何色でもいいからメダルを獲って、サッカー人気を盛り上げてほしかったと語るセルジオ越後氏

4位が話題になったのは試合翌日だけ。すぐに関心を失われた。寂しいものだね。日本人はオリンピックが大好き。だからこそ何色でもいいからメダルを獲(と)って、サッカー人気を盛り上げてほしかった。まさに天国と地獄だ。

東京五輪に臨んだU-24日本代表は準決勝でスペインに0-1(延長)で、3位決定戦でメキシコに1-3で敗れ、1968年メキシコ五輪以来となるメダル獲得を逃した。

日本は早々とオーバーエイジ(OA)枠の選手が合流して連係を深め、大会期間中も環境の整った専用施設で過ごした。このチャンスを逃したらいつメダルを獲れるのかというくらい大きなアドバンテージがあったのにダメだった。つまり、それだけ力の差があったということ。

3位決定戦はメキシコに1次リーグで2-1と勝利していたこともあり期待も大きかった。でも、この日のメキシコは1次リーグでの対戦時と違って、立ち上がりから激しくプレッシャーをかけてきた。

そうして主導権を握られ、PKとセットプレーから2失点。OA枠に守備的な選手をそろえ、しっかり守ってカウンターを狙う戦術のチームにとって2点のビハインドは大きすぎるよね。試合後、吉田が「完敗です」と言っていたけど、そのとおりだ。

大会全体を振り返れば、1次リーグの戦いぶりは悪くなかった。初戦の南アフリカ戦に勝って余裕が出て、2戦目のメキシコ戦も前半に2点を先取して逃げ切り。2連勝したからこそ、3戦目のフランス戦も自信を持って戦えた。攻撃の中心として期待された久保も堂安もよかったね。

ただ、決勝トーナメントに入ってから点が取れなくなった。日本のように先発を固定していると、相手も対策を立てやすい。久保と堂安への相手のマークは1次リーグと比べて明らかにきつくなった。そして、それを打開するための効果的な選手交代や戦術変更もなかった。

森保監督の采配は"決め事"という感じ。疲れてきたFWもしくは2列目の選手を、だいたいいつも同じ時間帯に代えるだけ。あとは選手まかせ。最後のメキシコ戦も2点差を追いつかなければいけないのになかなか手を打たない。三笘(みとま)を投入するなら後半開始からでよかった。

また、メンバー固定のツケも出た。メキシコ戦ではOAの遠藤のミスが目立ったけど、彼は中2日の連戦で疲れ切っていたね。あまりにも負担が大きく、気の毒だった。同じくOAの吉田も同様だ。主力を休ませられるだけの選手層がなかったといえばそれまでだけど、そこをなんとかするのが監督の腕の見せどころなんだけどね。

日本人はプロ選手にも優しいから、メダルを逃しても厳しい意見はあまり聞こえてこない。でも、「感動した」「最後までよく頑張った」だけでは、いつまでたってもメダルなんて無理。何が足りなかったのか、日本サッカー協会はしっかりと分析し、次への教訓として生かさなければいけない。

最後にメキシコ戦後に号泣していた久保について。ちょっと驚いたけど、相当プレッシャーが大きかったのだろう。実際、メディアもファンも久保のチームとして見ていたからね。でも、インタビューで「結果がすべて」「勝たなければ意味はない」と話していたのはプロらしかった。この悔しさをバネにして今後も頑張ってほしい。

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