ボランチでコンビを組んだ板倉とのコンビネーションもよかったと語るセルジオ越後氏

強豪を相手に、収穫の多い強化試合だった。

五輪代表(U-24日本代表)が東京五輪の金メダル候補にも挙げられるU-24アルゼンチン代表との2連戦を行なった。

第1戦、日本は立ち上がりからアルゼンチンの激しさに圧倒され、主導権を握られた。格上の相手をリスペクトしすぎたところもあるだろう。

前半21分に先制点を奪われてからはなんとか同点に追いつこうという姿勢を見せたものの、いい攻撃の形をつくれないまま試合終了。0-1というスコア以上の完敗だった。

相手の試合運びが巧みだったとはいえ、攻撃陣は久保にしろ、三好にしろ、アピールしなければ、同点にしなければというプレッシャーなのか、強引なプレーが目立った。注目の三笘(みとま)も機能していなかったね。

中2日で行なわれた2戦目は、1戦目とは逆に日本が高いモチベーションで試合に入った。その勢いに押されてか、アルゼンチンがミスを連発。終始、日本は自分たちのペースで試合を進めて3-0で勝利した。

日本は特にボランチの板倉と田中 碧がよかったね。中盤の守備で効果的にプレッシャーをかけ、1戦目で決勝ゴールを決めたFWガイチにいいボールを入れさせなかった。板倉はCKからのヘディングで2点決めたし、誰が見てもマン・オブ・ザ・マッチの活躍だった。

ただ、個人的には板倉もよかったけど、田中 碧を高く評価したい。1戦目は出場停止で欠場した彼が、この日はチームを完全に仕切っていた。

中盤で相手の攻撃を潰(つぶ)すだけでなく、攻撃面でもチームのリズムをつくっていた。彼にボールが入ると周りが動く。ボランチでコンビを組んだ板倉とのコンビネーションもよかった。ぜひA代表でも見てみたい選手だ。

田中 碧と同じ川崎の三笘は試合終了間際の出場にとどまった。この2連戦は不完全燃焼に終わってしまったけど、彼にとってはよい経験になったと思う。

Jリーグではドリブルで抜けるような場面でも、世界の強豪が相手だと足が伸びてくる、体を入れられる、ファウルで止められる、といった具合で持ち味を発揮できなかった。でも、五輪本番よりも前に強豪の守備を体感できたと考えれば悪くないよ。

同じく注目を集めていた久保にとっても、この2連戦は有意義だったと思う。1戦目は悪いときの彼が出た。ドリブルで強引に抜こうとして潰され、両手を挙げてファウルをアピールする。周りが見えておらず、ひとりよがりのプレーも多かった。

でも、2戦目の久保は違った。最初から周りの選手を使おうという意識が見えた。球離れがよく、自分で動いて再びパスをもらったり、何度かスルーパスも出していた。

後半6分、右サイドで相手を引きつけてフリーの相馬に出したパスは本当に素晴らしかったね。相馬がシュートをポストに当てて得点にはつながらなかったけど、久保はああいう決定的なパスを出せる選手なんだと再確認できた。

念のために言っておくけど、僕はドリブルをするなと言っているんじゃないよ。セットプレーを蹴るような選手は、正確なパスも出せる。なのに、そのパスを使わないのはもったいないということ。プレーの選択肢が増えれば、自然とドリブルも生きる。久保にとってはいいヒントになっただろう。

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