強化試合はお金をたくさん払ってでも強い相手とやらないとダメと語るセルジオ越後氏

本当に実現したら素晴らしいね。一部報道によれば、6月の国際Aマッチデーに日本代表がブラジル代表と対戦するかもしれないそうだ。11月に開幕するカタールW杯で強豪のドイツ、スペインと同組に入った日本にとっては、最高の腕試しの相手。森保監督が掲げる「ベスト8」という目標にふさわしいマッチメイクだ。

ブラジルは未消化だったW杯南米予選のアルゼンチン戦(昨年9月の試合はアルゼンチン側のコロナ規制違反が判明し、前半早々に打ち切り)を6月にオーストラリアで行なう。その流れで日本に来てくれるかもしれない、というわけだ。

今は日本、アジア勢だけでなくブラジルなどの南米勢も、ヨーロッパの国と強化試合を組むのが難しい時代。ブラジルにとっては純粋な強化というよりは、金銭的なメリットが大きいと考えての判断だろう。

とはいえ、ブラジルはたとえ練習試合でも負ければ母国のメディアに叩かれる。しかも、相手が日本なら大変なことになる。また、億万長者の選手たちも勝利ボーナスがかかっていれば本気でやる。そういう国民性。だから、日本にとってはヨーロッパ以外の国では考えうるベストの相手。どうせならアルゼンチンも招待できるといいけど、欲張りすぎかな。

ブラジルは南米予選で14勝3分けと負けなしで早々に突破を決めた。最近の南米はレベル低下傾向にあるとはいえ、大したもの。W杯の組み合わせ抽選後にブックメーカーが発表した優勝予想オッズでも1位に挙げられている。

ヨーロッパの強豪と試合をしていないのが心配だけど、選手層は厚い。守備陣はタフな選手がそろっていて、誰が出ても計算できる。攻撃陣もネイマールをはじめフィルミーノ、ジェズス、ヴィニシウスらベテランから若手まで能力の高い選手がいて強力だ。

もっとも、その割にブラジル国内での評価はそれほど高くない。「まだ大きな大会で結果を出していない」とね。厳しいけど、ブラジルらしいよね。

個人的な注目はやっぱりネイマール。正直に言えば、以前のような破壊力はなくなったし、選手としてのピークは過ぎたのかなとは思う。

ただ、南米予選でも攻撃の中心になっていたし、タレントぞろいのチームにあって、いまだ別格の存在感。彼のキープ力、ファウルをもらう技術、決定力はブラジルの大きな武器だ。

そして何より、本人がW杯出場は今回で最後かもしれないと公言している。個人でもクラブでもあらゆるタイトルを、代表チームでも五輪の金メダルを獲得しているけど、唯一縁がないのがW杯の優勝だ。

ブラジルのファンはどんなにいい選手でも、結局、W杯に優勝しないと認めないところがある。例えばジーコもそう。それだけに今回、ネイマールには期するものがあるはず。

相手DFのターゲットにされて、挑発され、激しいファウルをされるのも目に見えているし、大会時点のコンディションや決勝トーナメント1回戦以降の組み合わせ次第ではあるんだけど、今回のブラジル、そしてネイマールにはやってくれるのではという期待感がある。

弱い相手に大勝して課題がうやむやになるよりは、強い相手に大敗して世界のレベルを肌で感じ、課題が浮き彫りになるほうがいい。だから強化試合はお金をたくさん払ってでも強い相手とやらないとダメ。W杯に向けて、ブラジル以上の相手はいないと思う。

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