箱根駅伝の見どころ&現地に行かなくても面白がれる方法を語る、M高史(右)とポップライン萩原(左)

お正月の風物詩、箱根駅伝(東京箱根間往復大学競走)は例年どおり1月2、3日に開催予定。だが、毎年延べ100万人ともいわれる沿道の観客に見守られてきた大会も今回は強い応援自粛が求められ、これまでとはひと味違う雰囲気のなかで行なわれる。

マラソン芸人で、共に強豪大学駅伝部OBのM高史氏とポップライン萩原(もしか設楽)氏に見どころ&現地に応援に行かなくても面白がれる方法を聞いた。

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――ふたりとも学生時代は箱根を目指していたそうですね。

 僕は一般入試で駒澤大学に入って陸上部の門を叩きました。ただ、当時は駒澤が4連覇中で練習についていくのも大変。トラックでの練習でもすぐに周回遅れになってしまい、1年時の箱根が終わった後にマネジャー転向を進められました(苦笑)。それで3年からは主務に。

箱根では大八木(弘明)監督と一緒に運営管理車に乗ってタイムを計ったりしていましたね。OBになってからも毎年手伝いに行っていて、前回は4区と8区の給水を担当しました。

萩原 秋田県出身の僕は高校時代に東北2位になったりして、スポーツ推薦で神奈川大学に入りました。でも、大学に入ったら一番下。当時の4年生には箱根で2連覇を経験している人もいて、「うわ~、上には上がいるんだ」って。結局、箱根は一度も走れませんでした(苦笑)。

――やっぱり箱根を走るのは大変なことなんですね。コロナ禍の今年は大会も減り、練習や合宿も思うようにできなかった大学も多いと聞きます。

 駅伝は11月の全日本大学駅伝対校選手権(以下、全日本)しかなかったですからね。記録会が行なわれていても、ひとりで走るのと、駅伝で襷(たすき)をつなぐのとでは条件も緊張感もまったく違います。

それに今年は順天堂大学の三浦龍司(みうら・りゅうじ)選手や中央大学の吉居大和(よしい・やまと)選手、東洋大学の松山和希選手など1年生に有力選手が多いことが話題ですけど、スタミナやメンタル面はフタを開けてみないとどうなるかわからない。特に箱根は1区間が約20kmと長いですから。

萩原 実際に走っている選手を見る機会が少なかった分、今回は本当に読めない部分が多いです。僕も経験あるんですけど、しばらくレースがなかったことで「走りたい!」という欲求がたまっていて、全然疲れないで走れちゃうようなことがあるかも。『スーパーマリオ』でスターを取ったときの「わーい! やったー!」みたいな(笑)。

そもそも今までレースが多すぎたと言っている選手もいるみたいで。いろんな意味で波乱の展開になるかもしれません。

 "無観客"が選手に与える影響もあると思います。箱根は(沿道に近い)左耳だけ耳鳴りがするほど声援がスゴいんです。それをパワーにする選手がいる一方で、予選会では観客がいなくて静かだったことで、逆に緊張せず集中できたという選手もいましたから。

いつもなら監督の指示が選手にきちんと届かないこともあるんですけど、そういう心配もしなくてよさそう。

萩原 かなり距離が空いているのに「後ろ来てるぞ!」とか「前も行けるよ!」とかテキトーなことを言う沿道のおっちゃんもいない(笑)。

走りとモノマネで各地のマラソンイベントに引っ張りだこのふたり

――下馬評では、11月の全日本を制したMさんの母校・駒澤大学、前回覇者の青山学院大学、前々回優勝の東海大学が"3強"ともいわれていますが、ズバリ優勝予想は?

 母校なのでひいきになってしまうかもしれないですけど、駒澤にチャンスがあると思います。いつもはコワモテの大八木監督が「男だろ!」と選手を鼓舞してきたのですが、今年は選手たちが大八木監督を「男にしたい」と意気込んでいます。

緊急事態宣言中はマスク着用で練習していたと聞きました。そんな経験をしたからか、選手たちが例年以上に団結している。それが全日本での粘り強さにもつながったと思うんです。もちろん、青学や東海も強いですし、明治や早稲田、東洋も侮れないんですけど。

萩原 スーパーエースの田澤 廉(たざわ・れん)選手がいるのもデカい。ほかの選手にとって本当に心強いんですよ。あいつがいればなんとかしてくれるって。

 まだ2年生なのに、駒澤の過去の選手を含めてもズバ抜けて強いと聞いていますし、すでに実業団の外国人選手並みの練習をしているそうです。実際、全日本でもアンカーで最高の走りを見せてくれました。プレッシャーを感じるタイプではなく、レース直前もゲームをやったりしてリラックスしているという。

――萩原さんの本命は?

