みなさんこんにちは、野球大好き、山本萩子です。WBCの決勝から3日経ったものの、いまだ興奮が冷めやらぬ中でこの原稿を書いています。いやぁ、本当にいい大会でしたね。気分を落ち着けるために、準決勝のメキシコ戦から振り返ってみたいと思います。

メキシコ戦で一番印象に残ったシーンは、もちろん村上宗隆選手のサヨナラ打。WBCでは本来の活躍がなかなかできず、「目覚めの一打」と表現されていましたが、それまでの努力が「報われた一打」だったと感じました。

初めて経験する世界の舞台で村上選手がひと皮むけてさらに大きくなっていくことを確信しましたし、ヤクルトファンとしても忘れられないシーンになりました。

準決勝は、試合巧者のメキシコに常に先手を取られる厳しい戦いでしたね。その中で、日本の選手たちがコミュニケーションを取っていたのも印象的でした。

たとえば、4回に佐々木朗希投手が被弾したときに、すぐにマウンドに駆け寄ったのはショートの源田壮亮選手。投手が気落ちしてもおかしくない場面で、すかさず声をかけにいく気遣いと視野の広さ。

その次のバッターの打球が源田選手のところに飛んで3アウトになったのも含めて、個人的にはメキシコ戦の影のMVPだと思っています。

この日、佐々木投手の名前がアメリカのTwitterスポーツ部門のトレンドで1位に。アメリカのスポーツメディアがロイヤルズの帽子を被せた加工画像をツイート(笑)するなど、大きな関心を集めました。

試合後の、メキシコのギル監督の言葉も素敵でしたね。

「勝ち進んだのは日本だが、今夜の勝者は世界の野球界そのものだ」

26年間野球を愛し続けてきた私ですが、これほど胸に刺さる言葉に出会ったことがありません。野球を愛する世界中の人々の心の中に、今回WBCの記憶が残ればいいなと思いました。

そして迎えた、決勝戦。個人的に試合前から気になっていたのが、大谷翔平選手対トラウト選手の同僚対決でした。

エンゼルスという中堅チームにおいて、なかなか報われない(晴れ舞台が遠い)スーパースター2人が、世界一をかけた大舞台で対戦するという奇跡。

トラウト選手もアメリカ代表の"ガチメンバー"と共に大谷選手と戦える喜びを感じていたと思いますし、私自身も日頃からエンゼルスの試合をもどかしく(笑)観てきたからこそ、2人の対戦には込み上げるものがありました。

しかも、最後の場面でマウンドと打席に立っていたのもこの2人。漫画みたいなことが現実に起こってしまうから野球は本当にすごいですよね。

未だ興奮冷めやらぬ山本です。未だ興奮冷めやらぬ山本です。

決勝の個人的MVPは中村悠平捕手でした。準決勝・決勝を通じてリードがめちゃくちゃ冴え渡っていたと思います。たとえば、フォークがくると見せかけて、誘いまくってからのストレート。

あのアメリカ打線をソロホームラン2本の2点に抑えたのは、投手層の厚さや個々の能力の高さはもちろんのこと、中村選手のリードあってのものだったと思います。

数年前まではファンから配球を批判されたこともありましたが、ヤクルトをリーグ連覇に導き、さらに世界の大舞台で偉大な先輩・古田敦也さんと同じ背番号27をつけマスクを被るまでに成長したことには、感じ入るものがありました。

あと、要所を締めた中継ぎ陣も忘れてはいけませんね。

3回からマウンドに上がった戸郷翔征投手が、1、2塁のピンチで迎えたターナー選手を空振りさせたあのフォーク。7回の大勢投手も素晴らしかった。2アウトランナー1、2塁の場面では、とにかく6-4-3を待ちわびました。

普段は自分が応援するヤクルトの"天敵"とも言える存在ですが、「内野ゴロでゲッツーを!」と思えるWBCは素晴らしい(笑)。

こうやって振り返ってみると、日米の投手力の差は歴然だったと思います。大谷選手、ダルビッシュ投手をはじめとする日本の投手陣は間違いなくナンバーワンですが、それ以前に、アメリカの投手起用に疑問が湧きました。

アダム投手が乱調でも、グレイブマン投手はブルペンでまだ投げ始めたばかりといったように、全体的に後手後手だった印象を受けました。やはり短期決戦は継投が重要。次回はアメリカも、投手陣をもっと強化してくるはずです。

今大会のスターはやはり大谷選手でしょう。出塁後に塁上で感情をあらわにするなど、シーズン中でもほとんど見せないシーンを何度の目の当たりにしました。

「ヒリヒリするシーンで野球がしたい」と話していたように、いきいきと目を輝かせてプレーする野球少年のような大谷選手を見て、胸が熱くなったのは私だけではないでしょう。

「(アメリカのスター選手たちに)憧れてしまったら超えられないから、今日一日だけは憧れを捨てよう」という試合前の円陣での言葉も素晴らしかったですね。

そして、各国のMLB選手の活躍も印象に残りませんでしたか? 

準決勝で三振して悔しさのあまりバットをへし折るメキシコのテレズ選手、「源田の1mm」で話題になったトレホ選手、決勝戦で気迫のツーベースを狙うトラウト選手、そして日本を牽引したヌートバー選手も。彼らが活躍するMLBのレギュラーシーズンも追いかけてほしいです。

WBCは日本の優勝という最高の形で幕を下ろしましたが、まだまだ野球は続きます。プロ野球の開幕も近づいてきました。

間もなく球春到来。いやぁ、野球って本当に素晴らしいものですね。それでは!

★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン

★山本萩子の「6-4-3を待ちわびて」は、毎週土曜日朝更新!