昨年大晦日の「RIZIN.26」で、山本美憂を1R1分42秒・ネックシザースで下し、第3代RIZIN女子スーパーアトム級王者に返り咲いた浜崎朱加(はまさき・あやか/AACC所属・38歳)が、3月21日(日)に行なわれる「RIZIN.27」(日本ガイシホール)でメインイベントを飾る。

今回のタイトルマッチの挑戦者は浅倉カンナ(パラエストラ松戸・23歳)。2018年大晦日の初対戦では、当時、RENAに2連勝するなど波に乗っていた浅倉を、浜崎が2R腕ひしぎ十字固めで仕留め、力の差を見せつけた。

2009年、女子格闘技のパイオニアである藤井惠の"後継者"と呼ばれプロ格闘家デビューして以来、国内・海外の団体でベルトを巻くなど、常に浜崎は女子格闘技のトップを走り続けてきた。そして、ベテランになった今もなお、持ち前のグラップリング技術に加え、打撃力も向上するなど進化を続けている。

表情を変えず、ジワジワと理詰めで相手を追い込み、多彩な関節技で一気に仕留める――そんな"クールな仕事人"のイメージが強い浜崎だが、その素顔はいったい? 意外な(?)一面に迫る!

■『ドラゴンボール』はスゴい好き。カメハメ波とか出したいです(笑)

――「RIZIN.27」(3月21日、日本ガイシホール)で、浅倉カンナ選手とのタイトルマッチが決定しました。今の心境から教えてください。

浜崎 最近は体重を気にしながらの生活を送っていて、「試合前だな」っていう感じです。

――先日の会見ではカンナ選手のことを「(前回の対戦時から)あまり変わっていない」とコメントしていました。あの発言の意図は?

浜崎 もちろん煽(あお)る意味もありますけど、思ったことを言った感じです。カンナもちょっとずつ成長はしているんでしょうけど、私もそのくらいは成長しているので、差は縮まっていないかなって。

――前回の対戦時(2018年大晦日、さいたまスーパーアリーナ。2R4分34秒、腕ひしぎ十字固めで浜崎の勝利)の彼女の印象は?

浜崎 柔らかくてしなやか。打撃もそこそこできる。でも、差はありましたよね? 今もそんなイメージがあります。

――ともあれ、「変わってない」発言は、いつもクールな浜崎さんにしては挑発するなあと思いました。

浜崎 言われます(笑)。(SNSで)リプ来たり。でも、カンナに関しては怒らせるくらいのほうがいいんですよ。

――最近はほかにも、「それがカンナとか言ってるわけじゃなくて、生半可にやってるヤツはムカつく」という発言もありました。

浜崎 私も若い時に生半可にやっていたので人のことは言えないんですけど(笑)。うーん、なんて言うんだろうな。ファッションでやってるっていうのかな、女子プロ格闘家の中にたまにいるんですよ、テキトーにやってる人が。アマチュアでやっているなら全然いいんですけどね。そういうのは辞めちまえって思います(キッパリ)。

――カンナ戦は、そんな「キラー浜崎」が見られるんじゃないか、という声も上がっていますが。

浜崎 でも、そこはそんなに熱くなりすぎずに、冷静に務めたいなって思います。ガッて勢いで行っていいことないので。

(カンナは)全然弱くないし、油断が一番危ないし、余裕を持ってやることは全然ないです。自分の持っているものをしっかり出して勝ちたいですね。

――そんな浜崎さんなんですけど、実はどんな人なのか。今日はその謎を探っていきたいなと。

浜崎 謎ですか(笑)。

――はい。まず、山口県出身だそうですけど、どんなお子さんだったんですか?

浜崎 年子の兄がいて、ずっと一緒に遊んでいたので相当ヤンチャでした。親もお手上げじゃないですけど、暴れん坊みたいな感じですね。

――ママゴトをしていたわけではない?

浜崎 ママゴトしているのを見たことがないって言われたことあります(笑)。お兄ちゃんと一緒に、外でウルトラマンごっことか探検ごっこみたいなのをよくしていました。

――"暴れん坊"とのことですが、ケンカしたりとか?

浜崎 小学校の時はお兄ちゃんとしてましたね。でも、グーで叩いたりとかはなかったですよ。

――ケンカの原因は?

浜崎 なんだったか覚えてないですけど、絶対にあっちが悪いですよ(笑)。

――なるほど(笑)。その頃に影響を受けたものってありますか?

浜崎 『ドラゴンボール』はスゴい好きでした。全巻集めていましたし、いつかは飛べるんじゃないかって思っていたのは覚えています(笑)。

――素敵です。ちなみに好きなキャラは?