萩原 僕も全日本を見て駒澤が強いと思って、実際に別の取材で駒澤って予想もしちゃったんですけど、やっぱり青学かな。10000m28分台の選手が10人いるだけでなく、総合力で抜けている。昨季も出雲駅伝(出雲全日本大学選抜駅伝競走、今年は中止)と全日本では負けても、距離の長い箱根では優勝しています。今季も全日本は4位で同じ流れになるのかなと。

ここ数年はなんだかんだ青学が強すぎて、優勝予想を聞かれても「青学」って言いたくなかったので外していたんです。でも、結局強い。だから今回はもう素直に言っちゃおうかなって(笑)。コロナ禍で波乱がありそうと言っておきながら、普通に強いかも(笑)。

 終わってみればね。

――ちなみに、萩原さんの母校の神奈川大学は?

萩原 もちろん、頑張ってほしいんですけど、まずはきっちりシード権獲得(上位10校)を目指してほしいです。

――ほかに注目している大学や選手などは?

 明治はいいと思います。去年のエースだった阿部弘輝選手(現・住友電工)が抜けましたけど、その穴を全員で埋めていて全日本でも3位に入っていますし。

萩原 僕は早稲田がひょっとしたらあるかなと。下級生が多い分、勢いに乗ったら強そう。特に2年生の井川龍人(いがわ・りゅうと)選手の爆発に期待しています。

 これは学生駅伝あるあるなんですけど、序盤に誰かがいい走りをして流れをつかむと、そのままの流れで最後まで行っちゃうこともある。特に下級生が多いチームはその傾向が強い。それに、みんな同じ練習をしているので、ひとり調子がいいとみんないいみたいな。もちろん、その逆もありますけど(笑)。

萩原 流れは本当に大事。例えば襷リレー時に前のランナーが泣きそうな感じで襷を渡してくると、もらう人も萎(な)えるんです。逆に、走りがイマイチでも笑顔で「よっしゃー! 頼むぜ!」と来ると元気が出る(笑)。

学生はよくも悪くも流れが"伝染"しやすい。だから、青学などはどんな状態でも意識的に笑顔で襷を渡しているみたいです。

 駅伝は襷の受け渡しがチームメイトとの唯一の接点。テレビ観戦ではそういうところに注目しても面白いかも。

――なるほど。

萩原 運営管理車に乗っている監督の表情もテレビ中継で抜かれることがあるので注目ですよ。怒っている監督もいれば、いつもニコニコしている監督もいる。それこそ(駒澤の)大八木監督なんて、選手に「(先導の)白バイを抜け!」と活を入れていなかったっけ?(笑)

 言ってましたね。絶対にムリですけど(笑)。

萩原 あとシューズも気になります。前回は9割くらいの選手がナイキの厚底シューズ(ズームXヴェイパーフライネクスト%)を履いていたけど、今回はどうなるか。前回はチームでアディダスと契約している青学の選手までナイキの厚底を履いていたし。

 インタビューのときはアディダスに履き替えてね(苦笑)。もちろん、こだわって他メーカーのシューズを履いている選手もいて、それはそれで気になったり。

萩原 テレビで見るなら、最近はランニング系ユーチューバーで面白い人たちも増えてきているので、おそらく生配信もあるはず。副音声的に聴くのも面白いかも。

 テレビじゃ流せないような裏話もあると思います。ちなみに、ネットで速報サイトを見る方もいると思うんですけど、あの各校の位置情報は選手じゃなくて、監督が乗る運営管理車についているGPSのデータ。たまに動いていないときがあるんですけど、あれはアクシデントじゃなくて、たぶんトイレ休憩なので安心してください(笑)。

――ありがとうございました。1月2日の号砲が楽しみです。

●M高史 
1984年生まれ。モノマネアスリート芸人。駒澤大学陸上競技部ではマネジャー・駅伝主務を務める。マラソンの川内優輝選手のモノマネでブレイクし、各地の陸上イベントに引っ張りだこ。フルマラソンの自己ベストは2時間40分34秒

●ポップライン萩原(もしか設楽) 
1981年生まれ。お笑いコンビ・ポップライン、マラソン芸人、設楽悠太選手そっくり芸人。神奈川大学駅伝部出身。モノマネは2018年の東京マラソンで設楽選手が日本記録(当時)を更新した直後に開始。10000mの自己ベストは29分48秒