3キャリアは格安SIMに対抗するため、料金値下げだけでない魅力ある新サービスを打ち出す必要に迫られる

一昨年、総務省が3大キャリアに対して打ち出した、まさかの「料金下げなさい!」宣言。でもその後、お得になった実感はまったくない…。一体、どうなっているのだろうか? 前編記事(「スマホ料金改革は3大キャリアの懐を温めるだけなのか?」)に続き、考察する。

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確かに3キャリアの首がじわじわと締めつけられていることはわかった。しかし、いろいろなことが実現していくには、まだしばらく時間がかかりそうだ…。

「ならいっそのことキャリアに見切りをつけ、さっさと格安SIMに乗り換えましょう。総務省が後押しするように、料金面ではこっちのほうが明らかに優位なんですから」

と切り出すのはスマホ料金に詳しいライターの後藤一泰氏だ。でも格安SIMの端末って、どう選べば?

「ここ1、2年でSIMフリー端末のバリエーションは豊富になり、キャリア端末には少ない2、3万円台の魅力的な端末がそろっています。また、オリジナル端末を取り扱う格安SIM業者も続々と登場していている。スマホの利用が出先でのネットやメール、SNS程度なら1万円台の普及機や中級機で十分です。

また、今年以降はSIMロックが解除されたキャリア端末の中古市場への流入が増えるはず。とりあえず普及機で格安SIMと契約して、性能が物足りなければ中古のハイエンド端末を入手しましょう」(後藤氏)

それでも、今までキャリアの端末しか使ったことがない人にとってはサポート面など、少し不安もあるはずだ。

「確かに、たいていの街に系列のショップがある3キャリアに比べて、サポートはどうしても手薄です。しかし今は、イオンの一部店舗に窓口を置くイオンモバイル、家電量販店へのカウンター設置を進めるフリーテル、レンタルビデオのゲオと提携するOCNモバイルONEなど、有人接客に対応する格安SIM業者が急増中です。

また、格安SIMの弱点だった、MNPでの転入時に電話が利用できない空白期間ができる問題も、こうした窓口での即時対応で解決しつつあります」(後藤氏)

格安SIMの拡大は、3キャリアの体質変化にもつながる

では、肝心の回線はどうなのか。速度が遅くて使えないなんてことは?

「格安SIMはキャリアの回線を借りて再販しているため、利用者が増えすぎると回線が混雑し、速度が低下します。それはたいてい利用者が集中するお昼休みや夕方に起きやすい。

ただ、すべての格安SIMで『使えない』ほどの速度低下が発生するわけではありません。業者も混雑がひどい場合は回線を新たに借り受けて増強するなどの措置を取っています。でなければ、『安かろう悪かろう』という評判が立ち、生き残れないのはわかっていますから」(後藤氏)

3キャリアのような、2年縛りや解約金はあるのか?

「最低利用期間を定めて、期間内の解約やMNPに対しては解約金を設定している業者もありますが、3キャリアの『2年縛り』より期間が短く、解約金も少額なことが一般的です」(後藤氏)

総務省の事情に詳しい業界関係者のA氏は、格安SIMの拡大は、3キャリアの体質変化にもつながると指摘する。

「野村総合研究所の予測によれば、今年度は計1102万回線のMVNOとLCC(キャリアのサブブランド)ですが、19年度には2100万回線、22年度には2500万回線を超える、とされています。そうなると3キャリアのお尻にも火がついて、『横並びで高値』の料金設定を続けることは難しくなるでしょう。

これから3キャリアは格安SIMに対抗するため、単純な料金値下げでない、大手だからこそできる魅力ある新サービスを打ち出す必要に迫られると思います。それができなければ、ユーザーの流出を食い止めることは難しいのではないでしょうか」(A氏)

つまり、ボクらスマホ利用者が「高い高い」とボヤきながらも3キャリアのスマホを使っているうちは、料金は高止まりしたままで、何も変わらないということ。

「今、スマホ業界に求められるのは『公平な競争環境』です。それが根づけば、航空業界でフルサービスの大手航空会社とLCCが共存しているように、キャリアと格安SIM業者が共存し、ユーザーが自分に合った料金とサービスを選択できる時代がきっと来ると思います。『格安SIMを選ぶ』という行動が、そうした環境づくりにつながることは間違いないでしょう」(A氏)

次の“2年縛り明け”で格安スマホにチャレンジするのもアリか?

(取材・文・撮影/本誌「格安スマホ」取材班)