浜崎 いっぱいいるんですけど、やっぱり孫悟空が好きです(とニコリ)。

――悟空! どんなところが好きですか?

浜崎 ちょっとおバカキャラだけど、スゴく強いみたいなのがカッコいいと思いますね。

――スーパーサイヤ人になりたかった?

浜崎 なれるならなりたいですけどね。カメハメ波とか出したいです(笑)。

昨年大晦日の山本美憂戦(浜崎=右の赤黒コスチューム)

■試合前に作戦は立てない。立てるとカラダが動かないんで

――子どもの頃、勉強はできました?

浜崎 普通ですね。体育だけはいつもいいみたいな(笑)。持って行っちゃいけないお菓子を持っていって先生に怒られたりとか、非常ベルを鳴らして怒られたりっていうのは覚えていますけど。

――非常ベル! それはヤンチャですね。そういえば、あまりスカートを履いているイメージがないですよね?

浜崎 中学生の頃は制服がセーラー服だったので履いていましたよ。でも、その頃から普段着でスカートは履かなかったです。飛んだり駆け回ったり、激しい遊びをしていたからスカートを履いていいたら走れないじゃないですか。

――確かに。では、好きな人ができて恋愛をしたりとかは?

浜崎 高校からですね。中学校まではなかったです。

――バレンタインデーにチョコをあげたりとかは?

浜崎 ないんですよねー(苦笑)。あ、大人になってあげたりしたことはありますよ、お世話になっている人とかには。

――それは義理チョコです(笑)。じゃ、作ってあげたとかは?

浜崎 ないない、ないです。

――では、お父さんとお母さん、どっちが好きでした? もしくはおばあちゃん、おじいちゃんでもいいですけど。

浜崎 母親ですね。当時父親は厳しくて怖かったんです(苦笑)。

――好きじゃなかった?

浜崎 そうなんですよ......。

――なるほど......。

浜崎 (ポツリと)ちょっと重いですかね? 大丈夫ですか......(苦笑)。

――浜崎さん、面白い(笑)。

浜崎 私も悪戯ばっかりしていたんでしょうけど、父親は厳しくて。叱られた思い出がすごく強くて怖かったんですよ。今はもう全然丸くなりましたけど、それが残っていますね。

――その後、高校から本格的に柔道を始めたそうですけど。

浜崎 中学校の頃もちょっとはやっていたんですけど、高校の先生と中学の先生が知り合いで。「ヤンチャなヤツがいるから面倒みてやってくれ」って、推薦してくれたんです。私はあんまり協調性がないので、個人競技が合ってたんですね。

――中学時代はスポーツでホメられることが多かった?

浜崎 はい。勉強ができなかったので(笑)。

――そうは言いますけど、浜崎さんの試合の進め方を見ると「頭がいいな」と思います。

浜崎 そうですかね?

――格闘技って単なるバカでは勝つことができないと思うんです。

浜崎 そうかもしれないですね。でも、けっこうバカかもしれないですね、私は(苦笑)。

――とはいえ、試合が決まったら相手を研究するわけじゃないですか。

浜崎 実は私はしないんですよ。研究する人のほうが多いと思うんですけど、私はあんまり作戦とかも立てなくて。

――え、作戦を立てない?

浜崎 立てちゃうとカラダが動かないんですよ、ホントに。逆に「作戦通りにやらなくちゃいけない」と思っちゃうので。

――映像を観ながら、「相手はここが弱い」とか、みんなと研究しない?

浜崎 やらないですね、一切。

――それは驚きですね。

浜崎 私は相手の弱点を見つけるより、自分の得意なところで勝負するほうがやりやすいので、冷静に自分のやることを遂行するだけなんです。そのほうが自然に勝ちにつながるというか。

■今が楽しければいい。ホント、先を考えていなくて

――それは意外でした。では話を進めると、高校時代、柔道は上まで行けたんですか?

浜崎 全然ですよ。柔道の競技人口はすごいし、ジュニア(18歳以下)の県内で2位とか。それ以降、目立った成績はないです。

――高校卒業後、すぐに総合格闘技(MMA)にシフトした?

浜崎 いや、柔道を辞めて1、2年は何もしていなくて、東京のスポーツジムに就職しました。

――なぜ東京を選んだんですか?

浜崎 柔道を辞めて山口に帰って就職したんですけど、それまでは柔道っていう打ち込めることがあったのに、それも無くなって。「これでいいのかな。何かやりたいことを見つけたいな」と思っていたんですけど、とりあえず東京に行けばなんとかなるかなって。

――初めての東京はどうでしたか?

