現代で人間が生きていくために欠かせないもの、それはお金です。多くの社会人は働いてお金をもらいます。お金は労働の対価です。

プロ野球選手は複数年契約などの場合もありますが、基本は年俸制で1年を通した活躍が金額で評価されるシステムなのはご存じのとおり。シーズンオフになると選手たちの契約更改の動向が紙面を賑わせますよね。

今年のヤクルトの契約更改を誰よりも注目している山本に、年俸についてお話させてください。

世界中のプロ野球選手の中で、最も高い年俸をもらっているのがニューヨーク・メッツのマックス・シャーザー投手。その額はなんと56億円! 2位のロサンゼルス・エンゼルスのマイク・トラウト外野手の年俸は48億円ですが、12年契約で総額は550億円。日本人最高額である田中将大選手の9億円が少なく思えてしまうほどです。

ヤクルトでは山田哲人選手の5億円が最高ですが、今年のペナントレースでタイトルに最も近い村上宗隆選手(現在2億円)のシーズンオフに注目が集まることは間違いありません。

その昔、日本のプロ野球がお茶の間最大の娯楽だった頃は、一流選手でも年俸は数千万円程度だったそうです。その流れが変わったのは、落合博満選手が中日にトレードで移籍、日本人初の1億円プレーヤーとなり、FA制度が一般的になった頃からでしょうか。選手の引き抜き、あるいは流出を防ぐため年俸は急騰しました。

それゆえ球団の経済力によって年俸の差が出てしまうケースも。「今よりも年俸を払うよ」と言ってくれる球団に移籍するのは、自分の身は自分で守るしかないプロとして当然のことといえます。

一般的なサラリーマンよりはるかに多くのお金をもらえていいな、と我々ファンはそう思いますが、選手たちにとっては、いつ0円提示されるかわからないわけですから、もらえるうちにもらっておきたいと考えるのは当然ですよね。

プロ野球において、起用法と年俸こそが選手の評価だと私は思っています。契約更改で一発回答が美徳のような風潮もありますが、それもどうなのかなと思います。なぜかといえば、後進が困るからです。

私が今の世界で生きていくと決めたとき、先輩から言われた言葉があります。

「仕事を安請け合いしてはいけない」

自分の気分次第で仕事の単価を決めると、それによって困る後輩たちが出てくる。私はその言葉を今も胸に刻んでいます。

今年も残り4ヶ月となりました。シーズンも佳境、楽しみつつ一緒に駆け抜けましょう

日本でも代理人に交渉を任せる選手が増えました。代理人=お金の亡者というイメージもあるようですが、そもそも彼らは選手のため(そして自分のため)を思って活動していることを忘れてはいけないと思います。

プロスポーツは頑張った分がきちんと評価される可能性がある世界です。実力、才能、努力。それらが認められて大きなお金を稼げる。それはとても夢がありますよね。

MLBのタンパベイ・レイズのように、スーパースターは一人もいないし球団の年俸も安いけどずっと強いチームもあります。伸び盛りの選手を上手に集めて、スターを作り出してお金持ちの球団に売り、その移籍金でさらに選手を獲得する。それも一つのチームのあり方です。

ヤクルトも昔はそういうチームでしたから、山田に5億円払うと決めたときは大丈夫かな?と心配したことを思い出しました。

兎にも角にも、選手に敬意を払った年俸&評価をお願いしたいと思います。ない袖は振れないのはわかりますが、それでも子供たちがプロ野球に夢をいだけるような環境であり続けてほしいと思います。

改めて、給料とは労働の対価です。誰だって頑張りが評価されると嬉しいし、もっと評価されるよう頑張ろうと思いますよね。「ヤクルト1000」の売り上げも絶好調ということで、村上選手の来季年俸には大きく期待してもいいのではないでしょうか。

それではまた!

★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン

★山本萩子の「6-4-3を待ちわびて」は、毎週土曜日朝更新!