結果よりも内容に大きな不満が残ったと語るセルジオ越後氏

スコア以上に力の差があった。惜敗といっても、なんの慰めにもならないね。

日本代表の強化試合4連戦、目玉のブラジル戦を振り返りたい。現在、FIFAランキング1位のブラジル代表との一戦は、W杯本番を考えれば仮想ドイツ、仮想スペインと言える。もちろん、南米と欧州という違いはあるけど、世界の強豪という意味では同レベルの相手だ。 

試合は予想どおり、開始早々からブラジルが主導権を握って、日本はGK権田、DF吉田を中心にしっかりと守りを固めた。0-0の時間帯をできるだけ長くして、なんとかワンチャンスを狙う。そういうプランだったのだろう。

でも、後半32分にネイマールにPKを決められ、0-1で敗戦。スポーツ紙など一部メディアは「惜敗」「善戦」と伝えていたけど、ブラジルは何度も決定機をつくっていた。権田の頑張りがなければ、大量失点していてもおかしくなかった。その一方で、日本は枠内シュート0。攻撃ではまったく形をつくれなかった。

日本は立ち上がりから球際に激しく行って、特にネイマールに対してはファウル覚悟で何度も削っていた。ブラジルはなかなか点が取れないこともあってイライラしていた。ブラジルを本気にさせるという意味では、あの激しい守りは良かったと思う。

ただ、攻撃に関しては、どうやって点を取ろうとしているのか、狙いが見えなかった。W杯アジア予選のように前線の高い位置でボールを奪えないし、引いた位置でようやくボールを奪ってもカウンターを仕掛けるのは難しい。そして、守る時間が長いから、徐々に足が止まってしまう。

後半27分、いい形でボールを奪った伊東が縦パスを出したけど、前線でカウンターに参加できたのは前田と南野だけ。結局、南野はボールをキープして味方の選手が上がってくるのを待つしかなく、シュートまでつなげられなかった。実に象徴的なシーンだったね。

このブラジル戦、僕は結果よりも内容に大きな不満が残った。以前にもこのコラムで言ったけど、あくまで強化試合だし、スター軍団のブラジル相手に負けるのは仕方のないこと。

その代わり、森保監督が目標に掲げるW杯ベスト8を実現するために、このレベルの相手にどうやって点を取るのか、それを見せてほしかった。ナイスプレーの権田には悪いけど、攻撃的な選手に目立ってほしかった。

でも、日本は負けないためのサッカーに徹してしまった。我慢して守るけど、1点取られたら終わり。最後まで攻勢を仕掛けられなかった。せっかくのブラジル戦なのにもったいないし、このサッカーでW杯ベスト8を狙うのは難しいよ。

前半に守備を固めるプランは理解できるけど、せめて後半はオープンな展開になってもいいから、リスクを冒してでも点を取りにいくべき。仮にブラジルに3点、4点と取られたとしても、日本が1点取れれば、W杯本番に向けての貴重なレッスンになった。

W杯本番でグループリーグを突破し、さらに決勝トーナメントを勝ち上がるには、守るだけでは限界がある。格上相手でもチームとして点を取りにいかなければいけない場面が絶対にある。だからこそ、ブラジルのような強豪相手に攻撃の形やバリエーションを試しておきたかった。それが率直な感想だね。

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