ぶったり、ブーイングにプレッシャーを感じたりすることがない分、選手がリラックスしてプレーしているように見えた。

その風景はまるで僕が現役当時の日本リーグ。お客さんが少なくて、いつも静かだったからね。まあ、それは冗談としても、こういう雰囲気のなかで公式戦を戦うことに戸惑いを感じる選手はたくさんいるだろう。

また、練習不足によるコンディションの問題と暑さのせいか、後半に入ると選手たちの足が止まり、終盤にかけて点が入る試合が多かった。

そして5人交代制ならではの展開になったのが愛媛vs徳島だ。前半を終えて徳島が3-0でリードしていたんだけど、愛媛がハーフタイムに一気に3人を代えて流れを変え、最後は5人の交代枠を使い切って4-3で逆転勝ちをした。

負けているチームは積極的にメンバーを代えて流れを変えようとする。追いつくために無理をするのもわかる。でも、勝っているチームは難しい。5人交代できるからといって主力選手を休ませるために下げたり、若手にチャンスを与えたりしても、逆転されては意味がない。

そもそもチームというのは時間をかけて、メンバーを固定しながら熟成させていくもの。過密日程だから、5人まで交代できるからといって、試合ごとに先発を大きく代えたり、5人の交代枠を使い切っていたら、チームづくりが遅れることもあるだろう。

この暑さのなかで5人の交代枠をうまく使い、体力の消耗を防ぎながら、過密日程をどう戦い抜くのか。いくら降格がないといっても、試合間隔が短いなかで負けを重ねれば、チームが壊れかねない。そういう意味で、例年以上に監督の手腕が問われるね。

今の状況で優勝争いを予想するのは難しいけど、あえて1チーム挙げるとすればFC東京かな。

昨季は好スタートを切ったものの終盤に失速し、優勝を逃した。その悔しさを晴らすため、今季は磐田からアダイウトン、鹿島からレアンドロというJリーグで実績のある外国人選手を補強。ディエゴ・オリベイラと永井に頼っていた前線が一気にパワーアップした。現状維持ではなく、進化して優勝するために投資をしたチームということで僕は注目したい。

選手個人では浦和のレオナルド、柏のオルンガ、昨季のJ2の得点ランク1位、2位の外国人ストライカーふたりが面白そう。共に能力が高く、初挑戦のJ1でも大暴れするかもしれない。特に昨季最終節の京都戦で8点も挙げたオルンガはスピードもパワーも高さもあり、期待感が大きいね。

それにしても、こうやって「ああでもない、こうでもない」とJリーグの話ができるのは、あらためて幸せなことだと感じる。まだまだ状況は予断を許さないけど、無事にシーズンを終えることを願いたい。

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