ここまでの結果を出せるとは本人も想像していなかったんじゃないかと語るセルジオ越後氏

どん底からの見事な復活劇。誰でも祝福したくなるのは当然だ。大したものだよ。

15季ぶりにC大阪に復帰した大久保が好調なスタートを切った。柏との開幕戦に続き、古巣の川崎、FC東京相手にもゴールを決めた。

川崎在籍時に史上初の3年連続得点王(2013~15年)に輝いた大久保ももう38歳。17年に川崎からFC東京に移籍して以降、得点数は右肩下がりだった。

磐田でJ2降格を味わった19年はリーグで1得点。昨季はJ2の東京Vでプレーし、自身初のシーズン無得点。チーム状況が悪かったにしても、「大久保は終わった」と言われても仕方のない成績だった。

それだけに、プロ最初の古巣への復帰、そして2季ぶりとなるJ1の舞台に期するものがあったはず。とはいえ、いきなりここまでの結果を出せるとは本人も想像していなかったんじゃないかな。

実際、開幕前のキャンプでは当初、主力組に入っていなかったそうだ。でも、新エース候補だったオーストラリア代表FWのタガートがコロナの影響で来日できず、急遽(きゅうきょ)、クルピ監督に抜擢(ばってき)されたのは彼にとってラッキーだった。そして、そのチャンスを見事にモノにした。

川崎戦で豪快なミドルシュートを決めたかと思えば、FC東京戦ではDFラインとの駆け引きから一瞬のスキを突いてヘディングを決めた。ゴールを量産していた川崎時代を彷彿(ほうふつ)とさせるプレーぶりだ。

点を取る感覚は衰えていないし、何より素晴らしいのは点を取ることを最優先したポジショニング。ゴールに背中を向けず、シュートを打つために動いている。計算してやっているのではなく、本能でそうしている感じだ。

今の時代のサッカーは、FWも守備とかポストプレーとかシュート以外にいろいろな役割を求められるけど、大久保は点を取ることに徹している。クルピ監督も大久保にはそういうプレーを求めているんじゃないかな。

年齢的に90分フル出場は厳しい。でも、キックオフ直後からエンジン全開で飛ばして、ガス欠になってきたら交代という起用法がハマっている。チームとして5人交代制をうまく活用できているね。

前人未到のJ1通算200得点まであと11点(3節終了時点)。当然、期待は膨らむけど、達成できるかどうかはなんとも言えない。

今はコンディションもよく、動きもキレていて、結果も出て、ボールも自然に集まる。スタメン起用され、高いモチベーションでプレーできている。

ただ、今後、新外国人が合流し、アジアチャンピオンズリーグなどでスケジュールが過密になってきたり、チームの負けが込んだりすれば、サブに回る機会も出てくるし、得点チャンス自体が減るかもしれない。そのときにどうやってモチベーションを保つか。彼は熱い気持ちが時々暴走することがあるからそこはちょっと心配。

また、これまでのところ大久保のゴールがなかなかチームの勝利に結びついていないのも気になる。今後も彼が気持ちよくプレーし続けるには、チームメイトの頑張りも重要になる。

あらためて、FWは目に見える結果(ゴール数)を出し続けなければいけない大変なポジションだなと思うけど、大久保にはぜひベテランの意地を見せ、若手の刺激になってほしい。

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