Googleの「ベストゲーム2020」に選出された『原神』。開発メーカーのmiHoYoはYouTube上で世界各国のインフルエンサーを起用するプロモ巧者でもある

昨年9月に世界同時配信されたスマホ、PC、PS4&5に対応するアクションRPG『原神(げんしん)』(無料、ゲーム内課金あり)。配信1ヵ月で売り上げは約260億円を記録。その後も毎月100億円以上を売り上げ、昨年12月にはGoogleの「ベストゲーム2020」に選出された。

フルCGアニメの美グラフィックから日本発ゲームと思われがちだが、実は中国発。このヒットで中国のエンタメ市場が変化しているという。中国のIT事情に精通するジャーナリストの高口康太氏に聞いた。

「中国のゲーム市場は昨年、総売り上げが4兆4000億円を突破し、その収益のほとんどを、世界中のゲーム会社を傘下に収めるテンセントゲームズと、『荒野行動』のネットイースが独占しています。

2強は常にディズニーや日本のキャラクターの商品化権の奪い合いをしています。海外IP(知的財産)への支払いは発生するものの、確実な収益を見込めるからです。一方、『原神』を開発したmiHoYo(ミホヨ)は、その奪い合いに参加できない格下メーカーでした」

そんな格下メーカーが大成功した理由とは?

「魅力的な自社IPを生み出したことです。これで海外IPへの支払いが発生せず、資金を開発に集中できました。miHoYoは2強に比べれば格下ですが、規模的には大手です。『原神』の開発資金は100億円と発表され、これは業界最大の大ばくちでした(笑)」

ただ、『原神』は開発を発表した直後に大炎上したという。

「2019年に開発の発表があり、キャラクターはオリジナルでしたが『ゲーム性が任天堂のゼルダそっくり!』と世界中からフルボッコ。

しかし、いざ配信されてみると、圧倒的なグラフィックで個性豊かなキャラクターが織りなすオリジナルストーリーや、システム面でもオリジナル要素を高めた爽快感重視のアクションがウケ、パクリ騒動を覆し大ヒットしたのです。中国内より海外での売り上げと評価が高く、中国発IPが世界のエンタメ市場で勝てることを証明しました」

自国IPのメリットとは?

「例えばマリオのように、グッズやイベントなどゲーム以外でも大規模なキャラクタービジネスを展開でき、すべての収益を手にできます。中国では昨年、映画界でも自国IPのアニメ『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』がヒットし、自国IPビジネスの"うまみ"が認識されました。

近年、日本のエンタメ業界はイラスト投稿サイトの『pixiv(ピクシブ)』から将来性の高いアマチュア作家を一本釣りしますが、中国メーカーも同じことをやっています。それこそ『pixivごと買いたいんだけど?』と聞いてくる中国のエンタメ関係者もいるほどです(笑)」

自国IPでエンタメ市場でも"一帯一路モード"に入った中国。その一方で、儲けが巨大になるとTikTokのようにアメリカから「個人情報の安全性は?」と規制の横やりが入る可能性など"炎上要素"も残る。いろんな意味で今後も要注意だ。