選手個人でいえば、やはり酒井に注目したいと語るセルジオ越後氏

東京五輪による中断期間に前後してJリーグの神戸と浦和が大型補強を敢行した。

まずは神戸。チームの得点王で日本代表にも定着しつつある古橋がセルティックへ移籍。その穴を埋めるべく、日本代表の大迫(前ブレーメン)、元日本代表の武藤(前ニューカッスル)、元スペイン代表のボージャン(無所属)と3人のFWを獲得した。

そんなにFWの選手を集めてどうするのか。それが率直な感想だ。その後、マシカの契約を解除し、藤本を清水に期限付き移籍で放出したものの、まだドウグラスもリンコンも田中もいる。彼らをどう組み合わせるのか。やるサッカーをシーズン途中でガラッと変えるわけにはいかないし、意図がわかりにくい。三浦監督は本当に3人とも欲しかったのかな。単純にネームバリューだけで獲(と)ったようにも見える。

特にボージャンは未知数。元バルセロナとはいえ、彼が注目されていたのは10年くらい前の話。ここ数年はパッとせず、直近も半年以上無所属だった。イニエスタへの忖度(そんたく)なのかなと思ってしまう。

また、大迫、武藤にしても昨季の数字は物足りなく、状態がわからない。名前のある3人を獲得したとはいえ、古橋の抜けた穴を埋めるのは簡単じゃないだろう。

ここ数年、神戸は大金を投じて選手を獲得しているけど、それに見合った結果を出せていない。その流れをここで変えられるか、今は期待よりも不安のほうがやや大きいかな。

ただ、個人的には、大迫と武藤に関しては頑張ってほしい気持ちが強い。いつも言っていることだけど、プロは試合に出てなんぼ。海外志向もいいけど、十分な出場機会を得られなかったり、思うようにプレーができない状況が続くのであれば、見切りをつけて日本に帰ってくるべき。それは決して後ろ向きの選択ではない。

その意味で、実績のあるふたりの行動はよいお手本。当然、来年のカタールW杯を意識しているだろうし、相当の覚悟を持っていると思う。すぐに結果を求められる難しい立場だけど、好調時のパフォーマンスを取り戻して、Jリーグを盛り上げてほしい。

一方の浦和は、日本代表のDF酒井(前マルセイユ)、MF江坂(前柏)、デンマーク人のDFショルツ(前ミッティラン)らを獲得。神戸に比べると、バランスよく各ポジションに必要な人材を連れてきた印象だ。

浦和は今季からチームを率いるロドリゲス監督の下、J2から有望な若手を次々と獲得するなど、これまでにないやり方で世代交代、選手の入れ替えを進めている。

ただ、試合内容を見ると、まだまだ課題も目立ち、安定しない。攻撃面はユンカー頼みのところもある。だから、このタイミングで実績のある選手たちを獲得した狙いは理解できる。

これまでの浦和は人気チームなのに目指すサッカーも監督もコロコロ変わり、継続性がなかった。今は守ってカウンターというサッカーだけど、あの熱いサポーターにふさわしい、攻めまくるサッカーを見せてくれれば盛り上がるし、そこを目指してほしいね。

選手個人でいえば、やはり酒井に注目したい。何しろ本人にその気があれば、今季も名門マルセイユでプレーできた選手。ガツガツいく激しいプレースタイルなのでケガが心配だけど、さすが日本代表の不動の右サイドバックというプレーを期待しよう。

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