香川は日本に帰ってきて、Jリーグを盛り上げてほしかったと語るセルジオ越後氏

欧州の冬の移籍市場で日本人選手の移籍がいくつか決まった。そのなかでも何かと話題に上るふたりを取り上げたい。

まずは久保(ビジャレアル→ヘタフェ)。今季から所属したビジャレアルはリーグ上位を争う強豪。久保は開幕当初から途中出場が続き、好調のチームにあって徐々に出場機会を減らした。ステップアップといえる移籍だったけど、現実は甘くなかったね。

もっとも、いつも僕が言っていることだけど、プロは試合に出てなんぼ。たとえクラブの格やレベルが下がったとしても、出場機会を求めて移籍するのは悪いことではない。

新天地のヘタフェは残留争いに巻き込まれそうなチーム。このレベルのチームであれば久保も先発で試合に出られる。気分一新、ここから出直せばいいだけの話だ。

ただし、彼の保有権を持つレアル・マドリード復帰や将来のビッグクラブ移籍を目指すなら悠長なことを言ってられないのも事実。

彼は今年の6月で20歳。若いといえば若いけど、下部組織に所属していたバルセロナを除けば、スペインではもう4チーム目。ここで目に見える結果を残せなければ、そのくらいのレベルの選手というレッテルを貼られかねない。

そういう意味では崖っぷち。もっとレベルの高いチームでプレーするために、ヘタフェのエースとしてチームを残留に導く活躍ができるか。

これまでの久保のプレーを見て気になるのは、ドリブルがうまいんだけど、時に効果的でなく、なかなかゴールに結びついていないこと。

ひとりふたりと抜いても結局3人目に倒される。ゴールから遠い位置での強引な仕掛けも目につく。結果を残すには自分でなんとかするしかないという焦りが出ているのかもしれない。実際、残留争いをするようなチームでは攻撃の回数自体が少なく、パスを出してもいいボールが戻ってこないことも多い。

でも、気持ちはわかるけど、彼はメッシではないのだし、せっかくパスのセンス、正確なキックも持ち合わせているのにもったいない。

久保は試合をつくる役割だってできるし、言葉の問題もないのだから、もっと周囲を巻き込み、局面に応じてうまく利用することも必要だ。FKのキッカーにもっと名乗りを上げてもいい。そのあたりが今後の活躍のカギを握るだろう。

もうひとり、昨年10月以来無所属だった香川はギリシャのPAOKへの加入が決まった。意外だったね。僕もギリシャを訪れたことがあるけど、サッカーよりもバスケットが盛んな国だし、彼が今までプレーしてきたリーグに比べれば、レベルは下がると思う。

だから、個人的にはギリシャに行くのであれば、日本に帰ってきてJリーグを盛り上げてほしかった。

ただ、彼の活躍とチームの結果次第では欧州チャンピオンズリーグ出場のチャンスも十分あるわけで、ブランクを経ての再出発という状況を考えれば、面白い選択かもしれない。

香川はまだ31歳。老け込む年齢じゃない。まだまだできる。もう一度、ビッグクラブでプレーすることは難しくても、状態次第で日本代表復帰はアリだ。

今の日本代表の2列目は候補となる若手が多い激戦区だけど、全員が所属クラブで順調なわけではない。そこで香川が「俺を忘れるな」というプレーを見せてくれれば、いい刺激になる。期待したいね。

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