五輪代表のワントップには絶対的な存在がいないと語るセルジオ越後氏

今回は東京五輪が開催される前提で、五輪代表(U-24代表)のオーバーエイジ(OA)枠3人について考えてみたい。

五輪代表は先月、強豪アルゼンチンとの2連戦で1勝1敗。久しぶりの強化試合だったけど、内容は悪くなかった。

特に2戦目でボランチに入った田中 碧は、所属の川崎でプレーしているのと同じような感じで攻守にわたって存在感を発揮。ほかにもヘディングで2点を決めた板倉など選手たちがよくアピールしていた。

昨年1月のU-23アジア選手権でのグループリーグ敗退をはじめ、これまでこの世代の強化は順調とはいえなかっただけに、森保監督もホッとしただろう。

でも、だからといって、五輪本番でも好結果が期待できるかといえば、そう甘くはない。強化試合はあくまで練習試合。過大な評価は禁物だ。

その意味でも、五輪本番でカギを握るのはOA枠の3人。フル活用してチームを底上げする必要がある。日本は過去の五輪でOA枠をあまり有効に使えてこなかった。

3人の枠を使い切らないことのほうが多く、前回のリオ五輪でこそ興梠、塩谷、藤春と3人招集したものの、いずれもA代表のレギュラークラスではなかった。本気でメダルを狙うなら、今の五輪代表には少ないA代表のレギュラークラス3人が理想だ。

一部報道では吉田、遠藤、大迫の名前が取り沙汰(ざた)されている。吉田については僕も大賛成。A代表でも冨安と不動のコンビを組み、安定感抜群。リーダーシップもあるし、2008年北京、OAで12年ロンドンと五輪の経験も豊富だ。そんな彼が入るのであれば、これほど心強いことはない。

遠藤も今季のドイツでの充実ぶり、そして、最近のA代表での自信にあふれたプレーを見れば納得。同じボランチのポジションでは一時、柴崎をOAに推す声が多かったけど、ここにきて完全に追い抜いた格好だ。

五輪代表のボランチには前述の田中 碧、板倉、さらにこの世代でずっと主将を務めてきた中山もいるけど、遠藤が入れば彼が軸になる。相手や試合展開によって、攻めたいときは田中 碧、守りたいときは板倉とコンビを組む選手を代えればいい。中山も人材の手薄な左サイドバックに回せる。

強敵がそろう五輪本番では対戦相手に押し込まれる時間帯も増える。でも、最終ライン中央に吉田、冨安のコンビがいて、ボランチに遠藤が入れば、守備はある程度計算が立つ。田中 碧や板倉も充実しているし、A代表と比べても遜色(そんしょく)のないレベルだと思う。

問題は攻撃陣だ。五輪代表のワントップには絶対的な存在がいない。これまでの森保監督のA代表での采配を見れば、大迫への信頼は厚く、やはり有力なOA候補なのだろう。ただ、彼は今季、ドイツでまったく結果を出せていない。そこは心配だね。

結局のところ、攻撃陣は久保や堂安、三笘など五輪世代の選手も含めて、本番メンバーの登録直前まで各選手の調子を見るしかない。場合によっては、OA枠3人を守備の選手で使い切ることもアリ。右サイドバックの山根などは勢いがあって面白い存在だね。

いずれにしても、メダル獲得にはOA枠3人の活用は絶対条件。コロナの影響もあり、海外組の招集は過去の大会以上に困難になるかもしれないけど、せっかくの地元開催だし、日本サッカー協会の頑張りどころだ。

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