宮市が再びピッチに立つ日を楽しみに待ちたいと語るセルジオ越後氏

韓国の選手と交錯してピッチに倒れ込む映像を見た瞬間、大事に至らなければいいなと思ったんだけど、いやな予感は的中した。あまりに気の毒だね。

先頃行なわれたE-1東アジア選手権で約10年ぶりに代表復帰を果たした宮市が、韓国戦で右膝前十字靱帯断裂の重傷を負った。

サッカーファンの読者ならご存じだと思うけど、彼は高校卒業後に欧州に渡って以降、度重なるケガに苦しんできた。左膝、右膝と前十字靱帯断裂も計2度経験している。

その彼が昨夏から日本に戻って、横浜Fマでいいプレーを見せ、国内組限定のメンバーとはいえ、日本代表に復帰。ケガに負けずによくここまで戻ってきたな、素晴らしいなと僕もうれしく思っていた矢先の出来事だ。

ただ、本人は復帰へ向けての前向きな決意をすぐに表明した。彼がそう決めた以上、所属の横浜Fマはもちろんのこと、日本サッカー協会も最大限のバックアップをすべきだ。

もちろん、ケガをしたのは協会のせいではない。でも、日本代表の活動中に負ったケガなのだから、それは責務だよ。絶対にチーム任せにしてはいけない。

宮市本人はこれから大変だと思うし、時間はかかるだろうけど、焦らずしっかり治して、じっくりリハビリに取り組んでほしい。再びピッチに立つ日を楽しみに待ちたいね。

さて、Jリーグではその宮市の所属する横浜Fマが首位を走っている。今季の横浜Fマは各選手とも運動量が豊富で攻守のバランスがいい。誰かひとりに頼るのではなく、全員が頑張る。実際、試合ごとにヒーローが代わる。非常にいいチーム状態だ。

チームを率いるマスカット監督は目立たないけど、5人の交代枠も含めて、選手のモチベーションを保ちつつ、うまくローテーションさせているね。

そんな好調のチームを象徴する存在が、E-1で代表初招集された水沼。派手さはないけど、よく走り、技術もあり、キックもうまい。彼の右足からのクロスはチームの得点パターンのひとつになっている。

ちなみに僕は、彼の小学生時代のプレーを見たことがある。当時はお父さん(水沼貴史氏。元・日本代表MF、現・解説者)そっくりのドリブルで相手を次々と抜いて目立っていたね。

プロになってからはプレースタイルも変わり、J2も含めていくつもチームを渡り歩くなど苦労してきたけど、32歳にしてついに日本代表にたどり着いた。大したものだよ。

そして、もうひとり注目しているのが、同じくE-1で代表に初招集されたパリ五輪世代の藤田。運動量の多いボランチで、あちこちに顔を出すから周りの選手は助かると思う。守備もいいけど、リズムよくパスを散らせるなど攻撃のセンスもあるので、トップ下をやらせても面白いかもしれないね。

欧州組の遠藤、田中 碧、守田らの存在を考えると、カタールW杯のメンバー入りは難しい。でも、経験を積めばもっと伸びそうだし、本人も今回のE-1で自信をつけただろう。パリ五輪に向けて期待したい選手だ。

今季、横浜Fマがこのままリーグ優勝できるかどうかはまだなんとも言えない。ただ、リーグ戦に加えてルヴァン杯準々決勝とアジアチャンピオンズリーグのラウンド16もある今月の過密日程をうまく乗り越えられれば、可能性は十分あるね。

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