アトレティコ・マドリードについて語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第202回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、アトレティコ・マドリードについて。最終節で逆転勝利を飾り、見事に7季ぶりのリーガ制覇を果たしたアトレティコ・マドリード。宮澤ミシェルは、その優勝の立役者を「ルイス・スアレス」だと語った。

*****

アトレティコ・マドリードが、20-21シーズンのラ・リーガで7シーズンぶりの優勝を果たした。

ディエゴ・シメオネが監督に就いてからさまざまなタイトルを獲得してきたから、リーグ優勝が7シーズンぶりは少し意外な感じもしたよ。

だけど、その間はまさに"メッシのバルセロナ"と"クリスティアーノ・ロナウドのレアル・マドリード"の時代だったんだもんな。

2位のレアル・マドリードと勝ち点2差で迎えた最終節。勝てば自力で優勝が決まるバジャドリード戦に、1点リードされたまま試合を折り返したときは、「もしかしたら今シーズンも優勝は厳しいか!?」と感じたよ。

でも、結果は逆転して見事に優勝を決めた。そんなアトレティコの優勝の立役者は最終節でも逆転弾を決めたルイス・スアレスと言っていいと思うよ。

バルセロナが新体制になったことでスアレスは居場所を失って新天地を求めることになったけど、最前線の強化が必須だったアトレティコにとっては、これ以上ない補強になったよね。

もともとアトレティコは守備の計算が立つチームで、ここ数シーズンは相手を封じ込めているのにゴールを決めきれなくて勝ち点3を取りこぼすケースが少なくなかった。

シーズン途中に契約解除になったジエゴ・コスタもチーム復帰前ほどの輝きもなかったし、ジョアン・フェリックスなどの若い選手もインパクトに物足りなさがあった。

それが前線で核になるスアレスが加わり、32試合で21得点。得点王は手にできなかったけど、ゴール以外のところでも在感は大きかった。まわりの選手たちが勝負強さを発揮できるようになったよ。

移籍後デビュー戦となったグラナダ戦に途中交代で出場して2ゴール1アシスト。振り返ってみれば、この活躍がアトレティコに勢いをつけたと思う。

スアレスは33歳という年齢がネックになってバルセロナから放出されたけど、途中でケガで離脱した時期もあったとはいえ、シーズンを通じて大黒柱になった。

それに結果的にバルセロナが「スアレスを放出していなければ」と思ってしまう戦いぶりだったから、余計にスアレスが目立ったよね。

レアル・マドリードはリーグ戦2位で、11年ぶりに無冠でシーズンが終わった。ベンゼマ、モドリッチ、クロースなど実績抜群の選手たちが実力を発揮したけど、予定調和なチームになっちゃったよね。

「ベテランが多いチームは安定した戦いはできても爆発力を欠く」という典型だったと思うよ。もちろん、ポジションは与えるものではなく奪い取るものなんだけど、もう少しベテランと若手の配合割合を変えていたら、違った結果になった気もしたね。

シーズン終了後にはジネディーヌ・ジダン監督の退任が発表されて、来季は新体制で臨むことが決まった。クラブには能力の高い若手選手はたくさんいる。そんな、才能はあってもビッグクラブでの実績は乏しい彼らをどう使っていくかが復権へのテーマになるんじゃないかな。

我々にとっては、そこに久保建英が絡んでいけるのかは最大の関心事。彼にとって20-21シーズンは苦しいものになったけど、この経験を生かしていけるクレバーな選手だから、どういう選択をするかは興味が湧くよ。来シーズンが始まるまでの数ヶ月は注目だね。

それにしてもバルセロナはどうなっちゃうんだろうねえ。メッシがチームに残留するのか、移籍しちゃうのかは最大の気がかりだし、ここにきて監督人事の問題も浮上している。チームが生まれ変わるタイミングであるのは間違いないだけに、どういう決断を下すのか。今後の動向から目が離せないよ。

★『宮澤ミシェル フットボールグルマン』は毎週火曜日更新!★