U-21日本代表の選手たちをフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 

第27回目のテーマは、U-21日本代表の選手たち。先日開催された『AFC U-23アジアカップ』では、3位という結果をおさめた彼ら。多くの選手の活躍が光ったが、その中でも今後が面白い存在として福西崇史が期待しているのが中島大嘉だという。

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日本代表は11月のW杯に向けてブラジル代表など4ヵ国とのテストマッチを行いましたが、森保ジャパンの収穫点や課題点などついては次回からフカボリしていきますね。

では、今回のテーマはというと、この親善試合と同じタイミングで行われていた『AFC U-23アジアカップ』に挑んだU-21日本代表の選手たちに触れていきます。

この大会は他国がU-23世代でチーム編成して出場するなか、日本はU-21世代で臨みました。グループステージを突破すると、準々決勝ではライバルの韓国を3-0で撃破。この勝利はこれから先のことを考えても大きかったですよね。

この世代の韓国代表は、2019年にポーランドで行われたU-20W杯で準優勝している韓国の黄金世代。力のあるチームなんですね。しかも、このU-20W杯での日本は、決勝トーナメント1回戦で韓国代表に0-1で負けていたわけです。

ただ借りを返しただけというものではなく、内容でも上回ったのがよかったですよね。この3年間で日本の若い選手たちが成長した証を見せてくれました。

準決勝では開催国のウズベキスタンに敗れましたが、オーストラリアU -23代表との3位決定戦に勝利しました。大会を負けて終えるのとでは全然違いますからね。

そのU-21日本代表のメンバーは、攻撃陣も守備陣もほとんどの選手がJリーグでレギュラーとして試合に出ています。東京五輪世代もそうでしたが、若い時期からJリーグでポジションを奪える力がなければ、いまの日本サッカーでは年代別代表に入るのも難しくなっている。そのレベルまで高まっているわけです。

攻撃の軸になっているのが、鈴木唯人(清水エスパルス)です。スピードがあって、裏への抜け出しもうまい選手で、彼がボールを持つと攻撃に推進力が生まれます。トップ下でまわりも活かすことができるし、FWとしてもプレーできますよね。韓国戦では先制点とダメ押し点を決めました。決定力がもっと高まってくると、さらに注目されておかしくない選手だと思います。

最前線で1トップをつとめたのが、細谷真大。今シーズン好調な柏レイソルの原動力と言える働きをしているU-21日本代表のエース格です。スピードがあって、ドリブルもうまいけれど、それだけではないのが彼のいいところですね。DFライン裏への抜け出しや、サイドからのクロスボールに対してのポジショニングなどでも光るものを見せています。そのため身長は177cmと格別高いわけではないですが、ヘディングでも競り勝ちますよね。Jリーグでは得点ランキング4位(5/31時点)にいますが、もっともっとゴール数を伸ばしていって大きく飛躍してもらいたいです。

ほかにもサイドアタッカーには斉藤光毅(ロンメルSC)、ボランチには藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)や松岡大起(清水エスパルス)。CBには高校を卒業した4月からシュツットガルトに加わったチェイス・アンリ(シュツットガルト)がいて、GKには190cmの鈴木彩艶(浦和レッズ)と193cmの小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)など、将来が楽しみな選手がたくさんいます。

そのなかでも僕がこれから面白い選手として期待しているのが、コンサドーレ札幌の中島大嘉です。U-23アジアカップ期間中に20歳になったフォワードです。まず何がいいかといえば、キャラクター。札幌のHPを見たらわかると思いますが、ビッグマウスなんですね。荒削りなのに、臆せず目標を口にできる。これはなかなかできることではないですからね。

プレイヤーとしての特長は、188cmの長身で、そのうえスピードもあるんです。U-23アジアカップのタジキスタン戦でのスピードに乗った突破からループシュートを決めましたが、これはJリーグでも見せているものなんですね。4月2日の浦和レッズ戦はゴールこそ奪えませんでしたが、スペースに抜け出すスピードで観る人を驚かせました。

それもあって和製ハーランドと呼ばれたりもしています。ただ、彼はハートランドほど足もとで勝負するストライカーではないでしょうね。どちらかと言えば、やっぱり高さが武器になるのかなと思いますし、その点で目指すべきはズラタン・イブラヒモビッチなのかもしれませんよね。

それと大久保嘉人のようにもなってほしいですよね。中島も国見高出身ですが、彼のお父さんが大久保と同級生だったことで、中島の名前に「嘉」が名前に入っているそうです。ゴールを決めることをつねに渇望しているストライカー。今の中島にもそうした匂いはありますが、今後はもっと強く出していってほしいですね。

このU-21日本代表の選手たちが、W杯カタール大会の日本代表入りできるかと言ったら、いまのままではまだまだ足りません。ただ、若いうちは急激な成長を遂げたりしますからね。可能性はあるので、この夏でどこまで伸びるのかは楽しみです。

現実的な彼らの目標になるのは2年後のパリ五輪です。この世代には久保建英(レアル・マドリード)がいますし、同じレアル・マドリードの下部組織にいる中井大卓も18歳なので、このメンバーに入る可能性はあります。次のW杯やその先の日本サッカーを牽引していく才能にあふれた選手がそろっているだけに、この世代にもしっかり注目してもらいたいと思います。

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