華のある選手だった。本当にお疲れさまと言いたいと語るセルジオ越後氏華のある選手だった。本当にお疲れさまと言いたいと語るセルジオ越後氏

ペナルティエリアの近くで味方がファウルをもらうと、スタンドが歓声に沸く。ゴールへの期待が一気に膨らむ。今の日本代表にもそういう選手が欲しいね。

中村俊輔(横浜FC)が現役を引退した。プロ生活26年、44歳になるまでよく頑張ったと思う。技術が高いからこそこれだけ長く続けられたわけで、たいしたものだよ。

Jリーグ、海外、そして日本代表での活躍ぶりはいまさら僕が言うまでもない。もちろん、いいときばかりじゃなくて、うまくいかないときもあった。監督によって選手の好みが違うから、2002年日韓W杯ではメンバーから外れた。激しいプレーを求めるトルシエ監督とは合わなかったね。

続く06年ドイツW杯、10年南アフリカW杯には出場を果たしたものの、コンディションの問題や戦術変更などもあって、期待されていたようなプレーは見せられなかった。それでも間違いなく日本サッカーを牽引(けんいん)し、盛り上げ続けてきてくれた選手。華のある選手だった。本当にお疲れさまと言いたい。

俊輔の代名詞といえばFK。引退を受け、彼のFKからの直接ゴールを集めた映像を目にする機会が多いけど、何回見ても飽きない。

03年コンフェデレーションズ杯のフランス戦(相手GKはバルテズ)、06年欧州チャンピオンズリーグのマンチェスター・ユナイテッド戦(相手GKはファン・デル・サール)と、世界的なGK相手にも決めている。まさしくワールドクラスだった。

何より僕が驚いたのは、どのクラブでプレーしていたときも、FKになると皆が彼にキッカーの座を譲っていたこと。プロは子供の頃からうまい選手が集まっている集団。当然ながらセットプレーとなれば、自分に蹴らせろと思う選手は多い。

特に外国人選手はその傾向が強く、例えばブラジルではキッカーの座を巡ってけんかになることも多いし、選手が集まってじゃんけんをすることもある。日本代表で一時期キッカーを務めていた本田(圭佑)も、ACミラン時代にはバロテッリと激しく言い争いをしていたよね。

でも、俊輔の場合はJリーグだけでなく、海外でもセットプレーのキッカーを任されていた。誰も争いに来ない。日本人の名キッカーといえば木村(和司)、名波(浩)、三浦(淳寛)、遠藤(保仁)と何人か名前が挙がるけど、そこまで認められた選手は俊輔だけじゃないかな。

また、彼はサッカーの面白さを世間にわかりやすく伝えてくれた。試合でゴールやアシストを決めるのはもちろんだけど、テレビのバラエティ番組の企画で、走っているバスの窓に遠くからボールを蹴り込んでいたよね。あんなの彼にしかできない。CGかと思った。

あれを見て、プロのサッカー選手ってすごいんだな、日本のサッカーってレベルが高いんだなと興味を持った人も多いはず。子供ならマネしたくなるよね。その意味でも、日本サッカーへの貢献度は計り知れない。

今後は指導者の道に進むとのこと。普段のインタビュー内容を見れば、彼がサッカーオタクなのはすぐわかるけど、どういうサッカーを目指して、どんな監督になるのか。

欲を言えば、FKが得意な選手を育ててほしいけど、あれは本人の工夫と努力の積み重ねでしか身につけられないものだから難しいだろうね。いずれにしても、第二のサッカー人生も頑張ってほしい。

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