4月8日の広島戦でプロ初勝利。初のお立ち台では初々しさ全開でファンの心をわしづかみにした奥川恭伸投手

なんか最近「かわいい男」人気ありませんか!? ということで週プレが独自調査のメスを入れました! 奥さまによるツイッターでバズった"かわいいおじさん"赤井英和さんに続き、"燕の若きエース"奥川恭伸(おくがわ・やすのぶ)投手に注目!

高卒2年目の今季、開幕から1軍に定着すると人気が爆発。登板のたびに「奥川くんかわいい」が大量にツイートされる異常事態も発生しているが、熱心なヤクルトファンはこの現象をどう見ているのか?

■背負うのは期待だけじゃない! "みんなの弟"奥川くん

宮城大弥(ひろや/オリックス)や佐々木朗希(ろうき/ロッテ)ら高卒2年目選手の躍進が目立つ今年のプロ野球。なかでも異質な人気を集めているのがヤクルトの奥川恭伸(おくがわ・やすのぶ)だ。

交流戦終了時点で2勝2敗。防御率5.45。成績的にはまだ物足りなさがある半面、オールスターファン投票中間発表ではセ・リーグ先発投手部門で堂々4位。その人気ぶりを証明するかのように、登板日にツイッターではある言葉がにぎわいを見せる......。それこそが「奥川くんかわいい」だ。「はぁ...奥川くんかわいい......」「打率.111なのにかわいい」「ドヤ顔までかわいい」といった声が散見される。

名門・星稜高のエースとして甲子園で熱投を演じた男が「かわいい」で消費されていることに衝撃を受けつつも、商売上手なヤクルト球団はこの「奥川くんかわいい」に早くも便乗。

球団オリジナルランドセルの広告塔としてランドセルを背負わせたり(これが確かにかわいい!)、リュックにヤクルトのピンクユニフォーム着用テディベアキーホルダーをつけさせたり(これもかわいい!)、奥川の「かわいい推し」が止まらないのだ。

この状況を熱狂的なファンはどう見ているのか? 声優界随一のヤクルトファンで、ヤクルトにまつわるコラム執筆も手がける松嵜麗(まつざき・れい)さんに話を伺おう。

アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』諸星(もろぼし)きらり役など、誰もがうなずく「かわいい役」を務めてきた声優から見て、「奥川くんかわいい」問題はどう映るのか?

「ランドセルを背負わせるのは確かにあざといですね(笑)。でも、そこにも奥川投手のよさが隠れていて、何を言われても断らないし、いやがらない。私自身は『かわいい』というより、背番号11の先輩・由規(よしのり)投手(現・独立リーグ埼玉武蔵)のような"みんなの弟"と思って応援しています」

その象徴的場面として挙げてくれたのが4月8日、2桁安打を許しながらもプロ初勝利を挙げた際のヒーローインタビューだ。このとき、打線爆発で勝利を呼び込んだ先輩たちからいじられる姿は、まさに"球団の弟"ともいうべき光景だった。

「10歳上の西浦(直亨[なおみち])選手と一緒でしたが、やたらと『奥川さん』といじられていました。この場面に限らず、先輩や監督がとにかく気にかけてくれるんです。昨年の神宮最終戦でのプロ初登板では、試合後のセレモニーで高津(臣吾[しんご])監督が『今日は未来のエースが投げてくれました』と奥川投手を呼んで話をさせる異例の展開。

きっと突然のむちゃぶりだったはずなのに、奥川投手がいやな表情を見せずに『はい!』と言ってしゃべり始めたのには驚きました。何をふられても断らないまじめさ、素直さもまた弟的。でも、緊張しているのは隠しきれず、表情に出てしまうところもまたかわいいんです」

一部では、「未来のエースを『かわいい』で売り出して、将来の彼を苦しめないか?」「チヤホヤすれば勘違いしてしまうのでは?」と心配する声も聞こえるが、松嵜さん周辺のファンの反応はどうか?

「私の周りに『かわいい』ではしゃぐタイプは少ない印象です。でも先日、これまでの奥川投手の活躍ぶりを動画で見直していたら、奥川投手のヒーローインタビューを撮った映像に、明らかに男性ファンの声で『かわいいな、もう』という音声が入っていました(笑)。ファンにとっても弟みたいな存在なんですよ。

それと、本人は『かわいい』で売られていることに気づいていないはずです。そういう鈍感力もあるので、チヤホヤされて勘違いする心配もないと思います。結局、ピシャッと抑えていけば、いずれエースに育つ逸材ですし、その上で、クシャッとした笑顔がウケるなら、それはそれで魅力的なキャラクターになっていくんじゃないでしょうか」

■くれぐれも変な女にだまされるな!

そんな"かわいい弟"奥川くんのここまでのプロ生活はどう見ているのか?

「点を取られても引っ張らないというか、切り替えられる精神面の強さはさすがです。かわいい顔をしていても投げる球はエグいですし、投げるときの顔はすごく凜々(りり)しい。でも、抑えた後、ちょっと小刻みにジャンプしながらの無邪気なガッツポーズはやっぱりかわいいです。

あとは、何回やっても初々しいヒーローインタビューがまたズルい。インタビュー慣れする前の今のうちにしっかり堪能しておきたいですね」

では、ここから燕(つばめ)のエース、さらには球界のエースになるために期待したいことは?

「最近6回まで投げられるようになってきたので、もっとスタミナがついて試合全体を引き受けられるような投手になることを期待しています。球団的にも絶対に育てないといけない選手ですし、その期待に応えて、球界を背負うエースを目指してほしい。期待しすぎはよくないかなと思いつつ、プレッシャーに押し潰(つぶ)されない強さもまた奥川投手の特長ですから」

ここまで慎重すぎるほどの育成方針を貫いてきた球団に何かリクエストしたいグッズは?

「結局、奥川投手の最大の魅力は『ギャップ』だと思うんですよ。投げる際の凜々しさに対して、マウンドを降りたときの笑顔。だから、うちわの片面が凜々しさ推しで、もう片面がかわいい推しにできるような、どちらの奥川投手も楽しめるグッズなんていかがでしょうか?」

女子アナやアイドルとの結婚が多い球団だけに、一部で「女子アナに狙われちゃうんじゃ!?」と危惧する声が早くもあるが、この点の心配は?

「女子アナさんでも女優さんでもどなたでもいいですけど、ちゃんと支えてくれる人であってほしい。『くれぐれも変な女にだまされるな!』とお伝えしたいです」

そんな未来のエース奥川くんにメッセージをぜひ!

「背負わせて申し訳ないですけど、投手陣さえ整備できれば......というのは私たちファンの長年の願いであり、希望。だからこそ、ドラフトで高津監督がくじを引き当てたときの喜びは言葉にできなかったほど。

後半戦は皆さんバテてくると思うので、若い奥川投手の力はますます必要になってくるはず。先輩方が終盤に追いつかれてしまうこともあるかもしれませんけど、そこで腐らずへこたれず、ヤクルトスワローズを何とぞよろしくお願いします」

松嵜 麗(まつざき・れい)
1985年生まれ、福岡県出身。声優。東京ヤクルトスワローズの熱狂的ファン