欧州でプレーする日本人選手たちについて語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第169回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、欧州でプレーする日本人選手たちについて。今年も多くの日本人選手たちが欧州リーグの舞台に挑戦しているが、彼らたちそれぞれの現在地はいったいどこなのか。宮澤ミシェルが解説する。

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ビジャレアルの久保建英ばかりが注目されているけどれ、欧州各国で開幕したリーグ戦では、久保以外の日本人選手たちもやってくれそうな予感がしているよ。

ラ・リーガでいえば、岡崎慎司も楽しみなんだけど、今季から乾貴士のいるエイバルへ移籍した武藤嘉紀が気になるね。

プレミアリーグのニューカッスルでの2シーズンはさっぱりの成績だったけど、エイバルは昨季限りで36歳のブラジル人FWシャルレスを放出して軸になるFWがいないから、武藤にもチャンスはあると思うよ。

サイドに流れてパスを受けたり、DFラインのギャップに入り込んだり、裏のスペースを狙ったりする武藤らしさを発揮できれば、マインツ時代くらいのゴール数は決めるんじゃないかな。

日本人選手の欧州移籍の登竜門的な色合いが強いベルギーリーグには、森岡亮太(シャルルロワ)や三好康児(アントワープ)、植田直通(サークル・ブルッヘ)、鈴木武蔵(Kベールスホット)がいて、シント=トロイデンには鈴木優磨やシュミット・ダニエル、中村敬斗などが所属しているけど、そのなかでも目が離せないのが伊東純也(ヘンク)。

8月上旬にベルギーリーグが開幕してからフル出場を重ね、第7節までに2得点。チャンスは数え切れないほどつくり出している。日本にいた頃は縦へのスピードだけの選手だったけど、いまはあらゆる部分で格段に進化しているよ。

いつプレミアリーグやブンデスリーガのクラブに移籍しても不思議じゃないレベルだし、個人的にはラ・リーガでやって欲しい選手の一番手だよ。

今冬の移籍期間や2020-2021シーズン終了後には、いいステップアップを果たすんじゃないかな。それくらい違いを生み出しているんだよ。だからこそ、伊東のプレーぶりはしっかりチェックしてもらいたいね。

ブンデスリーガの1部は、フランクフルトの長谷部誠と鎌田大地、ブレーメンの大迫勇也に加えて、この夏に遠藤渓太が横浜F.Mからウニオン・ベルリンへ、堂安律がPSVからビーレフェルトに移籍したけど、楽しみなのがシュツットガルトの遠藤航だね。

昨季は2部を戦ったチームで中心的な存在になった遠藤航が、今季は1部でチームをどこまで牽引できるのかとても興味深いよ。ポジションやプレースタイルだけではなく、キャプテンシーの部分でも、長谷部誠のようになれる資質を遠藤航は持っているからね。外国人選手のなかに入っても、しっかりリーダーシップを発揮してほしいね。

個人的にはやっぱりDF出身だから、守備の文化が根強いイタリアのセリエAで評価を高めている冨安健洋(ボローニャ)や吉田麻也(サンプドリア)の動向は追っちゃうし、フランス人の父親を持った身としては、リーグアンのマルセイユで酒井宏樹と長友佑都がチームメイトだっていうんだから、すごい時代になったなって感じるよね。

とはいえ、世界最高峰のレベルにあるクラブの壁は、まだまだ厚いよな。欧州リーグでプレーする日本人選手だけで日本代表を組めるけれど、ほとんどの選手の所属クラブのレベルは各国リーグの中位から下位のクラブだもの。チャンピオンズリーグに出られるクラブでプレーできるのは一握りもいないくらいなのが実際のところだよね。

今季のチャンピオンズリーグに出場する日本人選手は、ポルトガルのポルトの中島翔哉とマルセイユの2人、そしてリバプールの南野拓実。

こうして名前をあげてみると、リバプールで勝負している南野拓実はやっぱりすごいよな。ほかの日本人選手の戦っているステージとは数段違う。

南野は足元のうまさやスピードがあるのが特長だけど、なによりも頭の良さがあるよね。サッカーを理解する力が高いからこそ、あのレベルのクラブに行けた。でも、それだけではスタメンで試合に出られないのが、やっぱりリヴァプールだよな。

ただ、プレシーズンマッチやカップ戦でのプレーぶりを見ていると南野はしっかりレベルアップしているから、チャンスはそのうち訪れるはずだよ。そのワンチャンスで大暴れしてほしいね。そして、日本からもビッグクラブでプレーできる選手は輩出できるってことを証明してもらいたいよ。

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