冨安は日本代表の最終ラインを安心して任せられる選手になっと語るセルジオ越後氏

欧州の夏の移籍市場が閉じた。今年はメッシ(バルセロナ→パリ・サンジェルマン)とロナウド(ユヴェントス→マンチェスター・ユナイテッド)、ふたりの大物の話題で持ちきりだったけど、日本人選手にも多くの動きがあった。

そのなかでも一番の注目は、イングランドの名門アーセナルに引き抜かれた冨安だ。日本人のビッグクラブへの移籍は、昨年1月にリヴァプールに移籍した南野以来。センターバックとしては初めてのケースだ。

冨安は2018年1月に当時J2の福岡からベルギーのシント=トロイデンに、そして19年7月にイタリアのボローニャへと、着実にステップアップしてきた。そして今回のアーセナル加入。30億円ともいわれる移籍金はボローニャでのプレーをしっかり評価されている証拠。大したものだよ。

冨安はユース年代から年代別の代表に選ばれていた選手だけど、昔はもっとプレーが粗かった。体の大きさばかり目立ち、技術的にはほかの選手に比べて劣っていた。ボールを奪ったら、周りの選手に預けるだけ。そんなイメージだったね。

でも、福岡で"アジアの壁"と呼ばれた井原監督(当時)の指導を受け、欧州でいろいろなタイプの選手とプレーすることで急速に成長した。日本代表でもベテランの吉田の隣でプレーするようになって学ぶことも多かっただろう。今では日本代表の最終ラインを安心して任せられる選手になった。

厳しいことを言えば、センターバックとしての総合力ではまだ吉田のほうが上。吉田は大舞台での経験が豊富で、リーダーシップもあり、精度の高いミドルパスも出せる。33歳になった今も、本当にレベルの高い選手だからだ。

ただ、それは裏を返せば、まだ22歳の冨安には伸びしろがたくさんあるということ。センターバックは経験も重要になるポジション。これからアーセナルで経験を積むことで、さらに頼もしい選手に成長してくれるのでは、という期待感がある。

アーセナルでは当面、本職ではない右サイドバックとして起用される可能性が高いという。そこにジレンマもあるかもしれないけど、一番大事なのは試合に出ること。与えられたポジションでチームに貢献すれば、センターバック起用への道も開けるはずだ。

今後の課題を挙げるなら攻撃面。特にセットプレー時に得点に絡むプレーをすること。DFはアピールの難しいポジション。その点、攻撃面での活躍は印象に残りやすいので、そこはぜひ意識してほしい。

もうひとり僕が特に期待しているのが、スコットランドのセルティックに移籍した古橋。ここ数年、Jリーグで継続して結果を出し、新天地でもデビュー戦から順調にゴールを重ねている。リーグのレベルと彼の実力を考えれば驚きはないけど、素晴らしいスタートを切った。瞬間的なスピードとシュート時の冷静さは相変わらず。

また、ポステコグルー監督(横浜Fマ前監督)の存在も大きい。サイドではなく、彼の持ち味が生きる中央で起用してくれているからね。

名門のセルティックは欧州の舞台にも出られる(今季はヨーロッパリーグに出場)。そこで活躍すれば、もっとレベルの高いリーグ、クラブへのステップアップも可能だ。日本代表でも今後、得点力不足解消のカギを握る選手だけに、ぜひ頑張ってほしい。

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