守田英正について、福西崇史が深堀り!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第7回目のテーマは、守田英正。W杯アジア最終予選で大きな成長を遂げ、直近の2試合でも存在感を発揮した守田に福西崇史は期待を寄せているという。

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キャプテンの吉田麻也、冨安健洋というCBの2枚看板を欠く不安要素の大きいなかで迎えたW杯アジア最終予選で、日本代表は1月27日の中国戦に2-0で勝利。そして、昨夜のサウジアラビア戦も2-0で勝利という結果でした。

9月2日のオマーン戦での敗北から始まったW杯アジア最終予選の日本代表を振り返ると、日本代表は連携面などで課題がいくつも露呈しました。そのため苦戦を強いられたわけですが、W杯本大会を見据えてポジティブに考えれば、このタイミングで問題点を炙り出せたのはよかったと思っています。

すんなり出場権を取ってしまうと、勝利に浮かれて内容を軽んじてしまうからです。その結果としてW杯で惨敗に終われば、リベンジするのにまた4年という歳月を要することになってしまいますからね。

ボクは、森保監督がこの4年間で築いてきたサッカーの方向性に間違いはなかったと思っています。それは世界とアジアに大きなレベル格差があることで起きる"ダブルスタンダード問題"や、代表選手のほとんどが海外組になったことで昔のように代表合宿を組めない状況を踏まえれば、ほかの誰が監督をやっても苦戦したと思っているからです。それだけに、森保監督のもとで日本代表の世代交代がしっかり進んだことを評価したいですよね。

チームとして苦しい状況にありますが、選手それぞれにフォーカスしていくと、着実にステップアップしています。これはW杯本大会に向けてのポジティブな要素ですよね。

その筆頭が守田英正です。大卒ルーキーとして川崎フロンターレに加入した2018年に初めて日本代表に選出されますが、その後は故障などもあって代表に定着できませんでした。それが昨年3月の親善試合の韓国戦で、2019年6月以来の招集を受けると、ダブルボランチの一角で存在感を示して代表に居場所をつくりました。

そして昨年10月、サウジアラビア代表に敗戦して迎えた背水の陣となったオーストラリア戦で守田は4-3-3のインサイドハーフとしてスタメンに名を連ね、そこからレギュラーになっていきました。

守田が素晴らしいのはスタメンに定着したからOKというのではなく、日本代表での試合を重ねるごとに、さらに成長した姿を見せてくれていることです。先の中国戦ではゲームメイクでも高い意識と意欲を持って臨んでいることが伝わるプレーを見せてくれました。

それまでの守田というのは守備面の信頼度は高いけれど、攻撃面はどちらかと言えば、動き出すことによってゲームをつくる味方に使われる選手でした。それが中国戦では絶妙なポジション取りをしながら、攻撃でも中心的な役割を果たそうとしていました。

こうした役割は同じインサイドハーフで出場する田中碧の方が得意なイメージがあります。でも、中国戦に限ればその田中を上回る存在感を守田は示していましたね。

ゲームメイクでも進化を遂げようと意識的に取り組んでいる守田は、現状ではアンカーの遠藤航、インサイドハーフの田中碧と組む中盤3人のなかでのプライオリティーは三番目かもしれません。だけど、ここから先は守田がファーストチョイスになる日が来ても不思議はありませんね。

そのためには、まずはインサイドハーフとして出場しながら、プラスαの仕事をしなければいけません。得点を決めたり、アシストを演出したりする。ゴール前に飛び出していくことも大事になりますし、持ち味でもある守備でも1対1で圧倒的な強さを見せることも求められるでしょうね。

そうしたプレーを実践で積み重ねていって信頼と存在感を高めていければ、守田がファーストチョイスになるでしょうね。そうすれば川崎F時代から馴染んでいて、本人が代表でも望んでいるとされるアンカー起用という道筋も見えてくると思います。

いまの日本代表ではブンデスリーガのデュエル数1位がクローズアップされる遠藤がアンカーに座っています。でも、守田が成長を続けていって、遠藤をベンチに追いやるほどになれば、日本代表にとってはこれ以上の戦力アップはないと言えるわけです。

もちろん遠藤だってそう簡単に譲るわけはないでしょうから、さらに成長を遂げていくはずです。それに遠藤にアクシデントが起きた場合、その穴を埋められる選手として守田が控えていれば日本代表にとっては大きなプラスです。ほかの選手たちだって試合に出るには、両選手以上のアピールをしなければいけませんから、おのずと日本代表のレベルは高まっていくわけです。

アジアでの戦いでは日本代表が押し込む時間帯が多いですが、W杯本大会で世界の強豪国と戦えば、日本代表が相手に押し込まれる展開になります。勝機を見出すためには、まずはしっかり守る。そのためには中盤に守備力の高い選手は不可欠ですし、そこでボールを奪ったら、縦へ推進していく力も求められます。

森保監督の日本代表はその戦いを想定したチームづくりのため、ボール保持率が高くなるアジアの戦いでは苦戦していますが、守田のように個々の選手は着実に伸びています。11月のW杯本大会での期待値は高いと感じています。

W杯カタール大会の出場権をグループ2位以内になってストレート・インで獲得するには、日本代表の正念場はまだまだ続きます。3月シリーズではアウェイでオーストラリア戦があり、その5日後の3月29日(火)にW杯アジア最終予選の最終戦をホームでベトナム代表と戦います。

泣いても笑ってもあと2試合、まずは最後まで全力で挑んでもらいたいですね。

■福西崇史(ふくにし・たかし)
1976年9月1日生まれ 愛媛県新居浜市出身 身長181cm
1995年にジュビロ磐田に入団。不動のボランチとして黄金期を支える。その後、2006年~2007年はFC東京、2007年~2008年は東京ヴェルディで活躍。日本代表として2002年日韓ワールドカップ、2006年ドイツワールドカップにも出場。現役引退後は、サッカー解説者として数々のメディアに出演している

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