浜崎 覚えているのは、まず電車にビックリしましたね。当時、二子玉川に住んでいたんですけど、田園都市線じゃないですか。初めて乗った田園都市線の朝、満員電車すぎて「待て待て」って思いましたもん。1本逃して次に乗ろうと思ったけど、次も満員じゃないですか。「永遠にこれやん(笑)。怖ッ! どれだけ人がおるん?」と思ったのはメッチャ覚えています。

渋谷勤務だったんですけど、「渋谷は都会だなあ」と思って。それで、満員電車に耐えられなくて、割とすぐにバイクに乗るようになったんです。

――以前、試合の紹介映像で出ていましたけど、かなり大きなバイクに乗っていますね。

浜崎 大型でも乗れる免許は持ってます。

――そういう大きいバイクと女性で連想されるのは峰不二子じゃないですか。

浜崎 『ルパン3世』のね(笑)。カッコいいですよね。

――魔性の女ですし。

浜崎 それはできるかなー(笑)。

――将来的には、結婚や子育てみたいなのは考えているんですか?

浜崎 現役中だと考えられないんで、引退してからですね。今は(飼っている)犬や猫の世話しながらトレーニングして、練習して、寝て......もう時間がない!

――いつまで現役をやりたいと考えていますか?

浜崎 よく聞かれるんですけど、何も考えていないんですよ。今が楽しければいいと思っているんで。ホント、先を考えていなくて、いつも衝動的に行動しちゃうんですよ。

――それで後悔したことはない?

浜崎 いっぱいありますよ(笑)。わかりやすい話でいうと、夏休みの宿題にしても最後の最後でやるタイプです。

――でも〆切には間に合わせるんですね。

浜崎 やるにはやります。

――なかには、宿題をやらずに登校する人もいるじゃないですか。

浜崎 それはないですね。

■RENAとだってやります。誰とでもやるんですよ

――ちなみに浅倉カンナ戦に勝ったら、次の試合はどう考えていますか?

浜崎 考えていないです。誰でもいいんですけど、今、国内の二番手が浅倉選手だとしたら、その先はなかなか難しいですよね。

――では視点を変えて、堀口恭司選手がキックルールで那須川天心戦をやったようにキックをやってみるとか?

浜崎 うーん......私がストライカーなら全然やると思うんですよ。

――いかに女子格闘技を広めるかを考えた時に何をやるかですよね。例えば対男子とか。

浜崎 そっか。考えたことなかったなあ。簡単なのはそれですよね、男子。

――今だったら、シバター戦とか話題になりそうですね。

浜崎 シバター強いですよね、何気に(笑)。もうちょっと(体重が)軽い人がいいですね。

――女子とのMMA戦だと、RENA戦は観たいですけどね。

浜崎 たまに言われますよね。私は誰とでもやります。

――RENA選手は、浜崎戦はあまり乗り気じゃないと聞きますね。

浜崎 普通は同門とか練習仲間とはやらないでしょうね。彼女は仲間意識が強いだろうし。でも私は、誰とでもやるんですよ。非情っていうか、別に同じチームでもやりますっていう。

――非情。その理由は?

浜崎 柔道でも同じ学校の選手と当たってましたし、総合格闘技は殴りがあるから柔道とは違うんですけど、私は全然できちゃう。「仲がいい人とはやりません」っていう選手はけっこういますよね。

――RENA選手の印象は?

浜崎 元々、打撃の選手なので打撃は強いのは当たり前なんですけど、寝技も強くなってきて総合にアジャストしてきているとは思うんでうすけど、総合ではもちろん私のほうが強いでしょうし、もし試合するとなっても問題ないです。

――では、最後にカンナ戦への意気込みを。

浜崎 本気で倒しにきてほしいですね。そうしないと"熱"って生まれないし。世代交代はさせないですけど、するぐらいの気持ちで来てほしい。カンナに限らず、「浜崎を倒したい」って言ってくれる選手が出てきてほしいですね。

――KO予告はしますか?

浜崎 しっかり差をつけて、一本かKOで勝とうと思っています。

――2021年初の「RIZIN」のメインになります。

浜崎 あんまりプレッシャーとかないですけど、しっかりフィニッシュして決めて盛り上がる試合をしたいです。

―今日はいろいろ聞かせてもらって、いままで謎だった浜崎朱加が見えてきた気がします。

浜崎 ホントですか? まだ本性は出してないかもしれないです(笑)。

浜崎朱加(はまさき・あやか)1982年3月31日、山口県出身。身長158cm、体重49.0kg。2010年にJEWELS初代ライト級(-52kg)王者、15年にアメリカInvicta FCアトム級で日本人初のMMA世界王者に輝く。18年からはRIZINに参戦中。初代&第3代RIZIN女子スーパーアトム級女王。Twitter:@kk331ayaka、Instagram:ayaka0331