三菱流新角刈りデザインの三菱エクリプスクロス!

苦節4年! 苦労に苦労を重ねた大演歌歌手のようなSUVの登場だわ。ソイツは3月1日に発売となったエクリプスクロス! 今、世界的に人気が高まってるスタイリッシュSUV、いわばカッコ優先のコンパクトSUVが登場したってのと、もうひとつは造ったメーカーが三菱自動車ってのもいい! 実は2014年に投入した軽ハイトワゴンのeKスペース以来、4年ぶりのオールニュー新車!

小沢も長いことこの仕事やってるけど4年間新車出してないメーカーって聞いたことない。あってもせいぜい日産が「去年固め打ちしちゃって今年は新車ないんです~」と嘆くぐらい。4年は異例だ。これは世間を騒がせた燃費不正問題で苦労したのと、その後の石橋叩き作戦の結果だろう。もう二度と品質問題を起こしちゃいけないと心機一転、念には念を入れて開発されたのがエクリプスクロスである。これぞ走るド演歌! タフでめげないド根性に乾杯!

だが心配はいらない。実は三菱はコンスタントな年間100万台メーカーで、日本はそのうちざっくり10万台。海外でしっかり売れている。だからこそ2016年に日産グループ入りしたわけだし、何よりクルマの出来が三菱らしくナイスだ!

まずエクステリアデザイン。このジャンルはまさにデザイン最優先になっていて最強ライバルのトヨタ・C-HR、ホンダ・ヴェゼル共に前後がキュッと絞られた個性的ウナギ犬デザインが特徴だ。その点で一瞬、エクリプスクロスは大丈夫か?とも思う。全長4.4m強で全高1.7m弱。ライバルに比べちょい長め&背は高めで、C-HRのような絞り感はない。それと基本、6年前に出た兄貴分SUV、アウトランダー同様の左右からエラが入ったダイナミックシールドマスクで、パッと見で似すぎなような気も…。

だが、エクリプスクロスを街中で見るとコイツはコイツでいいかも?と思い直したのだ。そう、エッジ入りまくりのシャープな目元やバンパー周りに、エッジをズバッと削り落とした左右リアの絶壁っぷりが妙にセクシー。そう、これぞまさしく角刈りオトコのカッコよさ! ぬめぬめコークボトルラインとは違うマッチョな色気で勝負しておりこれはこれでいい。ボディカラーも最近勢いあるマツダのソウルレッドに対抗してか、レッドダイヤモンドを新設定。これがルビーっぽい光沢でなかなか鮮烈なのだ。

インテリアにも程よくメタリック風素材が使われ、オーソドックスななかにも高い質感を醸し出してるし、何より実用的。正直、ライバルC-HRはスタイルに振り切った分、リアシートや荷室が狭い。ところがエクリプスクロスはいいとこ取りを狙ってリアに身長176cmの小沢が楽勝で座れ、9ポジションリクライニング、20cmの左右分割ロングスライドがついていて、荷室優先にも乗員優先にも調整可。ラゲッジ絶対容量も最大でゴルフバッグ4個と間違いなくライバル以上。角刈りオトコは仕事上手で整理整頓もバッチリ!ってな具合なのだ。

乗り心地は重厚で気持ちよく、疲れずに走れる

●8速CVT●全長×全幅×全高:4405mm×1805mm×1685mm●車両重量:1550kg●エンジン:1.5リットル直4DOHC16バルブターボ●駆動方式:4WD●最高出力:150PS●最大トルク:24.5kgm● 最小回転半径:5.4m●使用燃料:無鉛レギュラー●車両本体価格:309万5280円(税込) 【SPEC】

さらに注目は走りで、骨格はアウトランダーと共通。一瞬、古すぎ?とも思うが乗ると熟成されていて逆にいい感じ。ボディや足回りの剛性が高く、ハンドリングはタイヤの角がクリアーにつかみ取れるような味わいだし、同時に乗り心地は重厚。気持ちよく、疲れずに走れる。

加えて新開発の1.5リットル直4ガソリンターボ+CVTのパワートレインも悪くない。正直言うと、すでに欧州では発売済みの2.2リットルクリーンディーゼルも試したかった。というのも、コイツはコイツで全域で力強いからだ。

ついでに言うと小沢は雪道でもエクリプスクロスを試乗しているが、三菱独自のフルタイム4WDシステム「S-AWC」も熟成されまくり。ドライ路面だとちとわかりにくいが、滑りやすい路面でステアリングを切った方向にグイグイ曲がっていく。

要するにこのエクリプスクロスとは、パジェロをDNAとするオトコっぽい三菱のSUVデザインに、ランエボ譲りのハイテク4WDのハンドリングを組み合わせた三菱らしさ全開の作品で、正直、トヨタやホンダのような流行のデザイン、今の常識たるハイブリッドユニット、それらの代用のディーゼルエンジンもまだない。

だが、その実、トレンドに流されず、三菱ならではの重厚な走りと実直な使い勝手、そして新たなオトコの角刈りセクシーを加えたカウンターパンチでもあるのだ。野郎ども、コイツをぜひ愛車候補に入れるべし!

小沢コージ1966年生まれ、神奈川県出身。青山学院大学卒業後、本田技研工業に就職。90年に自動車誌の編集者に。著書に『マクラーレンホンダが世界を制する!』(宝島社新書)など多数。TBSラジオ『週刊自動車批評』レギュラー出演中。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。